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第970回

変動金利で借りた住宅ローンの金利変動リスクは?

住宅ローンの固定金利が少しずつ上昇していると聞きました。そろそろマイホームの購入を考えているのですが、変動金利か固定金利かで迷っています。変動金利も今後上がっていくのでしょうか。(Tさん 会社員 35歳)
長期にわたる住宅ローン金利の動向を予測することは難しいので、変動金利で借りた場合の金利変動リスクを理解して、金利タイプを検討しましょう。

住宅ローンの変動金利が上昇する?

最近の世界情勢やアメリカの金利政策の影響から、金融機関で固定金利型住宅ローンの金利を引き上げる動きが出ています。全期間固定金利のフラット35は、申込みを行う金融機関によって金利は異なりますが、2022年1月の最頻金利は1.3%でした。それが2月は1.35%、3月は1.43%、4月には1.44%になり、2022年に入ってから上昇傾向となっています(返済期間21年~35年・融資率9割以下の場合)。

このため、変動金利も今後上昇するのではないか、という懸念を持たれている方もいらっしゃるかと思います。実は、固定金利は10年物国債の利回り、変動金利は日銀の政策金利に連動する短期プライムレートを参考に、各金融機関が住宅ローンの金利を決めています。政府がマイナス金利政策をとって以来、変動金利は長期にわたって動きが見られない状況です。

固定金利と変動金利で返済総額はどのくらい違う?

では、固定金利(全期間固定型)と変動金利、タイプごとの返済総額はどの程度の差になるのでしょうか。例として2022年3月に借入額3,000万円、元利均等返済(ボーナス返済無し)の35年ローンを借りたとして比較してみましょう。ローン開始時点での金利を、全期間固定金利型は1.4%、変動金利型は0.4%とします。さらに、変動金利型では、2パターンで試算し、変動金利型Aでは10年ごとに0.5%ずつ金利上昇、変動金利型Bでは10年ごとに1.5%ずつ上昇するという前提にしてみました。同一金融機関で借りる想定とするため、事務手数料や保証料は考慮しないこととします。

すると、下表のように変動金利型Aでは、全期間固定金利型より返済総額は約376万円少なくなり、変動金利型Bでは返済総額は全期間固定金利型より約75万円多くなるという結果になりました。35年間で金利が4.5%上昇すると、返済総額が全期間固定型を上回るということになりますが、上昇幅が緩やかだと全期間固定型より返済総額は少なく済みます。

金利体系による返済総額の違い
  全期間固定金利型
(金利変動なし)
変動金利型A
(10年毎に0.5%上昇)
変動金利型B
(10年毎に1.5%上昇)
借入時金利 1.4% 0.4% 0.4%
借入時毎月返済額 9.1万円 7.7万円 7.7万円
利息総額 797万円 421万円 872万円
返済総額 3,797万円 3,421万円 3,872万円円

筆者作成。イー・ローンの住宅ローンのこだわり返済額シミュレーションで試算

さらに、変動金利型で毎月の返済額がどう推移するかも見てみましょう。下表のように、変動金利型Aでは、30年後の毎月の返済額は当初より約1万円増加します。また、変動金利型Bだと、30年後の毎月の返済額は当初より約3万円も増えてしまいます。

上記変動金利型ローンの毎月返済額の推移
  変動金利型A
(10年毎に0.5%上昇)
変動金利型B
(10年毎に1.5%上昇)
金利 毎月返済額 金利 毎月返済額
借入時 0.4% 7.7万円 0.4% 7.7万円
10年後 0.9% 8.2万円 1.9% 9.2万円
20年後 1.4% 8.5万円 3.4% 10.2万円
30年後 1.9% 8.6万円 4.9% 10.6万円

筆者作成。イー・ローンの住宅ローンのこだわり返済額シミュレーションで試算

変動金利を選択した場合の注意点

変動金利型の住宅ローンには金利変動リスクがありますが、基準とする政策金利が上昇したとしてもすぐにローン返済額に反映されるのではありません。多くの金融機関で、金利は半年ごとの見直しです。さらに、それが返済額に反映されるのは5年に一度であり、直前の返済額の1.25倍までしかアップしないというルールがあります。とはいえ、毎月の返済額がかなり上がることもありますので注意が必要です。

変動金利を選択する場合は、毎月の返済額が数万円多くなっても生活に影響が出ないような借入額であることが重要なポイントになります。教育費や老後資金などに影響が出ないよう、余裕をもった返済計画を立てるようにしましょう。一定額の貯蓄を確保しておき、金利上昇に対応できるようにしておくという対策も良いでしょう。

変動金利が上昇したら固定金利に借り換えようと思うかもしれませんが、その時には、固定金利もかなり金利が上昇していることも考えられます。金利の動向に注意し、早めに借り換えの判断をすることも求められます。また、借り換えには諸費用も必要です。

変動金利を選択する場合には、金利変動リスクを理解した上で金利上昇時にも対応できるようにしておきましょう。

【参考リンク】

私が書きました

福島 佳奈美 (ふくしま かなみ)

ファイナンシャルプランナー(CFPR)。

大学卒業後、情報システム会社で金融系SE(システムエンジニア)として勤務し、出産を機に退社。子育て中の2006年にファイナンシャルプランナー(CFPR)資格を取得する。その後、教育費や保険・家計見直しなどのセミナー講師、幅広いテーマでのマネーコラム執筆、個人相談などを中心に、独立系FPとして活動を行っている。

※執筆日:2022年04月04日