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第955回

中古住宅を購入するときに気を付けるべきことは?

上の子供が小学校に入学する3年後までにマイホームを購入するつもりですが、新築住宅は高額で手が届きそうにないため、中古住宅を購入しようと考えています。ただ、中古住宅を選ぶときには新築とは違った注意点があるように思います。どのようなことに注意すればよいでしょうか。(東京都 男性 会社員 35歳)
近年、建材や人件費の高騰、超低金利政策による高額の住宅ローンの借りやすさ、高収入の共働き夫婦による購買力アップ、コロナ禍の工期遅れによる供給量の減少などの理由で、新築住宅の価格が高騰しており、その影響を受けて中古住宅の需要が高まっています。そのため、中古住宅も在庫が少なく価格が上昇していますが、新築と比べると割安だと言われています。ただし、購入前には、建物の構造や品質に問題がないかの確認など、中古特有の注意点に配慮する必要があります。

建物の構造や品質等に問題がないかをしっかり確認する必要がある!

購入後も長期間に渡って安心して暮らすために、中古住宅を購入する前には、構造や品質等に問題や不具合がないかをしっかり確認しましょう。建築物の最低限守るべき基準等を定めた建築基準法や都市計画法などが、これまでに何度も見直されてきており、建築された時期によっては基準が異なります。また、建築後長期間経過した住宅は、劣化や災害などによる破損やひび割れなどが生じている場合もあります。

耐震性の確認

耐震基準は、地震に対する住宅の安全性を確保する基準として建築基準法に定められています。1981年5月31日以前に建築確認申請が行われた建物に適用されている旧耐震基準は、震度5程度の中規模地震でも建物が倒壊、崩壊せず、損傷しても補修すれば生活できる水準とされ、震度6以上の地震の場合は規定されていませんでした。1981年6月1日以降に建築確認申請が行われた建物に適用されている新耐震基準は、震度5程度ではほとんど損傷せず、震度6から7の大規模地震でも倒壊、崩壊しない水準に見直されました。つまり、1981年6月から耐震性が大幅に高められたのです。なお、木造住宅については、2000年の建築基準法の改正によって、地盤調査が実質義務化されるなど、耐震性がさらに強化されています。

中古住宅を購入する場合は、少なくとも、1981年6月以降の新耐震基準が適用された物件を選ぶか、旧耐震基準の時期に建てられた物件でも、審査を受けて耐震基準に適合した物件を選択する必要があります。

再建築不可物件かどうか、違法建築ではないかの確認

都市計画区域と準都市計画区域では、建築基準法によって、幅員4m以上の道路に2m以上接していない土地に住宅を建てられないことになっています。この規定ができる前に建築された一戸建ての中古住宅を購入した場合、そのまま住み続けることや一定のリフォームを施して住むことはできます。しかし、建て替えや増改築をする場合は、現在の規定が適用され、建て替えや増改築をすることができません。このような物件を再建築不可物件といいます。

また、中古住宅の中には、建築時は建築基準法等に適合していても、その後に増改築をしたことによって建ぺい率、容積率などの基準を満たさなくなり、結果的に違法建築となってしまっている物件もあります。

建物の状態に不具合がないかの確認

中古住宅は、築年数や住んでいた人の住まい方によって劣化度合いが異なります。建物や設備の状況によっては、購入後に設備の更新やリフォームやリノベーションが必要になる場合があります。

不動産会社の案内で内覧をするときには、あらかじめチェックリストを用意するなどして、壁や天井、玄関ドア・室内ドアやサッシ、バスやトイレ・洗面所・キッチンなどの水回りの状況を確認する必要があります。一戸建ての場合は屋根や壁の状況やシロアリ被害の有無、マンションの場合は共用部分の状況も確認する必要があります。

建物の構造や品質等は、専門的なことが多く素人ではわかりにくいため、仲介する不動産会社などにしっかり確認するとよいでしょう。また、専門の会社に有料のホームインスペクション(住宅診断)を依頼し、住宅の劣化状況、欠陥の有無、改修すべき箇所や改修時期、費用概算などを見極めてもらう方法もあります。

諸経費や住宅ローンなど、資金計画上の注意点は?

中古住宅を個人から購入する場合は、一般的に不動産会社が仲介するため、売買契約を締結するときに、仲介手数料がかかります。上限額は、購入価格が400万円超の場合、「購入価格×3%+6万円+消費税(10%)」となっています。例えば、購入価格が3,000万円の場合、仲介手数料の上限額は96万円+消費税(10%)を諸費用として見込んでおく必要があります。

中古住宅の購入に住宅ローンを利用する場合、築年数が長く古い住宅は、物件評価額が低くなるため、希望する金額の借り入れができないことがあるので注意が必要です。

また、再建築不可物件や違法建築物件は、一般的に金融機関のローン審査に通らず、借りることができないため、自己資金のみで購入しなければなりません。金融機関によっては、1981年5月以前の旧耐震基準の物件も借りることができない場合があります。

購入時にリフォームやリノベーションをする場合は、住宅ローンに加えて、リフォームローンを活用する必要があるかもしれません。近年は、購入時に行うリフォーム費用やリノベーション費用を住宅ローンに含めて借りることができる金融機関も出てきています。

中古住宅は、物件そのものの価格に加え、建物や設備の状況によってはリフォーム費用、リノベーション費用なども必要になることが多いため、単に物件の価格の割安さだけで選ばず、諸費用等も含めたトータル金額を見積もって検討したいものです。

【参考リンク】

私が書きました

中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2021年12月10日