第1087回

不動産担保ローンの比較検討時は、申込条件をよく確認しよう!

現在、教育ローンやカードローン、キャッシングなど、複数のローンを利用して返済しています。一方で、ローンの返済が終わった一戸建ての住宅があるので、これを担保に不動産担保ローンを利用し、複数のローンをまとめて一本化できないものかと考えています。不動産担保ローンの特徴や利用する上での注意点などがあれば教えて下さい。(埼玉県 Tさん)
不動産担保ローンは、無担保ローンよりも一般的に借入可能額が多く、返済期間は長めに、金利は低めに設定される傾向があります。また、さまざまな資金使途にも対応できるメリットもあります。ただ、商品によって申込条件が異なるため、検討する時には、商品情報をよく確認することが重要です。
選択肢を評価する男性

不動産担保ローンのメリット・デメリットは?

主なメリット 主なデメリット
・多額の借り入れができる
・使途が自由
・金利が低め
・長期間借り入れができる
・支払いが不可能になった場合、担保不動産を差し押さえられて売却される可能性がある
・契約までに時間と諸費用がかかる

不動産担保ローンのメリットは、カードローンやキャッシングをはじめとした無担保ローンと比べると、多くの金額の借り入れができることや、比較的低金利で長期間の借り入れができる点などがあります。商品によっては、1億円を超える金額、30年を超える期間の借り入れができるものもあります。これらのメリットを借り手が得られる背景には、土地や建物などの不動産を担保として提供することで、貸し手である金融機関はリスクの軽減を図ることができる点があります。万が一、借り手が返済できなくなった場合、貸し手は、担保不動産を売って債権を回収します。

一方、借り手のデメリットは、万が一ローンの返済できなくなった場合、担保不動産が差し押さえられ、売却される可能性があることや、契約までに時間、費用がかかることなどがあります。契約前の審査では、担保不動産の価値の評価や、借り手の信用調査・返済能力の確認などが行われます。また、融資事務手数料や、抵当権設定のための登記費用、印紙代などの諸費用もかかります。不動産の価値が低いと評価されると、金融機関からの借り入れができない場合や、想定よりも少ない金額しか借り入れができない可能性もあります。

ただ、一般的には、不動産担保ローンは、担保として提供できる不動産があり、借り入れ後に確実に返済できることを前提とすれば、多くの金額を長期間、低い金利で借りることができ、資金使途に制約がないメリットが大きいため、安心して活用できると言えるでしょう。なお、親族など、本人以外が保有する不動産でも、担保が提供できれば、借り入れることが可能です。

個人向けか、事業者向けかなど、目的や自分の属性に沿った商品選びが重要

不動産担保ローンは、銀行やノンバンクなど、さまざまな金融機関が提供していますが、商品によって申込条件が異なるため、比較検討する際には、商品の情報を具体的に細かく確認することが大切です。

不動産担保ローンの資金使途は、大きく個人向けと事業者向けとに分かれています。法人は事業者向けですが、個人事業主の場合は、自分の生活等に関するプライベートの資金であれば個人向け、事業性資金であれば事業者向けを利用する必要があります。

個人向けは、生活資金、教育資金、マイカー資金、納税資金、リフォーム資金、セカンドハウス購入資金、ローンの借り換え、複数のローンを一本化するおまとめローンなど、さまざまな使途で利用できます。ただし、商品によって、収益物件の購入資金として借り入れができる/できない、また、収益物件の購入目的では利用できなくても、借り換え目的であれば利用できるものなどがあります。

事業者向けは、運転資金、設備資金、開業資金、納税資金など、事業運営に関するさまざまな使途で利用できますが、目的によっては、事業計画書や創業計画書の提出を求められる場合もあります。

また、金融機関や商品によって、開業資金に対応していなかったり、地域が限定されていたり、申込者の借入時の年齢や完済時の年齢にも条件が設けられていたりします。

したがって、不動産担保ローンを選ぶ際には、まず、利用目的や自分の属性などによって対象商品を絞り込むことが必要です。そのためには、商品の情報を詳細に確認しなければなりません。対象商品を複数絞り込んだ上で、それぞれの金利タイプ、適用金利、諸費用などを比較検討して、できるだけ有利な商品を選択するようにしましょう。対象商品を絞り込んで比較する際には、「比較リスト」に登録すると便利です。

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2024年07月02日