第903回

家賃収入で住宅ローン返済!?賃貸併用住宅とは

住宅購入を検討していて、賃貸併用住宅というものがあることを知りました。家賃収入で住宅ローンの負担を減らすことができるというのは魅力的ですが、不動産投資などはしたことがなく不安です。気をつけるべきことなどを教えてください。(38歳 会社員)
マイホームに住みながら家賃収入を得られる賃貸併用住宅が注目されています。とても魅力的ですが、注意点もあります。賃貸併用住宅ならではのメリット・デメリットを確認しましょう。

賃貸併用住宅のメリット

賃貸併用住宅とは、自宅スペースと賃貸スペースを併設した住宅のことです。例えば、1階が自宅スペース、2階・3階が賃貸スペースというような物件をイメージするとわかりやすいでしょう。

賃貸併用住宅の主なメリットは、家賃収入を得られること、条件を満たせば住宅ローンで融資を受けられること、ライフスタイルに合わせて柔軟に使えることなどがあります。ひとつずつ見てみましょう。

  • 家賃収入を得られる
    賃貸併用住宅の一番のメリットは、家賃収入を得られ、それを住宅ローンの返済にあてることができる点です。場合によっては住宅ローンの全額を家賃収入でまかなえることもあります。住宅ローン完済後は家賃収入の全額が副収入として手元に残るので、老後資金の上乗せとしての役割も期待できます。
  • 条件を満たせば住宅ローンで融資を受けられる
    アパートなどを建てる場合、通常はアパートローンを利用することになりますが、自宅スペースの床面積が全体の50%以上であるなど一定の要件を満たす場合には、住宅ローンを利用できる場合があります。一般的に住宅ローンはアパートローンよりも金利が低く有利です。また自宅部分については住宅ローン控除の対象になります。
  • ライフスタイルに合わせて柔軟に使える
    ライフスタイルの変化に合わせて賃貸用の部屋を一時的に子供部屋として利用することや、将来的に親を呼び寄せて二世帯住宅として利用することのほか、独立開業を考えている場合には事務所として利用することも可能です。

賃貸併用住宅のデメリット

賃貸併用住宅はメリットばかりではありません。主なデメリットには次のようなものがあります。

  • 通常の住宅よりも建築費が高い
    賃貸併用住宅を建築する場合、通常の住宅と比べて面積が広くなるだけでなく、賃貸部分の各部屋にお風呂、トイレ、キッチンなどの設備が必要になるため、建築費が高額になります。建築費が高くなるということは住宅ローンの借入額も大きくなり、審査が厳しくなったり、返済負担が大きくなったりする場合もあります。
  • 空室リスクがある
    賃貸併用住宅の大きな懸念は空室リスクです。入居者がいる場合には家賃収入で住宅ローンの返済負担を軽減することができますが、空室の期間が長期化すると住宅ローンの返済が困難になってしまう恐れがあります。
  • 入居者への配慮が必要になる
    賃貸併用住宅は、自宅でありながら同じ建物に他人が住むことになるため、騒音や振動、プライバシーへの配慮などが必要になります。また、自分たちが気を付けていてもトラブルが発生する恐れもあります。
  • 売却しづらい
    賃貸併用住宅をやむを得ず売却することになった場合、一般的な住宅に比べ購入希望者が限られるため売却までに時間がかかったり、希望する価格で売却できなかったりする可能性があります。

リスクを想定した資金計画を

賃貸併用住宅には注意点もありますが、上手に活用できればメリットも大きいです。そのためにも、入居者のニーズや近隣の物件の家賃相場などを事前にしっかりとリサーチすることが重要です。また、資金計画においては空室リスクの他にも管理費や維持費などを想定した返済シミュレーションをしておきましょう。万が一空室ができても耐えられるよう、手元にある程度のゆとり資金を確保しておくことも重要です。

【参考リンク】

私が書きました

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宮野 真弓 (みやの まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))、一級ファイナンシャル・プランニング技能士。

大学在学中にFP資格を取得。証券会社、銀行、独立系FP会社を経て独立。忙しくても無理なく実践できるメリハリ家計を提案するママFP。 ライフプラン全般の相談業務や家計簿診断、ライフプランセミナー講師、FP資格取得講座の講師として活動中。 学校での金銭教育にも注力している。

※執筆日:2020年12月07日