第917回
住宅ローンの「返済可能額」から考えるマイホームの購入予算
- 住宅を購入しようとマンションのモデルルームを回り始めましたが、目につくのは高額な物件ばかりです。営業の方からは「住宅ローンは借りられますよ」と言われるものの、なんだか心配です。購入予算はどう考えればいいでしょうか?(Mさん 会社員、36歳)
- 住宅の予算を考える際には、わが家の家計の中で、住宅ローンの「返済可能額」を見極めることが大事です。重荷にならない購入予算を見極めましょう。
購入予算は住宅ローンの「返済可能額」から考える
住宅を購入する際に気になるのは、予算の考え方ではないでしょうか。同じ年収、同じ家族構成であっても、住宅の予算は異なる可能性があります。この予算に最も影響するのが住宅ローンをいくら借りるのかです。わが家の「住宅ローン返済可能額」から住宅購入予算を考える方法を見ておきましょう。
住宅ローンの返済可能額は次の流れで考えるといいでしょう。
1.住宅ローン返済に充てられる月額
まずは、家計の中で毎月の住宅ローンの返済に充てられる金額を見極めます。従前の家賃・駐車場代に住宅用積立額を足し、購入後の維持費を引いた額が1つの目安です。月額で試算するため、住宅用の積立をボーナスから行っていた場合は月額に換算して計算をします。
上記のうち「維持費」とあるのは、住宅を購入後にかかり続けるコストです。維持費を考えずに住宅ローンの返済額だけを見て、「家賃と同じだから大丈夫」と考えるのは問題です。維持費には次のようなものが挙げられます。
- 固定資産税
- マンションなら管理費・修繕積立金
- 戸建なら修繕費の積立分
- マンションなら駐車場代・駐輪場代
例えば、次のように計算します。
例
今の家賃:月10万円、住宅用積立:月平均4万円、維持費月3万円(固定資産税1万円(月額換算)、管理費・修繕積立金2万円)⇒住宅ローン返済に充てられる月額=10万円+4万円-3万円=11万円
2.月額から借入可能額を試算
では、月額から自分の住宅ローンの借入可能額を算出しましょう。と言っても、自分で計算するのではなく、シミュレーターを利用します。今回はイー・ローンの「住宅ローンの借入可能額シミュレーション」を使って説明します。
【参考リンク】
例
月額11万円、返済期間35年、金利1.3%、ボーナス加算なしで試算⇒ 借入可能額は約3,700万円
金利はいくつかの住宅ローンを見て確認しましょう。変動金利か固定金利かの判断は難しいですが、15年など短く組む場合や、金利が上がって返済額が上がるリスクを許容できる人以外は原則固定金利がいいでしょう。適用される金利が確定するのはローンが実行される月のため、ローン実行までの期間が長いほど、やや高めの金利で試算をしましょう。シミュレーターに毎月返済額と返済期間、金利を入力すると借入可能額が計算できます。
なお、実際には金融機関や住宅ローン商品によって、年収に応じた返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)が設けられています。フラット35の例で年収400万円未満が30%、年収400万円以上で35%となっています(住宅ローン以外の借り入れの返済分も含まれます)。この点もチェックをしましょう。
3.購入予算を逆算する
前項で試算した借入可能額に、住宅用に用意した資金や親族からの贈与分等を加え、そこから諸費用分を引いたものが購入予算です。諸費用には、住宅ローンに関する諸費用や税金だけでなく、引越し費用や家具やカーテンなどの購入費、中古なら仲介手数料なども含まれます。そのため、一般的には物件価額の5~10%を見込んでおきましょう。
例
住宅用に用意した資金400万円、親族からの贈与600万円、諸費用300万円⇒ 購入予算=借入可能額3,700万円+400万円+600万円-300万円=4,400万円
ライフプランを踏まえた返済計画を
上記はあくまでも現時点の家計から試算した購入予算です。より精度を上げるには、できれば「キャッシュフロー表」を作成して35年間のお金の出入りも確認したいもの。住宅を購入しても、老後まで家計を維持できることが重要です。日本FP協会のサイトでもキャッシュフロー表がダウンロードできますので、チャレンジしてみては?
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー、シニアリスクコンサルタント。
20代前半より経営誌や経済誌、女性誌と広く手がけるライターとして個人事業を展開。1995年より独立系FPとして、雑誌やムック、新聞、サイトへの寄稿・監修、相談業務、講師などで活躍。「今日からの お金持ちレシピ」(明日香出版)をはじめ共著本など多数。
※執筆日:2021年03月23日