第16回
不動産担保ローンとは?担保になる対象や審査基準を紹介!
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この記事のポイント
- 不動産担保ローンとは、「不動産を担保にしてお金を借りるローン」のこと
- 不動産担保の対象としては戸建て・一軒家などのさまざまな形態があるのが特徴なので事前に確認しよう
- 毎月の返済が問題ないかについて、契約者本人の信用情報なども審査される
長い人生のなかでは、急にまとまった資金が必要になることもあります。しかし、住宅ローンを返済中であったり、他にいくつかローンを借り入れていたりして、「さらに借り入れできるか心配」という人もいるかもしれません。
お金の工面に悩んだときでも、不動産を所有している人なら不動産担保ローンを利用する方法もあります。不動産担保ローンの仕組みや担保となる不動産の条件を正しく知って、検討してみるのもいいでしょう。
不動産担保ローンとは
不動産担保ローンとは、名前が示すとおり「不動産を担保にしてお金を借りるローン」のことです。ローンを借り入れた経験のある人や、検討したことがある人のなかには「担保」という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。「担保」とは、ローンの契約者が万が一ローンの返済ができなかった場合に備え、あらかじめ債権者にローンを返済する手段として提供しておくものです。
ローンの種類によっては、不動産でなくても有価証券など資産価値のあるものや、人的担保として保証人などで良い場合もあります。しかし、不動産担保ローンでは「不動産」を担保として提供することが決められています。なお、不動産はローンの借り入れをする本人名義の不動産だけでなく、配偶者や家族名義、第三者の不動産でも担保提供者の同意が得られれば担保として提供することが可能です。
不動産担保ローンの対象
ひとくちに「不動産」といっても土地や建物があります。また、建物もさまざまな形態があるのが特徴です。そもそも「万一、返済ができなくなった場合に、担保として提供した不動産を返済に充てる」という意味を持っているため、借入金に見合うだけの不動産評価が必要です。例えば、不動産担保の対象となるのは以下のような物件になります。
- 戸建て・一軒家
- マンション・アパート
- 駐車場
- 別荘
- 生活環境の整った土地など
後ほど詳しく説明しますが、不動産担保ローン申込みの際には金融機関によって、担保として提供される不動産の担保評価が行われます。金融機関によって評価の方法は異なる場合がありますが、立地や規模、構造、管理状況を見ながら評価するのが一般的です。担保評価で価値が出るものであれば築年数の古い物件でも取り扱いできます。
ただし、建物は自分名義だが、土地は借地で他人名義というケースでは担保物件として対象にならない場合もあります。また、借地の名義が親族で担保提供者に同意が得られる場合は、担保物件の対象としている金融機関もあります。他にも担保の対象外となる不動産には次のようなものがあります。
- 農地や調整区域の土地
- 再建築ができない物件
- 住宅ローン返済中の物件(※金融機関の抵当権設定基準によって、住宅ローンを返済中でも対象としている金融機関もあります)
これらは金融機関によっても取り扱いは若干異なりますので、自分の担保提供する物件がどのような名義になっているかを事前に確認しておくと安心です。
また、農地を宅地や駐車場などに転用したくても、所有者が転用する場合は農地法第4条による農業委員会の許可が必要です。所有者以外の人が転用する場合は農地法第5条による農業委員会の許可が必要になります。このように、その不動産を利用するうえでさまざまな制限がある不動産は担保評価が下がるため、対象外とする金融機関が多い傾向です。
さらに住宅ローン返済中の物件に関しては、住宅ローンを借りた金融機関によって対象の不動産に抵当権が設定されるのが一般的です。そのため、万一返済が滞るようなことがあれば、先順位で抵当権を設定している金融機関がその不動産を差し押さえ、売却して代金から債権を回収する権利を所有しています。新たに貸し付けを行う金融機関にとっては先順位の抵当権が設定されていると担保価値が出ない場合も少なくありません。
しかし、担保評価額が住宅ローンの残債より多い場合は不動産担保ローンの担保対象になるケースもあります。例えば、以下のような場合は後順位の抵当権が設定されている金融機関でも不動産担保価値が出る可能性があるでしょう。
- 住宅ローンの借入額を住宅の評価額上限まで借りていないケース
- 住宅ローンの返済が進むことで残債が少なくなり、不動産評価額と借入残高の間に差額が生まれているケース
住宅ローンを貸し付けた金融機関にとってはあくまで住宅ローンの残債分だけの抵当権です。そのため、不動産評価額とローン残高の間に差がある場合、その差額の範囲内で不動産担保ローンの融資を受けられる場合があります。金融機関によっては、ローン残高が購入時の約6割以下という具体的な目安を設定しているところもあります。
