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第50回

住宅ローンの団体信用生命保険とは?特約の比較とおすすめのポイント

  • 団体信用生命保険と住宅ローン
  • 団信は住宅ローンとともに加入。特約も同じ?
  • 団体信用生命保険の特約の種類
  • 団体信用生命保険に入れない場合
  • 団体信用生命保険に加入する前のチェック事項
  • まとめ
  • 住宅ローンの総合ランキング

住宅ローンは長期にわたるローンです。長い年月、必ずしも健康で働き続けられるとは限りません。どんなに健康に気を使っていても病気にかかることはありますし、突然の事故に遭ったりすることも考えられます。そうなると、ローンの返済ができなくなってしまうかもしれません。
住宅ローンを組む際、基本的には金融機関から団体信用生命保険(以後「団信」と記載)への加入を求められます。これは、万が一の際の支払いに備えたものなのですが、団信には必ず加入しないといけないのでしょうか。また、最近ではさまざまな特約が付帯した団信も人気を集めています。どのような特約があって、いつ利用できるのでしょうか。そこで、今回は団信と特約の比較などについて解説します。

団体信用生命保険と住宅ローン

団信とは、どのような保険なのでしょうか。住宅ローンとの関係も含めて見ていきましょう。

団体信用生命保険とは

住宅ローンは、一般的に数十年にもわたる契約になるため、返済期間中に不慮の事故で亡くなったり高度障害状態に陥ったりする可能性もあります。しかし、団信に加入していれば万が一、住宅ローン契約者が死亡したとしても、残債を生命保険会社が保険金で全額返済してくれるので安心です。そのため、残された家族は住宅ローンの返済がなくなり、「住居費の心配がなくなる」というメリットがあります。

団信に加入する際は、通常の生命保険と同様に健康状態の告知が必要です(団信の種類や借入金額によって、診断書の提出や健康状態の告知の内容は変わります)。健康状態によっては、団信加入を断られることもあります。団信加入必須の住宅ローンであれば、加入を断られると住宅ローンの契約もできなくなります。また、団信の保険料は商品により、金融機関が負担したり、保険料相当分を金利に含めたりすることが多いため、住宅ローン契約者が別途現金などで保険料の支払いを求められることはほとんどないといっていいでしょう。

高度障害状態とは

団信の保険金が支払い対象になるのは、契約者の死亡時だけではありません。「高度障害状態」になった場合も支払い対象になります。高度障害とは、主に以下のような状態になることをさします。

  • 両目の視力を全く永久に失った状態
  • 言語またはそしゃくの機能を永久に失った状態 ・中枢神経系や精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要する状態
  • 胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要する状態
  • 両上肢とも、手関節以上で失ったか、またはその用を全く永久に失ったもの
  • 両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  • 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  • 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの

治療やリハビリでは回復できず機能を完全に失ったり、生涯介護を要する状態になったりすると高度障害状態と認定されます。高度障害状態の認定を受ける際には、加療中の医師が記入した「障害診断書」が必要です。

団信は住宅ローンとともに加入。特約も同じ?

団信の加入のタイミングは、「住宅ローン契約時のみ」です。途中で加入することはできませんので、注意してください。また、団信に付加する特約も住宅ローン契約時のみ加入できます。こちらも、途中で加入できませんので気を付けましょう。

銀行系の団信とフラット35の団信について

どの金融機関で住宅ローンを契約するかによって、団信加入が必要かどうかは異なります。一般的に、銀行などで住宅ローンを組む場合は、団信加入が義務となっています。そのため、先述の通り健康状態に問題があるなどして団信に加入できない場合、銀行などで住宅ローン自体を契約することができません。
ただし、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する住宅ローン「フラット35」での団信加入は任意です。健康状態に問題があって団信加入ができない場合でも、住宅ローン契約は結べます。

団体信用生命保険の特約の種類

団信は、死亡時や高度障害状態時に住宅ローンの残債が返済されるものですが、特約を付加することでその他の病気の際にも残債の返済が可能になります。また、自然災害時に備える特約もあります。どのような特約があるかを確認してみましょう。

特約名 保険金支払い条件(残債が返済される条件) 金利上乗せ
団体信用生命保険(特約なし) 死亡時・高度障害状態 なし
がん保障特約 所定のがんにかかり、医師により診断確定された場合 0.1%後半~0.3%程度
3大疾病保障特約 がん・急性心筋梗塞・脳卒中と医師により診断された場合 0.2%程度
8大疾病保障特約
  • がん診断
  • 脳卒中・急性心筋梗塞で所定の状態が60日以上継続
  • 高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎で12ヵ月を超えて就業不能状態が継続した場合
0.3%程度
就業不能保障 保険会社が定める重度障害に陥った場合
障害もしくは、精神障害を除いた全疾病が原因で就業不能状態となった場合
0.1%~0.3%程度
自然災害時特約 損害の程度に応じて毎月の返済額を最大2年分程度免除 なし
(ただし借入金額・借入期間の条件あり)

※上記は一例です。商品によって、支払い条件や上乗せ金利は変わります。

団体信用生命保険に入れない場合

団信に加入できない際は、住宅ローンの契約がどのようになるかも確認しておきましょう。

加入には健康告知が必要

団信の加入時には、健康状態の告知が必要です。そのため、「健康状態に問題あり」とみなされると加入できません。また、告知内容に虚偽の申告があると、加入できたとしても「万が一のときに保険金が支払われない=残債が返済されない」という事態も生じます。そのため、告知は正直に行うことが大切だといえるでしょう。

もし、「健康状態に問題があり、団信に加入できるか不安」な場合は、加入条件が比較的緩やかな「引受緩和型団信」という保険もあります。ただし、こちらは0.3%程度の金利の上乗せがありますので留意しておきましょう。

加入できなかった場合は?

