第768回

住宅ローン控除利用中でも、ふるさと納税のメリットはある?

今年、住宅ローンを借りてマイホームを購入しました。 昨年まではふるさと納税をしていたのですが、今年も同じように続けて大丈夫でしょうか?(Jさん 会社員、35歳)
住宅ローン控除を受け始める方は、それまでと同じようにふるさと納税のメリットが受けられない場合があります。 慎重に検討する必要があります。

ふるさと納税の控除額

ふるさと納税は、寄付金控除を活用して寄附をしたい自治体へ寄附をする仕組みです。その自治体の事業についても指定できるほか、寄附額に応じた返礼品を受取ることもできます。 一時期、自治体による返礼品合戦が過熱したことから、現在は原則、寄附額の3割までと制限されています。

実質的に、寄附金控除の自己負担額2,000円でふるさと納税ができる控除額の計算方法は次の通りです。

所得税の控除額 =(ふるさと納税額-2,000円)× 所得税率×1.021
 (上限:総所得額等の40%)
住民税・基本分の控除額 =(ふるさと納税額-2,000円)×住民税率10%
 (上限:総所得額等の30%)
住民税・特例分の控除額 =(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-基本分10%-所得税率×1.021)
 (上限:住民税所得割額の20%)

複雑ですので、わかりやすくするため復興増税は加味せずに計算しますが、所得税率10%の人が50,000円のふるさと納税をすると、控除額は、<所得税4,800円+住民税・基本分4.800円+住民税・特例分38,400円=48,000円>となります。 これが住民税所得割額の20%以内であれば、2,000円の自己負担で済むわけです。

今年の住民税がいくらになるかは、税理士に試算してもらうのが最も正確です。 ただし、試算に費用をかけていては、メリットは下がります。 自力で試算をするか、ふるさと納税のサイトなどにある年収と扶養家族数からの目安額を参考にするか等が良いでしょう。 ちなみに、前年の住民税がいくらだったかは自治体に問い合わせることは可能ですので、そこから推測するのも一法です。

住宅ローン控除との併用は?

住宅ローン控除を受ける場合のふるさと納税は注意が必要です。 住宅ローン控除は所定の「税額控除」が受けられるものですが、住宅ローン控除が所得税で控除しきれない場合には住民税が軽減される仕組みもあります。

住宅ローン控除の概要(2018年現在)
消費税率 年末残高限度額 控除率 控除期間
8%(または10%) 4,000万円(認定住宅は5,000万円) 1% 10年間
それ以外 2,000万円(認定住宅は3,000万円)
所得税で控除しきれなかった場合
消費税8%(または10%)  ⇒ 所得税の課税総所得額×7%(最高136,500円)
上記以外 ⇒ 所得税の課税総所得額×5%(最高97,500円)

所得税の範囲で住宅ローン控除が戻せている人にとってふるさと納税は有効ですが、住宅ローン控除が所得税だけで引き切れずに住民税からも控除(所得税の課税総所得額の5%または7%。上限あり)を受けている人は、ふるさと納税を慎重に行う必要があります。 場合によっては、メリットがない可能性もあります。

【参考リンク】

私が書きました

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豊田 眞弓 (とよだ まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー、シニアリスクコンサルタント。

20代前半より経営誌や経済誌、女性誌と広く手がけるライターとして個人事業を展開。1995年より独立系FPとして、雑誌やムック、新聞、サイトへの寄稿・監修、相談業務、講師などで活躍。「今日からの お金持ちレシピ」(明日香出版)をはじめ共著本など多数。

※執筆日:2018年03月19日