第1065回

住宅ローンを繰上返済するときもシミュレーションで効果を確認しよう

2022年にマイホームを新築し、住宅ローンの返済中です。余裕資金ができたので繰上返済で返済期間を短縮したいと考えていますが、住宅ローン控除の控除額が減ってしまうことが気になっています。住宅ローン控除の適用期間が終わるまで繰上返済を待った方がいいのか教えてください。(37歳 会社員)
繰上返済は、時期が早いほど利息軽減効果が高くなります。その一方で、住宅ローン控除の適用期間中に繰上返済をすると、住宅ローン控除の金額に影響が生じます。どちらを優先すべきなのか、試算を見ながら考えてみましょう。
家庭のお金のことについて話し合う夫婦

繰上返済と住宅ローン控除の関係

繰上返済は、毎月のローン返済とは別にローン残高の一部または全部を返済することで利息負担を軽減することができます。住宅ローン控除は、住宅ローンを借り入れて住宅の新築・取得又は増改築等をした場合、年末のローン残高の0.7%を所得税(一部、翌年の住民税)から最大13年間控除する制度です(住宅の取得時期や環境性能等により、控除率や控除期間、上限金額が異なります)。

繰上返済は、時期が早いほど利息軽減効果が高くなります。一方、住宅ローン控除は、年末のローン残高が大きいほど控除額も大きくなります。住宅ローン控除の適用期間中に繰上返済によってローン残高が少なくなると、住宅ローン控除の金額も減少します。

繰上返済の時期による利息軽減額と住宅ローン控除額の比較

では、繰上返済と住宅ローン控除のどちらを優先する方がより効果的なのか、試算してみましょう。

試算の条件
  • 借入金額3,000万円、返済期間35年(全期間固定)、住宅ローンは2022年1月から開始
  • 住宅ローンの控除期間は13年間(控除率は0.7%)、控除額は所得税・住民税から全額控除されたとする
  • 繰上返済は期間短縮型を選択、手数料は考慮しない、支払利息の軽減額は100円未満切り捨て
金利0.6%の場合
  繰上返済しない 3年後に300万円繰上返済 13年後に300万円繰上返済
繰上返済による支払利息の軽減額(A) 0円 592,800円 385,800円
住宅ローン控除による控除総額(B) 2,225,100円 2,008,000円 2,225,100円
A+B 2,225,100円 2,600,800円 2,610,900円
金利1.4%の場合
  繰上返済しない 3年後に300万円繰上返済 13年後に300万円繰上返済
繰上返済による支払利息の軽減額(A) 0円 1,555,000円 975,200円
住宅ローン控除による控除総額(B) 2,278,200円 2,051,500円 2,278,200円
A+B 2,278,200円 3,606,500円 3,253,400円

※筆者による試算

金利0.6%のケースでは、3年後に繰上返済をする場合よりも、住宅ローン控除の適用期間が終わる13年後に繰上返済をする方が、経済的負担の軽減効果が大きくなります。一方、金利1.4%のケースでは、住宅ローン控除の適用期間が終わるのを待たず、3年後に繰上返済をする方が効果的です。

このように、借入金利が高い場合は住宅ローン控除よりも繰上返済を優先した方がメリットが大きくなります。また、住宅ローン控除が所得税と住民税で全額控除されていない場合は、繰上返済を優先した方が効果的な場合があります。

金利タイプが全期間固定金利型ではない場合、将来的に金利が上昇する可能性があります。その場合には、早めに繰上返済をしてローン残高を減らしておくことが有効になるケースもあります。

まずは、イー・ローンの住宅ローンの繰上返済シミュレーションを利用したり、金融機関に相談するなどして、繰上返済の効果を試算してみましょう。

繰上返済はライフプランもふまえて

繰上返済の利息軽減効果はとても魅力的ですが、注意点もあります。住宅ローンを返済中の世代の人の多くは、教育費や自動車の購入費、リフォーム費など、大きな出費を伴うライフベントが控えています。手元の資金を繰上返済にあててしまったために資金が不足し、住宅ローンよりも金利の高い教育ローンやマイカーローンを利用しなければならないようでは困ります。繰上返済をする際には、いざというときのための資金と、これからのライフイベントのための資金を見積もった上で、いくら繰上返済するのかを検討しましょう。

【参考リンク】

私が書きました

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宮野 真弓 (みやの まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))、一級ファイナンシャル・プランニング技能士。

大学在学中にFP資格を取得。証券会社、銀行、独立系FP会社を経て独立。忙しくても無理なく実践できるメリハリ家計を提案するママFP。 ライフプラン全般の相談業務や家計簿診断、ライフプランセミナー講師、FP資格取得講座の講師として活動中。 学校での金銭教育にも注力している。

※執筆日:2024年02月02日