第26回
教育ローンとは?対象と選ぶ上でのポイントを紹介
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この記事のポイント
- 教育ローンは、教育に付随する幅広い費用に利用できる
- 教育ローンの審査基準を事前に確認しよう
- 借り入れ前に「どれくらいの金額が必要か」を最初に考えよう
高校・大学進学と子供の学費は思っている以上にかかるものです。少しずつお金を貯めていても、大学進学となると入学金や授業料等まとまった費用が必要になるため、お金が足りなくなることも少なくありません。そのようなときには、教育ローンの活用も視野に入れておきましょう。
ここでは教育ローンの種類や特徴について解説します。また、審査基準や選ぶ上でのポイントについても紹介していきます。進学の意志がある子供に経済面で不安を与えないためにも万全の準備をしておきましょう。
教育ローンの種類や基礎知識について
金融機関からの借り入れに慣れていない人は、いざローンを申込みしようとすると、敷居が高く感じてためらってしまうかもしれません。ここでは、教育ローンとは「どのような費用に利用できるのか」「どのような種類があるのか」など、基本的な知識を学ぶところから始めてみましょう。
教育ローンとは
教育ローンとは、高校や大学等の入学金や授業料、各種専門学校にかかる費用まで幅広く取り扱う目的別ローンの1つです。大きく分けると、「民間金融機関の教育ローン」「国の教育ローン」の2種類が一般的に広く知られています。以下では教育ローンだけでなく、奨学金との違いについてもあわせて確認していきましょう。
教育ローンの種類
銀行(民間)の教育ローン
教育ローンは多くの金融機関で取り扱っている一般的なローンです。金利は金融機関ごとに異なりますが、比較的低金利で借り入れすることができます。無担保、無保証人が一般的ですが、医学部の授業料や留学費用等教育資金が多額になる場合は、融資限度額の大きい有担保型の教育ローンという商品を選択することも可能です。
各金融機関が独自で教育ローンの商品を作っていることから、金利もローンの対象となる費用の範囲も金融機関ごとに異なります。期間限定のキャンペーンや取引実績によって金利を引き下げる金融機関もあるため、利用の際には取り扱い条件や金利等を事前に必ず確認しましょう。
国の教育ローン
- 日本政策金融公庫
国の教育ローンでよく知られている日本政策金融公庫の融資制度である「教育一般貸付」。比較的低利の固定金利です。融資限度額が最高350万円と民間の教育ローンに比べて金額が少なく、連帯保証人(1名以上)または教育資金融資保証基金の保証(保証料が必要)が必要になります。細かい条件で民間の金融機関とは異なる部分も多いので、利用する場合は事前に内容を確認しておくことが必要です。 - 日本学生支援機構(JASSO)
日本学生支援機構で扱っている奨学金もあります。教育ローンとはいえないかもしれませんが、貸与型の奨学金として「第一種奨学金」と「第二種奨学金」があり、返済を必要とするという意味では借り入れしていることと同様ともいえるでしょう。では、奨学金と教育ローンは一体何が違うのでしょうか。以下では、教育ローンとの違いについて解説します。
奨学金と教育ローンの違い
奨学金 (第一種奨学金) |
奨学金 (第二種奨学金) |
教育ローン | |
返済する人(借主) | 学生本人 | 学生本人 | 契約者(親など) |
借りる方法 | 在学する学校を通じて申込む | 在学する学校を通じて申込む | 契約者(親など)が直接金融機関で申込む |
返済開始のタイミング | 貸与期間終了の翌月から数えて7ヵ月目から(ボーナス返済あり) | 貸与期間終了の翌月から数えて7ヵ月目から(ボーナス返済あり) | 融資を受けた日以後の約定返済日から(金融機関によって在学中据え置き期間あり) |
利息支払いのタイミング | 無利息 | 在学中は無利息 貸与期間終了の翌月から数えて7ヵ月目から |
融資を受けた日以後の約定返済日から(金融機関によって在学中据え置き期間あり) |
借入限度額 | 2020年度入学者の貸与月額(月額の貸与額であり、国立・私立・自宅通学によって異なります) ・大学院の場合5万円~12.2万円 ・大学の場合2万円~6.4万円 ・短大の場合2万円~6万円 ・高等専門学校の場合1万円~6万円 |
2020年度入学者の貸与月額 ・大学院の場合5万円~15万円 ・高校、専門学校、短期大学、大学の場合2万円~12万円(1万円刻み) |
金融機関によって異なる(無担保無保証人の場合は上限1,000万円程度が一般的) |
金利・利子 | 無利息 | ・利率固定方式(0.14%~0.53%) ・利率見直し方式 (0.01%~0.21%) ※2019年度の貸与利率 |
金融機関によって異なる <金利の目安> ・固定金利:年約2%後半~5% ・変動金利:年約1%後半~4% |
期間 | 所得や貸与総額、割賦方法(ボーナス払いの有無)によって異なる | 所得や貸与総額、割賦方法(ボーナス払いの有無)によって異なる | 金融機関によって異なる (無担保、無保証人の場合は上限15年程度が一般的) |