なお、そもそも金融機関によって不動産担保ローンの対象とする不動産のある地域を限定している場合もあります。対象地域は金融機関ごとに異なりますので、まずは自分の地域が対象となっているかどうかを確認することが必要です。
不動産担保ローンの種類
多くの不動産担保ローンでは個人を対象とした使途が自由な「フリーローン」形式で貸し付けをしています。この場合、事業性資金としては使用することができません。しかし、金融機関によっては個人事業主や法人を対象とした不動産担保ローンを取り扱っているところもあります。
- 事業者向け
「開業資金」「納税資金」「運転資金」などで資金が必要になる場合に、不動産を活用して融資を受ける個人事業主や法人を対象とした不動産担保ローンがあります。金融機関によってはビジネスコース、短期事業コースなどコースはさまざまです。 - 個人向け
使途が自由なフリーローン形式の他、「自宅などの生計の維持に不可欠な不動産」以外の担保物件に限られた遊休資産コースもあります。いずれの場合も借入金の使い道は自由で、教育資金、リフォーム資金、既存ローンの借り換え資金など、さまざまな資金に利用可能です。
不動産担保ローンの審査と必要書類
不動産担保ローンの審査と不動産査定
不動産担保ローンを検討するとき、ほとんどの人は「担保とする不動産でいくら借り入れできるのか」が気になるのではないでしょうか。借入額は、担保不動産の評価額によって決まります。どの金融機関も具体的な評価方法は公表していないものの、一般的には以下のような基準で評価する傾向です。
- 建物の評価
建物の構造(減価償却)や築年数などで算出されます。 - 土地の評価
公示地価、基準地価格、固定資産税評価額、路線価などで算出されます。
これらの評価額と金融機関ごとのチェック項目に「掛け目」をかけて最終的な評価額が決定されるようになります。
不動産担保ローンの審査における必要書類
もう一つ、審査において重要とされるのが「返済能力」ですが、一般的には「担保として不動産を提供しているから返済能力は関係ないのでは?」と感じるかもしれません。しかし、不動産担保ローンも一般的な借り入れと同様に毎月決まった金額の返済が必要です。そのため、金融機関としては毎月の返済が問題ないかについて、契約者本人の信用情報なども審査されると心得ておきましょう。
また、申込みに当たっては次の書類が必要になり、金融機関によっては書類が異なる場合がありますので、申込み前にきちんと確認しておきましょう。
- 本人確認書類
個人の場合:運転免許証など写真付きの公的証明書類、住民票の写し、所得証明書(源泉徴収票、確定申告書など)
法人の場合:代表者の写真付きの公的証明書類(運転免許証など)、法人の登記事項証明書、決算書・確定申告書(直近3期分) - 担保物件確認書類
不動産の登記事項証明書、住宅地図など
不動産担保ローンのメリット、デメリット
不動産担保ローンのメリットとデメリットをまとめると次のようになります。
不動産担保ローンのメリット
不動産担保ローンには次のようなメリットが考えられます。
- カードローンやクレジットカードのキャッシングなど、無担保ローンに比べて低金利で融資を受けられる
- 担保が不動産なので、一般的に担保価値が大きく高額なローンが期待できる(まとまった資金の調達が可能)
- 返済期間を長く設定できる(月々の支払い額を軽減できる)
- 保証人が不要
- 資金使途が自由
不動産担保ローンのデメリット
一方で次のようなデメリットもあります。
- 返済が滞ると不動産を失う可能性がある
- 諸費用がかかる
- 登記するため「抵当権や根抵当権」が設定される
- 途中解約(繰り上げ返済)の場合、違約金がかかる可能性がある
- 不動産価値によっては、追加で担保を要求される可能性がある
- 審査(担保)条件が厳しく時間がかかる
まとめ
まとまった資金が必要になったときには、自分や家族の不動産を活用してローンを借り入れる不動産担保ローンを検討するのも一つの方法です。しかし、安易に借り入れして後々返済が困難になってしまうと、大切な不動産を失うことになりかねません。
まずは、不動産担保ローンの仕組みや注意点をきちんと理解しておきましょう。返済を少しでもスムーズにするためには、わずかな金利差や手数料、繰り上げ返済の可否などの商品性も無視せずに、じっくりと考えたうえで自分に合った不動産担保ローンを選択することが大切です。
どんな借り入れの場合でも同じですが、ローンを利用する際には「借りられる金額」に注目する前に「返済できる」ことを一番に考えて利用しましょう。金利はもちろん、諸手数料や途中解約(繰り上げ)をする場合の違約金などの大小で返済総額に差が出てきますから、できるだけ返済総額が少なくなるような金融機関を選ぶことが重要です。
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ライター紹介
日本FP協会認定CFP®
生命保険会社にて15年勤務した後、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。
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