第11回
暑い夏、3倍眠れる“オレ専用ちょい上枕”を作った!(前編)。
枕で眠りの深さが決まる?
気がつけば、夏である。
この季節、暑くて寝つけない、という人も多いだろう。
うちの嫁さんも「暑いうえに、枕が合わなくて眠れない」とよくボヤいていたな。
そう。実は夏に限ったことではなく、「枕が合わず眠れない」は彼女の口ぐせなのだ。
しかしいつも思うのだが、枕と眠りって関係があるのか?
「関係があるらしいですよ」と夏に弱い編集者Hが、汗ダーダーで言う。
「たかが枕、されど枕。枕をバカにしちゃいけませんよ。どうです? 今回は自分にピッタリの“ちょい上”高級枕を見に行きませんか?」
枕ねえ。
しかし、私自身は枕に対して不満はなく、特別な興味も抱くことなく40年以上生きてきたのだよ。どこのどんな枕で寝ても「1、2、3、ぐう…」と即寝できるからだ。
もっとも、嫁さんが枕のせいで眠れないのは問題といえば問題だ。
彼女の機嫌が悪くなると、決まって怒りの矛先は私に向かう。
私のやる気と小遣いと、夕食の品数までもが著しく低下するわけだ。
枕だけにお先真っ暗である。
というわけで、そんな素晴らしい枕があるならぜひ見てみたい。行こうじゃないか!
「かの有名な枕専門ショップのロフテー枕工房本店です」
ズバン!
というわけで、枕といえばココ。世界でも珍しい枕メーカー、ロフテー株式会社が展開する「ロフテー枕工房」の本店ですよ。ちなみに私がすでに眠そうに見えるのは、実際すこし眠かったこともありますが、元々そういう顔なのであります。
■ロフテー枕工房本店
東京都中央区日本橋富沢町11-12 三共生興サンライズビルB1F
※完全予約制
http://www.lofty.co.jp/
「いらっしゃいませ」と我々を爽やかに迎えてくれたのは、睡眠改善インストラクターを務める、「ロフテー快眠スタジオ」の矢部亜由美さんである。
「よろしくおねがいします! 」
矢部さんの爽やかっぷりに、目が覚めたところです。
まずは「ロフテー枕工房」がどんなところなのか尋ねてみた。
「ロフテー枕工房では、枕の専門知識を持った『ピローフィッター』が首のカーブの深さの計測やコンサルティングを行ない、お客様一人ひとりに合った枕選びをサポートしています。洋服の試着のように、ベッドで“試し寝”をしていただいたのち、最終的にセミオーダーという形で『快眠枕』をご提供する流れになっています」
1号店がオープンしたのは1996年。バブル崩壊後である。
バブル時代、仕事や遊びに夢中だったサラリーマンやOLは、疲れた身体を癒すため、それまであまり関心がなかった“眠り”に目を向け始めた。
「ロフテー枕工房」はそんな人たちのニーズにマッチ。以後、全国の主要な百貨店の寝具売場にも常設されるようになり、現在は日本と台湾で計70店舗以上あるそうだ。
ふむ。それにしても、うちの嫁さんのみならず、枕で悩む人ってそんなにいるのかあ。
「『枕が合わず眠れない』という方だけではなく『枕のせいで肩がこる、首が張る』とお申し出になる方が少なくありません。枕だけですべての問題が解決されるわけではないですが、自分に合った枕だと単純にラクなんです。靴でも足のサイズにフィットしていると歩きやすく、疲れにくいですよね。枕も同じ。リラックスして眠れる最適な枕を使えば快眠につながり、身体の調子を整えるための第一歩になる、と考えられています」
「な……なるほど」
生まれて初めて枕についてアツく語られ、得も言われぬ表情になっているところです。
ちなみに枕選びのポイントは3つ。
「高さ」「構造」「素材」だという。
まず枕の「高さ」が重要なのは、人によって体型や首のカーブの深さが違うためだ。枕が高すぎたり低すぎたりすると、息苦しいというか、寝苦しくなるのは当然、というわけだ。
「構造」が重要なのは、人が就寝中20~30回寝返りをうつからだという。寝ている間、人は自然と仰向けになったり、横を向いたりする。仰向けでも横向きでも、適切に頭を支える「構造」を持つ枕がベター。中身の素材がひとつの袋に入った枕だと、そうしたさまざまな寝姿勢に対応できないわけだ。
「ロフテーの快眠枕は中身が5つのパーツに分かれ、それぞれ高さが異なる構造になっています。おかげで仰向けでも横向きになっても、常にラクな姿勢で眠れるわけです」
そして最後の「素材」は、枕の中の素材のこと。吸湿性に優れた「そばがら」や、通気性がよく丸洗いできる「パイプ」に「マルコビーンズ」、柔らかな「羽毛」、包み込む感触がクセになる「ウレタン」など、一口に枕の素材といっても千差万別。
特性を知ったうえで選ぶことが、さらに安眠に繋がるというわけだ。
ううむ……。考えてみれば、そもそも人の頭の形や首の高さは千差万別だ。試しもせずに素材も選ばず、言ってしまえばうちの嫁さんが「安い」という理由だけでホームセンターでゲットしてきたマイ枕が、果たして自分に合っているのかどうか、不安になってきた。