保証人 | 連帯保証人と保証人を選任(機関保証により保証料を支払う場合は不要) | 連帯保証人と保証人を選任(機関保証により保証料を支払う場合は不要) | 原則不要 |
奨学金の場合、学生本人が契約者となり卒業後本人が返済をすることになります。低金利で在学中は利息が発生せず、卒業まで奨学金が毎月振り込まれますが、本人卒業後の返済負担も考慮しなければなりません。
奨学金の貸与が決定しても、振り込まれるのは進学後になります。入学金の支払いや受験費用には間に合わないので、奨学金を利用する場合は、民間の教育ローンとの併用等を検討することも必要です。
教育ローンの特徴と対象
民間の教育ローンは、金融機関によって内容が異なり意外な費用も教育ローンの対象となることもあります。申込時には商品内容をしっかりと確認しましょう。
教育ローンの特徴
借入方法は大きく分けて「証書貸付型」と「極度型(カード型)」の2タイプがあります。
証書貸付型
「一括借入タイプ」とも呼ばれ、必要な金額を一括で借り入れして、あとは毎月決まった日に決まった金額を返済するオーソドックスな借入方法です。
極度型(カード型)
「極度型」は、契約時に借入枠(極度額)を設定し、借り入れした人が都度、必要な分だけ引き出ししたり返済したりする方法です。「都度借入タイプ」とも呼ばれます。極度額の範囲内であれば何度でも審査不要で簡単に資金の出し入れが可能です。あらかじめ設定した金額を極度額として当座貸越契約により契約しますが、カードを発行してATMで借り入れができる「カード型」のタイプもあります。
入学資金や授業料だけ一度でまとめて借りるなら「一括借入」タイプがおすすめです。また、前期と後期に分けて授業料を支払ったり、教育資金を必要とする子供がほかにもいたりする場合は、何度も繰り返し借りることができる「極度型」タイプが便利。必要に応じて使い分けると良いでしょう。
教育ローンの対象
教育ローンの対象となる費用には主に以下のようなものがあります。
- 授業料
- 入学金
- 制服代
- 学生寮等の寮費
- 通学費用
- 教科書代
- 予備校の納付金
- 海外留学費用
- 下宿代
その他にも、部活動の費用や合宿・修学旅行の費用等と幅広くローンの対象とする金融機関等さまざまです。社会人の自己啓発のための資格取得費用や、社会人留学費用に利用できる金融機関もあります。意外な費用が教育ローンの対象に含まれることもありますので、多くの金融機関の教育ローンを事前にリサーチしておくことは非常に重要です。
教育ローンの審査基準
一番悩ましいのが、申込みをしても教育ローンの審査に通るかどうかです。基本的に金融機関は審査の基準を公表していません。しかし、申込み条件や審査の基準となる可能性の高い内容を押さえておくと審査に通る確率が上がるかもしれません。
教育ローンの審査基準
- 年齢
申込み年齢を、働くことができる「満20歳以上満65歳未満」とする金融機関が多い傾向が見られます。 - 勤務先・雇用形態・勤続年数・年収(配偶者を含む)
パート・アルバイト・年金収入のみの人は取り扱いを不可とする金融機関、勤続年数1年以上を条件とする金融機関などさまざまです。審査で最も重要となることは「返済をしっかり最後まで行えるか」にあります。そのため、年収要件がなくても年収は高いほど審査は通りやすくなるといえるでしょう。
国の教育ローンでは、世帯年収200万円以内でも申込みが可能です。年収が少なく民間の教育ローンが難しい場合には国の教育ローンも視野に入れておくと良いでしょう。奨学金との併用も可能なので、一考の余地はあります。 - 家族構成(母子・父子家庭や子供の人数等)
国の教育ローンでは、扶養している子供の人数に応じて世帯年収(個人事業主は所得)の上限額が設けられています。子供1人の場合には、世帯年収790万円(所得590万円)、子供2人の場合は世帯年収890万円(所得680万円)のように上限があり、世帯年収が上限額を上回ると申込みができないことがあるので注意が必要です。しかし、基本的に民間の教育ローンには年収の上限はありませんので、年収に関係なく申込みを検討できるでしょう。 - 居住形態
「持ち家か」「賃貸か」でも金融機関からの信用度合いは変わってきます。一般的には持ち家のほうが信用度は高くなります。しかし、持ち家だから常に有利になるというわけではありません。
居住形態が持ち家の場合は、有担保教育ローンを検討することも可能です。医学部の進学や海外留学費用等多額の教育資金が必要となる場合も少なくありません。1,000万円を超えるような教育資金が必要な場合は、不動産を担保提供して大きな金額が借りられる有担保型教育ローンの検討も必要になるかもしれません。最大3,000万円まで借りられる有担保型の教育ローンを取り扱う金融機関もあります。このような商品を利用する場合は、より一層居住形態は審査基準として重要な項目の1つになります。 - 他社借入件数・借入総額
