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第367回

不動産担保ローンは総量規制の対象外?

自営で美容院をしています。新しい美容機器・備品購入のため、不動産担保ローンの利用を考えています。総量規制で借りにくくなると聞きますが、不動産担保ローンも総量規制の対象なのですか?(埼玉県 M)
不動産担保ローン(居宅等を除く)は総量規制の対象外です。

2010年6月18日、改正貸金業法が完全施行

改正貸金業法は、2006年12月に成立し、段階的に施行されてきましたが、2010年6月18日に完全施行されることになりました。総量規制(借入総額を年収の3分の1に制限する)や、グレーゾーン金利の廃止(出資法の上限金利29.2%を利息制限法の水準の15~20%に引き下げる)も実施されることになります。
総量規制は、返済できないような過剰な貸付を防止するための規制で、個人が貸金業者から借り入れした残高の合計が年収の3分の1を超えていると新規の貸付を受けることができないという規制です。たとえば、年収300万円の会社員が消費者金融A社から50万円既に借りていれば、消費者金融B社からは新たに50万円までしか借りることができないということになります。
しかし、利用者に有利なローンまで規制してしまっては本末転倒です。そこで、総量規制の対象外となるローンが定められており、不動産担保ローンも対象外とされています。ただし、自宅を担保に無理な借り入れを行って返済が滞れば住む場所を失うことになるので、対象外となるのは、自宅を除く不動産を担保とした不動産担保ローンとされています。

不動産担保ローンは、総量規制の「適用除外」に

総量規制の対象外となるローンには、「適用除外」と「例外」があります(下表参照)。

〈総量規制の適用除外と例外〉

【適用除外】
1. 不動産購入のための貸付(住宅ローン)
2. 自動車購入時の自動車担保ローン(自動車ローン)
3. 高額療養費の貸付
4. 有価証券を担保とする貸付け
5. 不動産(居宅等を除く)を担保とする貸付
6. 売却予定不動産の売却代金により弁済される貸付

【例外】
7. 顧客に一方的に有利となる借り換え
8. 借入残高を段階的に減少させるための借り換え
9. 顧客または顧客の親族等の緊急に必要と認められる医療費を支払うための貸付
10. 配偶者とあわせた年収3分の1の貸付(配偶者の同意が必要)
11. 個人事業者に対する貸付(事業計画、収支計画、資金計画により、返済能力を超えないと認められることが要件)
12. 新たに事業を営む個人事業者に対する貸付(事業計画、収支計画、資金計画により、返済能力を超えないと認められることが要件)

※4~6を「例外」から「適用除外」とすること、8を例外に追加することについて、金融庁では内閣府令の改正に向けてパブリックコメント*を実施中(2010年5月25日まで)。
出典:金融庁ホームページ『カシキンQ&A』応用編 4ページ

* 公的機関などが命令等(政令、省令など)を制定する際に、事前に命令等の案を示し、その案について広く公に意見や情報を募集すること。
「適用除外」は、総量規制に関わらず借り入れ可能で借入残高にも算入されないので、その後の借り入れにも影響しません。たとえば、住宅ローンは「適用除外」なので、3,000万円の住宅ローンを借りていても総量規制の借入残高には算入されず、個別のローンの審査に通れば新たな借り入れが可能です。
一方、「例外」は総量規制に関わらず借り入れ可能ですが、借入残高には算入されます。たとえば、年収300万円の会社員にすでに100万円(年収の3分の1)の借入残高があっても、緊急に家族の医療費として20万円が必要な場合は、返済可能と認められれば「例外」として借入できますが、借入残高には算入されて合計120万円となり、通常の新たな借り入れは出来ません。
不動産担保ローン(居宅等を除く)など(表4~6)は、これまで「例外」とされていましたが、「適用除外」への変更する方向で内閣府令の改正が進められています。

銀行などのローンは総量規制の対象外

なお、総量規制の対象となるのは、貸金業者から個人が借り入れをする場合なので、銀行や信用金庫・信用組合、労働金庫等からの借り入れは借入残高には算入されません。法人名義での借入も対象外となります。
個人事業主であるMさんの場合、銀行等の不動産担保ローンを利用する場合はどの不動産を担保にしても総量規制には関係ありません。しかし、消費者金融等の不動産担保ローンを利用し、自宅を担保にする場合は総量規制の対象となるわけです。

不動産担保ローンを利用する際には、そのローンの審査基準を満たすと同時に、総量規制についても注意を払って、どこから、何を担保に、どれだけ借りるのか、慎重に検討することがより大切になってきますね。

私が書きました

大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2010年05月14日