第56回
住宅ローン控除の初年度は確定申告が必要!必要書類や手順を解説
- 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは
- 住宅ローン控除を受けるために必要な手続き
- 住宅ローン控除初年度の確定申告方法
- 住宅ローン控除の初年度に申告ができなかった場合の対処法
- 住宅ローン控除初年度はふるさと納税にも注意が必要
- まとめ
- 住宅ローンの総合ランキング
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けるには、初年度については働き方にかかわらず確定申告が必要です。しかし、住宅ローンの利用や確定申告が初めての場合、手続きについてよくわからない方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、住宅ローンを利用して自宅を購入予定の方や、すでに購入された方に向けて、初年度に必要な確定申告について解説します。確定申告は、必要書類を準備して手順どおりに進めていけば難しくありません。期限内に正しく申告を行ない、確実に税金の還付を受けましょう。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用して自分が住む家を購入した場合に、所得税などの控除を受けられる制度です。住宅ローン減税とも呼ばれています。
住宅ローン控除の目的は、住宅取得者の金利負担を軽減し、住宅を取得しやすくすることです。まず、2022年(令和4年)税制改正後の現行制度について、控除内容や適用条件を紹介します。
控除内容
住宅ローン控除は、毎年年末時点のローン残高の0.7%を最大13年間、所得税の金額から差し引ける制度です。所得税から引ききれなかった分は、翌年の住民税からも控除を受けられます。新築住宅だけでなく、買取再販住宅や中古住宅、条件を満たす増築やリフォームなども控除の対象です。
控除額は、住宅の種類や環境性能、入居年によって期間と借入残高上限額が設けられています。以下、おもな控除内容をまとめました。
住宅の区分 | 借入残高上限額 (2022年・2023年入居) |
借入残高上限額 (2024年・2025年入居) |
|
---|---|---|---|
新築・買取再販住宅(控除期間13年) | 認定長期優良住宅、認定低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | |
その他の住宅 | 3,000万円 | 0万円 (※2023年末までに新築の建築確認を受けた場合もしくは2024年6月末まで建築された住宅は借入残高上限2,000万円・控除期間10年) |
|
既存住宅 (控除期間10年) |
認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | |
その他の住宅 | 2,000万円 | ||
リフォーム・増築 (控除期間10年) |
2,000万円 |
適用要件
住宅ローン控除は、債務者の合計所得金額が2,000万円以下(※)であり、住宅ローンの借入期間が10年以上の場合が対象です。また、自分が居住する住宅であり、引き渡しもしくは工事完了から6ヵ月以内に入居し、控除を受ける年の12月31日まで住み続けていることが条件となっています。現行の制度では、2025年12月31日までの入居が控除の対象です。
※特例居住用家屋・特例認定住宅等(2023年末以前に建築確認を受けた床面積40平方メートル以上50平方メートル未満の新築住宅)の場合、1,000万円以下
また、取得する住宅は以下の条件を満たさなければなりません。
- 1982年以降に建築もしくは現行の耐震基準に適合していること
- 床面積が50平方メートルであり、床面積の2分の1以上を住居として使用していること(※)
※ 特例居住用家屋・特例認定住宅等の場合、床面積要件は40平方メートル以上50平方メートル未満
なお、居住開始年の前年および前々年に居住用住宅の譲渡所得の特別控除を受けた場合には、住宅ローン控除は適用できません。
住宅ローン控除を受けるために必要な手続き
住宅ローン控除は、自動的に適用されるのではなく、毎年手続きを行なわなければなりません。初年度と次年度以降では手続きが異なるため、確認しておきましょう。
初年度は確定申告が必須
住宅ローン控除の初年度は、確定申告が必須です。年末調整の対象となる会社員の場合も、控除初年度については年末調整で処理できないため、翌年に確定申告(還付申告)を行なわなければなりません。
会社員の次年度以降は年末調整で手続可能
会社員でほかに確定申告の必要がない方であれば、次年度以降は会社の年末調整で住宅ローン控除の手続きが可能です。
控除2年目の10月下旬になると、以降の年末調整で使用する「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」が税務署からまとめて送られてきます。該当年の申告書に必要事項を記入して、借入先の金融機関から届いた「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を添えて会社に提出しましょう。
なお、自営業者や確定申告が必要な会社員の確定申告も、初年度に比べると必要書類が少なくなります。添付が必要なのは、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」と「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」です。
ペアローンの場合はそれぞれが控除可能
住宅購入にあたり、共働きの夫婦がそれぞれ1本ずつローンを組む、ペアローンを利用する場合もあるでしょう。ペアローンの場合には、夫も妻も住宅ローン控除の対象となるため、それぞれが確定申告や年末調整時の手続きを行なう必要があります。
住宅ローン控除初年度の確定申告方法
先に述べたとおり、住宅ローン控除の初年度は確定申告が必要です。ここからは、確定申告の時期や必要書類、申告書の書き方などを紹介します。
申告時期
確定申告時期は、申告対象となる年の翌年2月16日から3月15日です。年末調整が済んでいる会社員の場合は、所得の申告ではなく還付申告になるため、翌年の1月1日より申告できます。
必要書類
住宅ローン控除初年度の確定申告に必要な書類は以下のとおりです。スムーズに申告ができるよう、準備しておきましょう。