教育ローンに限りませんが、他社の借入件数や借入総額が多ければ、審査に通らない可能性が高くなります。多重債務者は収入に対して返済負担の割合が高くなるため、返済能力という点で不利になります。そのため、不要な借り入れはできるかぎり整理しておくことも検討してください。
教育ローンの選び方
どのような観点から教育ローンを選べばいいのか迷う人も多いかもしれませんので、ここでは、教育ローンを選ぶ上での注意点について解説します。
教育ローンを選ぶ上での注意点
教育ローンを選ぶポイントとして「どれくらいの金額が必要か」を最初に考えましょう。国の教育ローンなら最高350万円まで、民間の教育ローンなら1,000万円程度が借り入れの限度となります。それ以上の資金が必要であれば、有担保型の教育ローンも方法の1つです。
次に「毎月どのぐらいの金額を返済に回せるのか」を検討します。教育ローンを組むことができても、家計が大変で毎月の返済ができなくなってしまっては本末転倒です。民間の教育ローンは最長でも15年程度が多いため、シミュレーターなどをつかって毎月どのぐらいの返済になるかを確認し、無理のない返済となるようにしましょう。
ほかにも返済期間が長くなるようであれば、金利変動リスクを低下させる意味でも低金利で固定金利の教育ローンを取り扱う金融機関を探してみるのもおすすめです。民間の教育ローンは、固定金利よりも変動金利のほうが比較的金利が低い傾向にあります。返済期間が短くできるようであれば、低金利の現在の情勢を踏まえ、変動金利の教育ローンを選ぶのも1つの方法です。
教育資金は、一度きりの支払いではありません。「大学4年間の授業料を用意する」「2番目の子供の教育資金も必要となる」といった場合には、「極度型」の都度借り入れできるタイプを選んでみてはいかがでしょうか。
教育ローン選びで最も重要なポイントは、各金融機関の商品リサーチです。金融機関によって、金利・融資条件・費用の範囲がそれぞれに異なります。また、期間限定のキャンペーンや給与振り込み、住宅ローン・カードローンの利用など取引実績に応じて金利を引き下げる金融機関も多数あるため比較しながら検討することが大切です。
「自宅に近い」「ほかのローンを利用している」「窓口に行かずネットで取引したい」など、自分にあった便利な金融機関を利用するのが賢明といえるでしょう。
教育ローンの選び方「イー・ローン」のランキング
教育ローンの事前リサーチにはイー・ローンの「教育ローン総合ランキング」が便利です。人気の教育ローンの商品概要や金利情報、キャンペーン情報も簡単に調べることができますので、自分にあった教育ローンを探してみましょう。また、「教育ローンシミュレーション」を利用すれば、返済額や借入可能額の計算も簡単です。計画的な返済のためにも、ぜひ一度利用してみてください。
まとめ
教育ローンとは、入学費用や授業料だけではなく、教科書代や制服代、海外留学費用や費用まで幅広く取り扱う目的別ローンの1つです。種類は、銀行(民間)の教育ローンと国の教育ローンの2種類のほか、教育ローンとは言えないかもしれませんが、日本学生支援機構で取り扱う奨学金もあります。
借入方法は大きく分けて2種類。一度でまとめて借りるなら「証書貸付型」の一括借り入れタイプ、何度も繰り返し借りるなら「極度型」タイプが便利です。必要に応じて使い分けるのがよいでしょう。
教育ローンを選ぶポイントとして「どれくらいの金額が必要か」、次に「毎月どのぐらいの金額を返済に回せるのか」を検討します。返済期間が長くなるようであれば、低金利で固定金利の教育ローンを取り扱う金融機関を探してみるのもおすすめです。返済期間が短くできるようであれば、変動金利の教育ローンを選ぶのもよいでしょう。
自分に合った教育ローンを探して、無理なく計画的に返済ができるのが一番です。「教育ローンシミュレーション」を利用すれば、返済額や借入可能額の計算も簡単です。また、人気の教育ローンが分かるイー・ローンの「教育ローン総合ランキング」もぜひ活用してみてください。
ライター紹介
1級FP技能士、社会保険労務士
銀行に20年以上勤務し、融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。在籍中に1級ファイナンシャル・プランニング技能士及び特定社会保険労務士を取得し、退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は労働基準監督署で企業の労務相談や個人の労働相談を受けつつ、セミナー講師など幅広く活動中。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタントを目指す。法人個人を問わず対応可能で、会社と従業員双方にとって良い職場をつくり、ともに成長したいと考える。
融資の審査に関する内容につきましては、特定の金融機関がお申込みされたお客様に対して独自に行うものであり、当社は審査の過程および結果については一切関与しておりません。また、特定の金融機関の審査への適合性、正確性、完全性について保証するものではありません。