第895回

不動産担保ローンを借りるのはどんな人?

新型コロナウイルスの影響で勤務先の業績が落ち込んでおり、冬の賞与額は昨年を下回る見込みです。賞与をあてにしていた支払いが難しくなる恐れがあるため、ローンの借り入れを検討しようと思っています。調べてみると、たくさんの種類のローンがありますが、不動産担保ローンというのは、どんな人が借りるのでしょうか。
多様なローンの中でも、借りる時にすぐに不動産担保ローンを思い浮かべる人は少ないでしょう。不動産担保ローンは、不動産を持っていれば借りることができます。他のローンと比較すると、用途が限定されない、多額の借り入れができる、返済期間を長く設定できるなどの特徴があります。

担保にできる不動産を持っていれば、不動産担保ローンを借りることができる!

不動産担保ローンは、担保にできる不動産があれば借りることができます。なお、本人名義の不動産に限定されません。配偶者や実父母、実兄弟姉妹などの家族名義の不動産でも、その家族が担保として提供してくれれば借りられます。
不動産は、自宅、別荘、賃貸アパート・マンション、駐車場など、種類は問いません。金融機関によっては、すでに担保として他の金融機関の抵当権が設定されている不動産であっても借りることができる場合があります。

不動産担保ローンは、一般的に、他のローンと比較すると多額の借り入れをすることができます。また、返済期間も長く設定でき、金利(実質年率)も低い傾向があります。さらに、借りたお金の用途は限定されません。そのため、返済時の負担を軽減できる使い勝手がよいローンといえるでしょう。

  担保の
有無
資金用途 借入限度額 返済期間 金利
不動産担保ローン あり 原則自由 10億円程度 ~35年程度 ~9%程度
教育ローン なし 教育関連資金 1,000万円程度 ~20年程度 ~5%程度
自動車ローン なし 自動車購入資金 1,000万円程度 ~10年程度 ~5%程度
カードローン なし 原則自由 1,000万円程度 ~1年程度 ~18%程度

不動産担保ローンの使いみちは広い!

一時的な資金不足をローンでカバーしようとする場合、用途が決まっていれば教育ローンや自動車ローン、決まっていなければカードローンに目が向かいがちですが、不動産担保ローンは、担保にできる不動産さえあれば、どんな用途でも、比較的低い金利で、多額のお金を長期間借りることができます。もちろん、返済負担を抑えるために、少額の借り入れでも、短期間の返済でも構いません。

借りたお金は、子供の教育資金や自動車購入費用、リフォーム資金、生活費などに使えます。
個人事業主やこれから事業を開始しようとしている人は、運転資金や開業資金として活用することもできます。
また、現在複数のローンを併行して返済をしている人は、それらを不動産担保ローンに借り換えて1本化すれば、管理をしやすくすることができます。低金利のものに借り換えれば、以後の返済負担を軽くすることもできます。

その他、セカンドハウスの購入資金、介護や医療資金、不動産を相続したときの相続税の支払い、遺産を親から相続する代わりに兄弟等に支払う代償金などにも活用できます。

不動産担保ローンを借りるときの注意点

不動産担保ローンは、金融機関による担保評価によって、借入可能額が決まることに注意が必要です。そのため、担保が低く評価されると、必要な額が借りられない場合があります。また、不動産に抵当権を設定するための登記手数料、印紙税などの諸費用がかかることにも留意する必要があります。
返済が滞ってしまうと、最終的には不動産を手放すことになりかねません。家族名義の不動産を担保にして借り入れをしていると、家族にも迷惑がかかります。そのような事態を避けるためにも、あらかじめ、借り入れの検討をする段階で、必要額を精緻に見積もり、無理のない返済計画を立てておくことが大切です。
不動産担保ローンは、さまざまな金融機関が多様な商品を提供しています。借りる前に、金利タイプ、適用金利などの条件をしっかりと比較検討し、できるだけ有利な商品を選ぶようにしましょう。

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私が書きました

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2020年10月12日