第712回

マイナス金利導入から1年。住宅ローンの金利はどうなった?

そろそろマイホームを購入したいと考えています。マイナス金利の影響で住宅ローンは借り時なのではないかと思い、金利も時々チェックしていたのですが、昨年はいろんな出来事がありよくわからなくなってしまいました。これからの金利はどうなるのでしょうか?(Gさん 32歳 会社員)
2016年2月に日本でマイナス金利が導入されてから1年が経ちました。その間、イギリスの国民投票でのEU離脱派の勝利やトランプ氏の大統領選挙での勝利など、世界経済に大きな影響を与える出来事がありました。まずはこの1年の住宅ローン金利の動向を振り返ってから、今後の動向の注目点を確認しましょう。

住宅ローン金利の決まり方

昨年の住宅ローン金利の動向を振り返る前に、まず住宅ローン金利の決まり方を確認しておきましょう。 住宅ローンには大きく分けて変動金利と固定金利があり、それぞれ基準にしている金利が異なります。

変動金利は、一般的に金融機関が優良企業に1年以内の短期でお金を貸し出す際の最優遇貸出金利である短期プライムレートを基準にしています。 この短期プライムレートは、日本の政策金利である無担保コール翌日物レート(金融機関同士が無担保で資金を融通し合うときの金利)を元に決められています。 固定金利は、一般的に新発10年物国債の利回り(長期金利)を基準に決められています。

マイナス金利導入から1年間の金利動向

2016年は住宅ローン金利に影響を与える出来事が多く、金利変動の大きい1年でした。順を追って振り返ってみます。

2016年2月に導入されたマイナス金利政策は、銀行が日銀に預けている当座預金の一部をマイナス0.1%にするというものです。 これにより無担保コール翌日物金利がマイナスになり、さらにだぶついた資金が債券市場に流れ込み長期金利もマイナスになりました。 その影響で住宅ローン金利も低下しましたが、より大きく影響が出たのは固定金利です。 すでにかなり低い水準だった変動金利に比べ、引き下げ余地のあった固定金利は、長期金利の低下に合わせて引き下げられました。 その後、6月にはイギリスの国民投票でEU離脱派が勝利したことでさらに金利が低下し、8月にはフラット35の返済期間21年以上35年以下、融資率9割以下の場合の最低金利が0.9%にまで下がりました。

転機になったのは9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和導入の決定です。この政策のひとつであるイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)による長期金利ターゲットは、10年物の国債の利回りがおおむね0%で推移するように日銀が買い入れを行うものです。 10年物国債の利回りに連動する固定金利は、それまでの低下から一転して上昇しました。さらに11月、トランプ氏がアメリカ大統領選挙で勝利すると、株価は上昇、ドル高(円安)が進み、債券は売られ長期金利が大きく上昇しました。 これを受けて住宅ローンの固定金利も期間の長いものからじわじわと上昇し、12月のフラット35の返済期間21年以上35年以下、融資率9割以下の場合の最低金利は1.1%になりました。

2017年1月中旬には長期金利が落ち着いたかに見えましたが、下旬にトランプ大統領が日本の金融政策に対して「円安誘導だ」と批判したことを受けて長期金利が急上昇しました。 2月の住宅ローン金利は、引き上げ、据え置き、引き下げと金融機関各社の対応が分かれました。

今後の住宅ローン金利はどうなる?

日銀の金融緩和政策はデフレ脱却を目的として行われています。その目標とされているのが「消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率2%」です。 2016年12月の消費者物価指数は3ヶ月連続プラス圏で推移しているものの、0.3%とまだまだ目標の2%には程遠い状況であり、当面は金融緩和政策が続くものと思われます。

市場はトランプ大統領の言動を伺いながら不安定な状態が続いています。 ドル高(円安)、株高、債券安が進むと、住宅ローン金利が上昇する可能性も否定できません。 金融緩和政策の継続により住宅ローン金利が大きく上昇する可能性は低そうですが、金融機関各社の住宅ローン金利引下げキャンペーンの力の入れどころによって金融機関ごとの差が大きくなることも考えられます。 イー・ローンの検索機能などを使って、効率よく情報収集をしておくといいでしょう。

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私が書きました

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宮野 真弓 (みやの まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))、一級ファイナンシャル・プランニング技能士。

大学在学中にFP資格を取得。証券会社、銀行、独立系FP会社を経て独立。忙しくても無理なく実践できるメリハリ家計を提案するママFP。 ライフプラン全般の相談業務や家計簿診断、ライフプランセミナー講師、FP資格取得講座の講師として活動中。 学校での金銭教育にも注力している。

※執筆日:2017年02月13日