「では、少しお試しされますか?」
やたらとポップなカラーの登場ですね。
というわけで、専用ベッドでの試し寝をさせてもらうことにした。
まず最初は、ポップなカラーも涼しげな夏季限定の“夏枕”である。
外側地は熱を逃がすため二重のメッシュ構造になっていて、いかにも涼しそう。
素材は通気性にすぐれたパイプ素材である。
でも、枕で涼しくなるって、そんなことあるのか……。
「やだ。涼しくて気持ちいい! (そして、ぐう……)」
頭を置いてみると、いきなりひんやりとする。
あまりの涼しさに1,2,3…の速攻で寝入ってしまった。
「実は、この枕にはクールジェルが入るポケットがついているんです。冷蔵庫で冷やしたジェルが、蒸れやすい後頭部を冷やして快適な眠りへと誘ってくれます」
なるほど。これは熱帯夜に使えそうだ。原稿に煮詰まって、筆が進まないときのクールダウンにも使えそうである。
「次はこちらをお試しください。こちらは、先ほどの枕に比べて非常に柔らかく、二層構造になっているのが特徴です。頭を載せるとサイドが持ち上がってソフトに頭を包み込む。また、うつ伏せで寝たときに枕の間に手を入れてふかふかの状態で眠れるというわけです」
聞けば、某有名女優もこれを愛用しているとか。セレブ枕である。
とかいって、言うほど気持ちいいものなのかね……。
「んまあ。ふわふわじゃないの! (からの、ぐう……)」
おお。思わずオネエ言葉になるほどの贅沢感じゃないか。
「では、次にこちらはいかがでしょう?」
と、矢部さんが持ってきてくれたのがコレである。
「え。それ、シトじゃないですか? エヴァの」
「いえいえ。抱き枕です。抱き枕の目的は2つあるんです。ひとつは体圧分散。横向きに寝るときは片側に体重が重くのしかかりますが、抱き枕をすることで重さが分散されてラクになるんです。もうひとつは、抱きかかえることによる安心感。子どもの頃、ぬいぐるみを抱いて寝ていたのと同じですね」
ほう。実は私、抱き枕をこれまで一度も使ったことがなく、人生初の体験である。どんな感じなのか――。
「ちょ……どう使うんですか」
うーむ。何だか収まりちょっと悪いです。
実はひと口に抱き枕といっても、種類がいくつかあり、個々人の横向きの寝姿勢によってフィットする形が異なるそうだ。私にはこのタイプはちょっと合わないかなあ。
「では、こちらはいかがですか? 」
と、矢部さんが別の抱き枕を。さっきのはうつ伏せに近い姿勢で寝る人に最適な『ボディピローセレクションI型』といい、こちらは丸まった姿勢に最適な『ボディピローセレクションC型』なのだという。
ほう。では、お言葉に甘えて――。
「あ、なんかさっきより……いい」
そこはかとなく感じる安心感。まるで母胎回帰したかのようですよ。
こんな風に丸まって寝る人にはこの抱き枕、フィットして心地いいかもしれない。ただ、まあ、私にはもうちょっとかなあ。
なんてウダウダ言っていたら、矢部さんがまた持ってきてくれた。
「ていうか、3種類もあるんですね」
「あ、これキタわ! (ここで、ぐう…)」
ちなみにこちらは『ボディピローセレクションS字型』。一口に抱き枕といってもいろいろあって、それぞれ違うということを強く実感することになった。
やはり、枕も奥が深い世界だなあ。
さて、いろいろと試したが……。
「やはり自分に合ったオンリーワン枕が欲しい! 」
ということで、次回は快眠枕を手にすべく、カスタムメイドで“俺ジナル”な枕をつくるコンサルティングを受けることにした――。(次回へ続く)
今回試したマクラは――。
試した順 | 商品名 | 特徴 | 価格 |
---|---|---|---|
1 |
夏枕 クールサーキュレーションピロー |
本体は中にパイプ、外にメッシュと通気性抜群。クールジェルを備え付けられるため、暑い夜もすっと寝入ることができる。 |
15,750円(税込) |
2 |
パピヨン(ダウン・フェザー) |
ふんわり頭を包み込む寝心地。二層構造になっていて、サイド部分はうつ伏せで寝た時に両手を枕の間に差し込める。 |
22,050円~26,250円(税込) |
3 |
ボディピローセレクションI型 |
うつ伏せに近い状態で安定させる直線の形状の抱き枕。穴の部分に、ヒジや腕を乗せて安定させる。 |
16,800円~18,900円(税込) |
4 |
ボディピローセレクションC型 |
丸まった姿勢で眠るタイプの人にオススメなのが、こちらのC型抱き枕。穴の部分にはヒザや太ももがフィット。 |
15,750円~17,850円(税込) |
5 |
ボディピローセレクションS型 |
極端に真っ直ぐになったり、まるまることなく、一般的な横向き姿勢で寝る方にフィットするのがこのタイプ。 |
16,800円~18,900円(税込) |
※文/百瀬康司、企画構成/カデナクリエイト、編集/イー・ローン