第775回
他人ごとではない「空き家」事情
- 「空き家」についてのニュースを最近目にすることが多く、以前親族が住んでいた家が空き家になっていることが気になっています。 空き家対策の法律もできたそうですが、「空き家」にはどんな問題があるのでしょうか。(静岡県 T)
- 管理されていない空き家は、火災や倒壊の危険性や治安上の問題などがあります。 著しく保安上・衛生上有害となるおそれのある空き家には、「空き家対策特別措置法」が適用され、行政代執行によって強制的に解体される可能性もあります。
傷んだ「空き家」は、危険な存在に
少子高齢化や都市部への人口集中などで全国的に空き家が増え、社会問題となっています。 ひと気のない空き家は換気もされず、だんだん傷んでいきます。 台風などで屋根や壁が破損しても気づかれず修理もされないまま、いっそう建物の傷みが進む場合もあるでしょう。古びて傷んだ家は、地震で倒壊する危険性も高くなります。 またその敷地には雑草がはびこり、外からも見えずに、ゴミが不法投棄されたり、不審者や動物が入り込んだり、放火されたりすることがあるかもしれません。 管理されていない「空き家」は近隣住民の不安の種となってしまいます。
しかし、空き家の問題点はわかってはいても管理するにも解体するにも費用がかかります。また敷地内に建物があると固定資産税が安くなる※ことから、適切に管理されてない空き家が増えています。
※固定資産税等が安くなる・・・固定資産税や都市計画税には「住宅用地の特例」があり、表1のように、一定面積までの土地の課税標準(税額算定の基準となる価格)が低く抑えられる。
区分 | 固定資産税 | 都市計画税 | |
---|---|---|---|
小規模住宅用地 | 住宅用地で住宅1戸につき200m2までの部分 | 価格×1/6 | 価格×1/3 |
一般住宅用地 | 小規模住宅用地以外の住宅用地 | 価格×1/3 | 価格×2/3 |
「特定空家」が勧告を受けたら、固定資産税の住宅用地の特例は受けられない
そこで、平成26年11月に成立し、27年5月に完全施行されたのが「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家等対策特別措置法)」です。 この法律では、空き家の所有者への適切な管理の指導や、適切に管理されていない「特定空家(放置することが不適切な状態にあると認められる空き家等)」の指定、「特定空家」に対する自治体の助言・指導・勧告・命令などが定められています。
「特定空家」にかかる土地について「勧告」を受けると、固定資産税等の住宅用地特例から除外されます。 「勧告」を受けても対処しなければ改善の「命令」がなされ、命令に背くと50万円以下の罰金が科されます。 命令を受けた空き家に改善がみられなければ、自治体が所有者の代わりに「行政代執行」を行って樹木の伐採や建物の解体がなされ、その費用の請求を受けることになるかもしれません。
表2 「特定空き家等」の状態
1.倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態2.著しく衛生上有害となるおそれのある状態
3.適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
4.その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針 (ガイドライン) より
空き家の解体には補助金の出る自治体も
したがって、売却や有効活用もできず、近隣住民の不安の種となるような状態の空き家であれば、解体を考えたほうがよい、ということになります。 解体費用がかかり、固定資産税や都市計画税が住宅用地(住宅のある土地)である場合よりも高くなりますが、倒壊や火災、治安上の問題の心配がなくなり、近所に迷惑をかけず、売却もしやすくなるというメリットもあります。
自治体によっては、空き家の改修や解体に対して補助金が受けられる場合もあります。 補助金を受ける条件や金額等は自治体によって異なり、期間や件数が限定されている場合もあるので、まずは、空き家のある地域の市区町村役場等で早めに確認されるとよいでしょう。
また、地方銀行や信用金庫等のリフォームローンには、空き家の解体に利用できる商品が増えています。 「空き家解体専用」のローンを用意している金融機関もあるので、解体資金が足りない場合にはご検討ください。
放置された「空き家」はトラブルのもと。 ご近所の方から苦情を受けたり、行政からの指導を受けたりする前に、売却や有効活用、解体などの対策を考えましょう。
【参考リンク】
- リフォームローンを探す・比べる・申込む
- FPからのアドバイス(リフォームローン)