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第887回

ハザードマップ説明が義務化!マイホームの選び方が変わる?

現在、マイホーム取得に向けて物件を探しているところです。水害ハザードマップの説明が義務づけられると聞きましたが、何が変わるのでしょう? もちろん水害リスクがないエリアがいいですが、予算が上がりそうで悩むところです。(Kさん 会社員、34歳)
不動産取引における水害ハザードマップ説明の義務化について概要を知っておきましょう。物件選びの対象エリアを変更する場合も、借り入れで無理をしないようにしましょう。

水害ハザードマップ説明が義務化!

2020年8月28日から、不動産取引における水害ハザードマップ説明が義務化されます。近年、豪雨や台風、高潮などの水害が頻発し、各地で甚大な被害が発生しています。不動産購入の意思決定に水害リスク情報は無視できない要素となっていることから、国交省の命令で宅地建物取引業法施行規則の一部が改正されることになりました。

今後は、不動産売買の契約を行う際に、事前に説明することが義務づけられている「重要事項説明」に、水害ハザードマップを提示しての情報提供が加わります。水害リスクのあるエリアの住宅である場合は、それを承知の上で購入するということになります。

参考までに、具体的な運用は次のようになります。

宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(ガイドライン)
・水防法に基づき作成された水害(洪水・雨水出水・高潮)ハザードマップを提示し、対象物件の概ねの位置を示すこと
・市町村が配布する印刷物又は市町村のホームページに掲載されているものを印刷したものであって、入手可能な最新のものを使うこと
・ハザードマップ上に記載された避難所について、併せてその位置を示すことが望ましいこと
・対象物件が浸水想定区域に該当しないことをもって、水害リスクがないと相手方が誤認することのないよう配慮すること
(国土交通省サイトより)

マイホーム選びへの影響は?

水害リスクが不動産選びの重要な項目の1つであることが共有認識となったことにより、マイホームの選び方にも影響が出ると考えられます。すでに一部の住宅情報サイトでは物件情報の中に水害リスク情報が加わっています。

多くの人は、できるだけ水害リスクのないエリアで住宅を持とうとするのではないでしょうか。それによって、水害リスクのあるエリアとそうでないエリアの価格差が広がる可能性があります。

相談者のKさんも悩まれていましたが、水害リスクがあっても価格が安い物件を選ぶのか、予算を上げて水害リスクのないエリアに住宅を持つか。家計との関連もあるものの、今後は選択に迫られることになりそうです。

住宅ローンはできるだけ有利なものを

物件探しの際、比較的価格が安めのエリアを検討していた人にとって、水害リスクのないエリアに切り替えると、それだけで予算が上がってしまいます。それを少しでも解消する方法としては、3つ挙げられます。

1つは、中古物件を対象とすることで、予算を引き下げることが挙げられます。とはいっても、あまり古い物件だと建替えまでの期間が短くなる可能性もあるので、できるなら築10~15年前後の物件を選んだ方がいいでしょう。

2つめは、駅からの距離が10分を超える、急行が止まらない駅を選ぶなど、立地条件を下げて物件探しをすることです。エリアを限定しても、価格はやや安めになります。

最後の1つが住宅ローン選びです。できるだけ有利な住宅ローンを選ぶことで、購入予算に幅を持たせることができる可能性があります。例えば、住宅ローン3,500万円を期間35年、ボーナス払いなし、元利均等返済で借りたケースを想定してみましょう。

試算例(住宅ローン3,500万円、期間35年、ボーナス払いなし、元利均等返済)
金利 月返済額(円) 総返済額(万円)
1.00% 98,799 4,150
1.20% 102,095 4,289
1.40% 105,458 4,430

【参考リンク】

全期間固定を想定しての試算ですが、金利が0.2%違うだけで約140万円も違ってきます。金利変動リスクを許容できる世帯であれば、変動金利も選択肢に入れられると思います。変動金利で例えば金利が0.5%だった場合は、当初の返済額は月90,855円となり返済負担を軽減させることができます。実際には事務手数料や団体信用生命保険料なども含めて比較をする必要がありますが、しっかり住宅ローン選びをすることで少しでも負担軽減につなげましょう。

コロナ禍の経済的な影響は今後数年間に及ぶと予想されているので、無理のない住宅取得をしたいものですね。

【参考リンク】

私が書きました

豊田 眞弓 (とよだ まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー、シニアリスクコンサルタント。

20代前半より経営誌や経済誌、女性誌と広く手がけるライターとして個人事業を展開。1995年より独立系FPとして、雑誌やムック、新聞、サイトへの寄稿・監修、相談業務、講師などで活躍。「今日からの お金持ちレシピ」(明日香出版)をはじめ共著本など多数。

※執筆日:2020年08月18日