第960回
地球温暖化防止に向けて、住宅も省エネ推進
- マイホーム購入を検討中のため、住宅に関するニュースを気にしていたら、住宅ローン控除は「省エネ住宅」だと優遇幅が大きいと耳にしました。これからの住宅選びは「省エネ」も考えたほうがよいのでしょうか。(東京都 Sさん)
- 地球温暖化防止のため、住宅についても省エネ化や再生可能エネルギーの利用が推進されています。住宅購入の際は、省エネ手法やその費用、補助金や税制なども考えていきましょう。
住宅購入等にも省エネ推進
近年、大規模な自然災害が相次ぎ、その要因のひとつと考えられる地球温暖化への対策がさまざまな分野で進められています。その動きは、建築や住宅の分野でも。経済産業省・国土交通省・環境省の3省連携で、住宅の省エネ・省CO2化を進めるためにZEH建築の際への補助金制度も設けられています。
「ZEH(ゼッチ)」とは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」のこと。「外側の断熱性能などを大幅に向上させるとともに、効率的な設備システムの導入により、室内空間の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現し、再生可能エネルギーを導入することで年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとなることを目指した住宅(「令和3年度3省連携事業 ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの推進に向けた取り組み」より)」を指します。断熱性能を高めたり、太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用したりと、「省エネ」するにもいろいろな手法がありますが、それらを効率的に利用して住宅のエネルギー消費量が差し引きゼロになることを目指すというわけですね。
2021年4月には、改正建築物省エネ法が施行。戸建て住宅等の設計者から建築主への説明義務制度が創設され、地方公共団体の条例による省エネ基準の強化が認められることになりました。
たとえば東京都では、住宅などへの太陽光発電設備の設置義務化を盛り込んだ環境確保条例の改正が検討されています。
税制面で省エネ住宅を優遇
税制面でも省エネ住宅への優遇がはかられています。
たとえば、Sさんがニュースで目にされたように2021年12月に発表された「令和4年度税制改正の大綱」では、住宅ローン控除の対象となる住宅ローン残高の限度額が認定住宅や省エネ基準対応住宅、ZEHの場合は一般住宅よりも高い限度額となっています。
控除額 | 年末のローン残高の0.7% | |
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控除期間 | 13年 | |
控除対象となる年末ローン残高の限度額 | 一般住宅 | 3,000万円 |
認定住宅(認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅) | 5,000万円 | |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | |
所得要件 | 2,000万円以下 |
「令和4年度税制改正の大綱」に基づき筆者作成
また、住宅資金を親や祖父母等からもらった場合に適用できる「住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置」の非課税限度額、一般の住宅の非課税限度額が500万円であるのに対して、耐震・省エネ・バリアフリー住宅の場合は1,000万円と非課税限度額が大きくなっています。
住宅ローン・リフォームローンでも「省エネ」優遇
民間金融機関の住宅ローン・リフォームローンにも利用目的が「省エネ住宅」「エコリフォーム」等の場合には、金利優遇が受けられたり、より低金利の専用ローンが利用できたりする場合があります。民間金融機関と住宅金融支援機構の提携ローンである【フラット35】の場合、一定の省エネルギー性を満たせば、一定の当初期間0.25%の金利引き下げ(金利Aプランは10年、金利Bプランは5年)が受けられる【フラット35】Sが利用できます。
省エネ住宅の購入・工事費用は割高になりますが、金利優遇のあるローンを利用できれば金利節約分を省エネ工事によって増える費用負担に回すこともできますね。省エネで金利優遇があるローンはどこの金融機関にもあるわけではありませんので、ローン選択の際はよく調べ比較してみましょう。
省エネの手法や費用、補助金制度などにも注目を
このように住宅等の省エネ化は、官民挙げて推進される流れとなっています。省エネ住宅にすると導入時の費用はかさみますが、住み始めれば電気代やガス代等の負担が抑えられ、長い目でみれば経済的である場合もあります。すぐに省エネ化が義務化されるとは限りませんが、これから住宅を購入したりリフォームしたりする場合は、間取りや立地、利便性等に加え、住宅の省エネの手法や効果、費用、補助金制度などの検討もポイントになってくるでしょう。しっかりと情報収集をし、自分にとってメリットのある選択ができるようにしましょう。