第963回
なぜ住宅ローンの変動金利は変動しないの?
- 12年ほど前に変動金利型で借り入れた住宅ローンを返済中です。変動金利なのだから金利は変動するものだと思っていましたが、これまで一度も変動したことがありません。なぜですか?金利負担を軽くする方法はないのでしょうか?(43歳 会社員)
- 金融機関の広告で見かける住宅ローン金利は過去最低水準となっていますが、それは新規借入の場合に適用されるもので、すでに住宅ローンを返済中の方の金利は下がっていません。金利負担を軽くするためには借り換えを検討してみましょう。
変動金利はどうやって決まる?
住宅ローンの変動金利とは、返済期間中に定期的に(多くの金融機関で年2回)金利の見直しがあり、適用金利が変動するものをいいます。
住宅ローンの変動金利型の基準金利は、短期プライムレート(短プラ)と呼ばれる、金融機関が最優良企業に対して短期間の融資を行う際の最優遇貸出金利を基に決定しています。しかし、この基準金利がそのまま適用されるわけではなく、金融機関が定める一定の条件を満たすことで金利の引き下げを受けることができます。この引き下げられた後の金利を適用金利といい、実際の借入金利になります。
実は短プラは2009年以降10年以上変動していないため、ほとんどの金融機関が変動金利の基準金利を2.475%に据え置いています。しかし、競争激化などにより金利の引き下げ幅が拡大し、適用金利は下がっています。
例えば、ある金融機関で2009年に変動金利型で住宅ローンを借りた場合、基準金利2.475%から1%金利が引き下げられ、適用金利は1.475%でした。そして2022年2月現在、基準金利は2.475%で変わらないものの金利引き下げ幅が2.1%に拡大され、適用金利は0.375%となっています。
では、相談者の住宅ローンの適用金利も下がっているのかというと、そうではありません。現在の金利引き下げ幅は新規借入や借り換えの場合に適用されます。すでに返済中の場合、借り入れ当初の金利引き下げ幅が完済まで続くため、基準金利が下がらない限り適用金利が下がることはありません。
借り換えで金利が下がる場合も
2016年にマイナス金利政策が導入されたことにより、金利引き下げ幅は一段と大きくなりました。それ以前に住宅ローンを借りた人は、借り換えをすることで金利低下の恩恵を受けることができる可能性が高いと考えられます。
例えば、2009年に借入金額3,000万円、借入期間35年、元利均等返済(ボーナス返済無し)、適用金利1.475%で住宅ローンを借りた人が、残債2,075万円を借入期間23年、元利均等返済(ボーナス返済無し)、適用金利0.375%に借り換えた場合、支払利息総額を約282万円も減らすことができます。借り換えには各種手数料や保証料、登記費用などの諸費用がかかるのでそれらを考慮する必要がありますが、検討する価値はあるといえるでしょう。
また、固定金利は金融機関や商品によって徐々に上がり始めていますが、まだまだ低い水準です。今のうちに固定金利型に借り換えて、将来の金利上昇リスクに備えておくことを検討してみるのもいいでしょう。
借り換えには時間もかかるので、早めに情報収集し、商品を比較検討しておくことをおすすめします。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))、一級ファイナンシャル・プランニング技能士。
大学在学中にFP資格を取得。証券会社、銀行、独立系FP会社を経て独立。忙しくても無理なく実践できるメリハリ家計を提案するママFP。 ライフプラン全般の相談業務や家計簿診断、ライフプランセミナー講師、FP資格取得講座の講師として活動中。 学校での金銭教育にも注力している。
※執筆日:2022年02月14日