第832回
投資用不動産の購入には収支計画を必ずチェック!
- 「老後資金が2千万円不足する」という報道を聞いて老後が不安になってきました。 子どもの教育費も目途がつきましたので、不動産投資を視野に入れて情報収集しています。 不動産投資を行う際の資金の借り入れで注意点はありますか。(Tさん 会社員 53歳)
- 不動産投資は資金計画が大変重要です。 投資物件が決まったら複数のパターンで収支計画を作り、無理のない範囲で行いましょう。
不動産投資のメリットとは?
不動産投資とは、購入した不動産を貸し出し、賃料を得る投資のことです。 不動産投資のメリットは、うまくいけば長期にわたって安定収入を得られるということでしょう。 働けなくなった場合でも賃料は入ってきますので、老後の収入源としても有効です。場合によっては売却益も見込めます。
しかし、メリットだけではありません。 不動産を取得する際にかかる不動産取得税や固定資産税の負担が発生し、修繕などの手間や費用もかかります。 また空室リスクや家賃滞納のリスクもあります。
不動産投資にはメリット・デメリットそれぞれありますが、金融機関から融資を受けることができれば自己資金が少なくても行うこともできますので、興味を持たれる方も多くなっています。 サラリーマンが副業として行うケースも珍しくありません。
不動産投資には収支計画が重要
不動産投資は、賃貸収入や事業に関する支出を予想し、投資する価値がある物件かどうかを見極めることが重要です。 不動産投資でどの程度の収入を得たいかによって選ぶ物件も変わってくるかと思いますが、自己資金が少ないなら、まずは無理のない範囲で区分マンションや中古のアパートといったところから始めるというのも一つの方法でしょう。
中古物件の場合だと、修繕にかかる費用は物件によって大きく異なります。 物件の状態によって費用が何年で回収でき、収益がどのくらい見込めるのかも変わりますので、収支計画が重要になってきます。
不動産投資では物件の修繕計画に加え、賃料や空室率によっても収益が左右されます。 収支計画はうまくいった場合だけでなく、そうでない場合も含めいくつかのパターンで検証しましょう。 賃料は物件の経過年数とともに下がっていくことを前提にし、空室が続いたとしても返済に無理がないかどうかを確認しましょう。
空室リスクを避けるためには、サブリース会社にアパート経営を委託し、保証された家賃を受け取る「サブリース契約」を利用する方法もあります。 最近、サブリース会社の破綻や金融機関の不正融資の問題が報道されたことからアパートローンにネガティブなイメージがあるかもしれませんが、アパートローンは不動産投資の有効な手段です。また、サブリース契約も賃貸経営の手間が省ける上、家賃保証もあり、忙しい方には魅力的なシステムです。 ただし、サブリース契約はコストがかかりますので収益が減りますし、委託先から賃料の減額や中途解約を求められる場合もあります。 収益がきちんと出るのかをシミュレーションした上で、契約内容をよく理解して利用するべきかどうかを判断しましょう。
アパートローンを選ぶポイントは?
不動産投資は、第三者に物件を貸して収入を得るものですから、住宅ローンより金利は高めになります。 住宅ローンの場合は、借りる人の返済能力が主な審査基準になりますが、アパートローンでは、物件の資産価値や収益力も判断材料となります。 その分、審査にも時間がかかります。 また、借入期間は建物の耐用年数以内とする商品や、保証人が必要となる商品もありますので、商品内容をよく確認して申し込むようにしましょう。 また、住宅ローンのように、団信(団体信用生命保険)が付けられる商品もあります。
収支計画書は金融機関に融資を申し込む際の事業計画書にもなります。 きちんとした収支計画で無理のない不動産経営ができるかどうかを判断し、不動産投資での資産形成につなげていきましょう。
私が書きました
ファイナンシャルプランナー(CFPR)。
大学卒業後、情報システム会社で金融系SE(システムエンジニア)として勤務し、出産を機に退社。子育て中の2006年にファイナンシャルプランナー(CFPR)資格を取得する。その後、教育費や保険・家計見直しなどのセミナー講師、幅広いテーマでのマネーコラム執筆、個人相談などを中心に、独立系FPとして活動を行っている。
※執筆日:2019年07月22日