第946回
本当にお得?住宅ローンは諸費用を含めた支払総額で比較!
- 住宅を購入することになりました。なるべく低金利の住宅ローンを、と思いましたが、保証料や事務手数料にも違いがあって迷っています。どのように選べば良いでしょうか。(35歳 会社員 男性)
- 住宅ローンの保証料や事務手数料は商品によって大きく異なります。金利だけでなく諸費用も含めた支払総額で比較してみましょう。
住宅ローンの諸費用にはどんなものがある?
住宅ローンを選ぶ際、なるべく低金利で借りたいと金利だけに目が行きがちですが、保証料や各種手数料、印紙税などの諸費用も意外とかかります。このうち、住宅ローン商品によって金額が大きく異なるのが保証料と事務手数料でしょう。
住宅ローンの保証料とは?
住宅ローンを利用する際は、保証会社を利用することで連帯保証人を不要とする金融機関が多くあります。保証料はそのために必要な費用で、保証会社に支払う費用です。
保証料は、ローン借入時に一括前払いする方法もあれば、金利に上乗せし毎月の返済額に組み込む方法もあります。また、保証会社を使わないため不要とする住宅ローン商品もあります。
住宅ローンの事務手数料とは?
住宅ローンの事務手数料とは、住宅ローンを借り入れする際に必要な手数料で、金融機関に支払うものです。大きくは定額型と定率型の2つに分けられます。
定額型の場合は、借入金額にかかわらず、数万円から数十万円程度の定額の手数料を支払います。定率型の場合は、借入金額の●%というように、借入金額に一定割合を乗じた金額とすることが一般的です。
金利・保証料・事務手数料は密接に関係している
金利が低くて保証料不要、事務手数料も安い商品があれば良いのですが、なかなかそうはいきません。保証料が不要という商品の場合、事務手数料を定率型とする商品が多くなっています。また、保証料が不要、事務手数料は数万円で少なくすむ商品は、あらかじめ保証料分を金利に上乗せしているのが一般的です。
大別すると、保証料前払い型、保証料金利上乗せ型、事務手数料型の3つのタイプに分けられます。借入金額2,000万円、借入期間35年・元利均等払い(ボーナス返済無し)の住宅ローンを利用した場合、タイプごとの支払総額がどうなるかをシミュレーションし比較してみました。但し、どの商品も金利0.5%で35年間変動しないものとします。
住宅ローンA (保証料前払い型) |
住宅ローンB (保証料金利上乗せ型) |
住宅ローンC (事務手数料型) |
|
---|---|---|---|
金利 | 0.50% | 0.70% | 0.50% |
元金+利息総額 | 21,804,939円 | 22,555,519円 | 21,804,939円 |
保証料 | 40万円 (保証料:借入金額1,000万円あたり20万円とする) |
保証料分として0.2%を金利に上乗せ | 保証料は銀行が負担 |
事務手数料 | 3.3万円 (定額) | 3.3万円(定額) | 44万円(定率型:借入金額の2.2%とする) |
保証料・事務手数料を加算した支払総額 | 22,237,939円 | 22,588,519円 | 22,244,939円 |
(筆者作成。元金+利息総額はイー・ローンの住宅ローンシミュレーションで試算)
上記シミュレーションではAとCは同じ金利としましたが、事務手数料型は保証料前払い型よりも、おおよそ0.05%程度低く設定されていることが多いようです。
元金+利息総額だけで見ると、住宅ローンBとその他とでは、差額は約75万円もありますが、保証料と事務手数料を加算して比較すると、差額は約35万円まで縮まるのがわかります。
また、事務手数料はローンを繰上完済しても戻ってきませんが、前払いで支払った保証料は戻ってくる場合があります。仮に事務手数料型が保証料前払い型よりも金利が0.05%低いとしても、住宅ローンAを繰上完済し保証料が戻ってきたら、支払総額が一番少なくなるケースもあります。
なお、前払いした保証料は完済時のみ返還するという金融機関もあれば、繰上返済時も精算するという金融機関もあります。借入時に確認しておくと良いでしょう。
支払総額や返済計画で比較することが大切
住宅ローンは金利だけでなく保証料や事務手数料などの諸費用も含めた支払総額で比較することが大切です。
当初から早期完済を計画している方は、保証料が戻って来る「保証料前払い型」で借りて、早めにローンを完済すると支払総額を抑えられるでしょう。また、自己資金が少ない方は、「金利上乗せ型」にして手元資金を減らさないようにした方が良いかもしれません。毎月の返済額を抑えたい方は「事務手数料型」が良いでしょう。
手元にどれくらい自己資金があるのか、今後の返済計画はどうなのか等によって有利な住宅ローンは異なりますので、自分に合った住宅ローンを見極めて判断するようにしましょう。
私が書きました
ファイナンシャルプランナー(CFPR)。
大学卒業後、情報システム会社で金融系SE(システムエンジニア)として勤務し、出産を機に退社。子育て中の2006年にファイナンシャルプランナー(CFPR)資格を取得する。その後、教育費や保険・家計見直しなどのセミナー講師、幅広いテーマでのマネーコラム執筆、個人相談などを中心に、独立系FPとして活動を行っている。
※執筆日:2021年10月11日