第814回
「配偶者居住権」とは?配偶者の相続を考える
- 法改正により、配偶者居住権という権利が創設されたと聞きましたが、どのような権利なのですか?(46歳 会社員)
- 平成30年の法改正で注目されているのが、配偶者居住権の創設です。 配偶者居住権とは、相続開始時に被相続人(亡くなった人)の所有する建物に住んでいた配偶者が、引き続きその建物に終身または一定期間住むことができる権利をいいます。
配偶者居住権とは?
相続が発生すると、相続人の間で遺産分割が行われます。 相続人が複数いて自宅以外の財産が少ない場合、自宅に住み続けるために自宅を相続した妻が預貯金を相続できずに生活が苦しくなってしまうケースや、他に分割できる財産がない場合には自宅を処分せざるを得なくなってしまうケースもあります。 このような事態を避けるために創設されたのが、配偶者居住権です。
配偶者居住権とは、相続開始時に被相続人(亡くなった人)の所有する建物に住んでいた配偶者が、その建物を無償で終身または一定期間使用することができる権利をいいます。 住居についての権利を「所有権」と「居住権」に分けて相続できるようにするもので、例えば配偶者が居住権のみを取得することで、自宅での居住を継続しながらその他の財産も取得できるようになる場合などが考えられます。
配偶者居住権の取得要件と注意点
相続開始時に被相続人が所有する建物に居住している配偶者が配偶者居住権を取得できるのは、次のいずれかに該当する場合です。
(2) 配偶者居住権が遺贈・死因贈与の目的となっている
また、上記(1)(2)に該当しない場合でも、家庭裁判所による遺産分割の審判により、配偶者居住権を取得することができる場合もあります。
配偶者居住権には次のような効力および注意点があります。
(2) 配偶者は、居住建物の所有者に対し、配偶者居住権の登記設定を請求できます。
(3) (2)の登記があれば、第三者に対して配偶者所有権を対抗することができます。
(4) 配偶者は、居住建物にかかる通常の必要費を負担しなければなりません。
(5) 配偶者居住権は譲渡することができません。
なお、配偶者居住権の施行日は2020年4月1日です。 施行日前に開始した相続については適用されません。また、配偶者居住権が施行されたとしても、相続に関わるすべての問題が解決するわけでもありません。 相続人が多ければ住宅の所有権を取得した相続人からその他の相続人へ代償金の支払いが必要になる場合や、葬儀費用のほか墓地や墓石などの購入にお金がかかる場合もあります。 そのような場合に、相続財産や保険金、手持ちの資金等で対応できればいいですが、時間的、金額的に間に合わない場合にはフリーローンなどを利用するのも一案です。 ローンも余裕を持って申し込みしたいところですが、諸々計算してみると実は足りなかったとわかる場合もあります。 最近では、ローン申し込みから審査の回答までに要する時間も比較的短くなってきています。
配偶者居住権も含め多くの選択肢を持つためにも、情報収集を欠かさないようにしましょう。