- 本人確認書類の写し
- 源泉徴収票(会社員など給与所得がある方)
- 建物・土地の不動産売買契約書・工事請負契約書の写し
- 住宅ローンの年末残高証明書(借入先の金融機関より送付)
国税庁のホームページもしくは税務署から入手
- 確定申告書
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
書面を入手するほか、確定申告作成所コーナーで書面を作成し、プリントアウトや送信も可能です。
法務局から入手
- 建物・土地の登記事項証明書
不動産会社から入手
- 認定住宅等の区分に応じた必要書類(認定通知書や適合証明書、住宅性能評価書の写し)
確定申告書の書き方・提出方法
住宅ローン控除を申請するには、所得状況に加え、取得した住宅の詳細や住宅ローン残高について申告する必要があります。
確定申告書の作成は申告書に直接記入しても良いですが、国税庁のホームページにある「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、画面の指示に従って入力して簡単に確定申告書を作成できます。計算も自動的に行なわれるので簡単です。
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書を作成
住宅ローン控除を受ける際に必要になるのが、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」です。住宅の居住開始日や取得対価、住宅ローンの年末残高などを記入して、控除額を計算します。
なお、会社員で翌年以降は年末調整を利用したい場合、控除証明書の要否の欄は、空欄にしておいてください。そうすれば、翌年以降に必要な「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」が送付されます。
確定申告書の作成
明細書の作成が終わったら、確定申告書の入力です。氏名や住所、マイナンバーなどの申告者の情報を入力したあと、税額の計算に必要な源泉徴収票を参照して、収入や所得金額、所得控除額などを入力していきましょう。明細書で計算した控除額は、確定申告書第一表の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除に転記され、税額が計算されます。
郵送・持参・e-Taxのいずれかで提出
作成した確定申告書は、必要書類を添えて管轄の税務署に郵送もしくは持参します。マイナンバーカードとスマートフォンもしくはICカードリーダライタがあれば、e-Taxで電子申告が可能です。
なお、e-Taxで送信する場合、必要書類はイメージデータ(PDFファイル)で送信できます。確定申告書の送信後に、メニュー画面から追加送信でファイルを選択し、送信と電子署名を行なってください。
年末調整してしまった場合でも申告可能
会社員の場合、会社で年末調整を済ませてしまったあとに住宅ローン控除が必要なことに気づくケースもあるでしょう。
年末調整済みであっても、必要ならばあとから確定申告をして構いません。申告内容が重複することはなく、あとから行なった申告が有効になります。
申告後1ヵ月程度で還付
還付金は、確定申告時に指定した金融機関の口座に振り込まれます。
確定申告(還付申告)から税金の還付までにかかる時間は、1ヵ月~1ヵ月半程度です。e-Taxの場合は3週間程度と、還付を早く受けられます。
住宅ローン控除の初年度に申告ができなかった場合の対処法
住宅ローン控除の対象であったのに、初年度の申告を忘れていた、申告が必要と知らずに申告していなかったという方もいるでしょう。
初年度の申告をしていなかった場合、会社員などで確定申告自体を行なっていなければ、購入翌年の1月1日から5年以内の間、控除の申告が可能です。初年度の確定申告ができていないことに気づいたら、すぐに税務署に相談しましょう。
ただし、期限後の確定申告での住宅ローン控除では所得税の控除は受けられますが、住民税の控除は住民税決定前でないと控除されません。また、数年経過している場合には、初年度以降の申告もやり直しが必要になり、非常に手間がかかります。
なお、自営業者や会社員でほかの控除があり、確定申告済みの場合で住宅ローン控除の申告が漏れていた場合には、原則住宅ローン控除は受けられません。対処として更生の嘆願書を提出する方法もあるものの、控除を忘れたというだけでは難しいとされます。住宅ローン控除の申告は忘れないようにしてください。
住宅ローン控除初年度はふるさと納税にも注意が必要
住宅ローン控除の申請を予定している方のなかには、ふるさと納税を利用したい方もいるでしょう。住宅ローン控除とふるさと納税は併用可能ですが、初年度は特に注意が必要な点があります。
ワンストップ特例が利用できない
会社員がふるさと納税を行なう場合、寄付先が5ヵ所以内ならワンストップ特例を利用することで、確定申告を不要にできます。
しかし、住宅ローン控除初年度は確定申告が必須のため、ワンストップ特例は利用できません。寄付先の自治体にワンストップ特例の申請を提出していた場合でも、確定申告が必要です。
住宅ローン控除を最大限に活用できない可能性がある
ふるさと納税でワンストップ特例を利用する場合には、全額住民税からの控除となります。しかし、確定申告の場合には、所得税と住民税の両方からの控除となるため注意が必要です。
所得税の控除では、先にふるさと納税分を控除したのち、住宅ローン控除を計算します。そのため、住宅ローン控除で住民税控除上限額を超えてしまう場合には、全額を控除できません。住宅ローン控除を最大限に利用できなくなる可能性があることは覚えておきましょう。
確定申告の必要がない会社員の場合には、2年目以降はワンストップ特例を利用して住宅ローン控除への影響を回避できます。
まとめ
住宅ローン控除を受けるには、初年度に確定申告が必要です。初年度は住宅についての書類など提出が必要な書類が多くなるため、スムーズに申告ができるように前もって準備しておきましょう。わからないことが出てきたときには、税務署に問い合わせながら進めてください。
住宅ローン控除を利用するとしないのでは、負担額に数百万円の差が出ることもあります。住宅ローン控除を上手に活用して、住宅取得の負担を少しでも減らしましょう。
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文/金子 賢司