健康状態などの問題で団信に加入できなかった場合、前述の引受緩和団信への加入を検討することも1つですが、銀行などの住宅ローンではローン契約自体を断られることもあります。団信に加入できないことが判明したら、団信加入が任意の「フラット35」を検討しましょう。ただし、団信なしでフラット35の契約をした場合、ローン契約者に万が一のことが起こっても住宅ローンは残るため、遺族が返済していく必要があります。そのため、生命保険に別途加入して、死亡時の不安を解消する手続きをしておいたほうが安心です。

団体信用生命保険にあえて入らない場合はどうなる?

また、すでに民間の生命保険に加入しているなどの理由で、あえて団信に加入しないことを検討している場合は、選択できる住宅ローンが制限されてしまいます。
それは、住宅ローンは原則として団信加入が必須条件となっているためです。ただし、フラット35のように団信加入が任意の住宅ローンも存在します。団信加入なしでフラット35の契約をすると、団信ありの金利から0.2%の引き下げがあります。

金利引き下げを優先したいのならば、初めから団信なしを検討するのもいいでしょう。その際は、万が一のときに残債をどうやって返済するかを事前に家族で検討しておく必要があります。例えば、「残債充当分程度の保険金が出る生命保険に加入しておく」「思い切って家を売却する」などが考えられるのではないでしょうか。

団体信用生命保険に加入する前のチェック事項

現在加入中の生命保険を見直す

団信へ加入する前には、現在入っている生命保険の見直しを行いましょう。現在、生命保険で遺族の住居費を準備している人もいるでしょう。しかし、団信に加入していると、住宅ローンの残債が保険金で支払われるため、住居費を準備する必要がなくなり、遺族が住む場所にも困らなくなります。生命保険の住居費分を減額することも検討できるでしょう。

保障の対象範囲を知る

団信に加入する際は、保障の範囲を把握しておくこと必要です。例えば、一般的な団信の場合、死亡時と高度障害状態になった場合に保険金が支払われます。高度障害状態とは、どのような状態かを知っておきましょう。また、団信には「がん特約」「3大疾病保障特約」「8大疾病保障特約」などの特約も付加できます。それぞれに支払い条件を確認しておくことが大事です。

なお、団信の特約は疾病に関するものだけではありません。自然災害時にあった場合や、損害の度合いに応じて毎月の返済が免除されるタイプの特約もあります。このような特約を付加する場合は、保険金の支払い条件に加えて、請求手続きの方法についてもチェックしておきましょう。

年齢制限について

住宅ローンの契約をする場合は、「20歳以上70歳未満」などの年齢制限があります。また、年齢が高くなるにつれて健康リスクも高くなるため、団信加入が難しくなる人もいるかもしれません。住宅ローン契約の前には、自分の健康状態のチェックもしておくことをおすすめします。

また、団信に「がん特約」などの特約を付加したい場合も要注意です。なぜなら、特約なしの団信では、70歳未満まで加入可能になっていても、がん特約などの付加は40代までとなっていることもあるからです。年齢が高くなると、希望する特約が付加できなくなることもあります。もし付加できないのであれば、「通常のがん保険」「3大疾病保険」などである程度補てんできるように準備しておくといいでしょう。

まとめ

団信に加入することで、住宅ローン契約者に万が一のことがあっても残債が保険金で支払われるようになります。「まだ子どもが小さいから住居費の心配くらいはなくしておきたい」「残された家族に家を財産として残したい」と考えるならば、加入は必須といえるでしょう。しかし、通常の生命保険同様に健康状態に問題があると、団信加入はできません。

団信加入ができないと、多くの住宅ローン契約はできなくなってしまうため、留意しておきましょう。また、死亡時や高度障害状態だけでなく、がん罹患や3大疾病罹患などで働けなくなることもあるかもしれません。もし、その際の住宅ローン返済が心配ならば、団信にがん特約や3大疾病特約を付加することも考えましょう。

ただし、特約を付加すると、金利の上乗せがあります。金利を上乗せしてでも団信の特約を付加するか、別に「がん保険」「3大疾病保険」に加入して、そちらで保障を準備するほうを選ぶかについても家族で検討しておくことがおすすめです。特約は、契約の上限年齢が住宅ローン契約上限年齢よりも低くなる場合がある点も確認しておいてください。

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文/田尻 宏子