第852回
控除期間が13年に。令和2年までの「住宅ローン控除」
- これから住宅購入を予定しています。消費税アップに伴い、住宅ローン控除の控除期間が長くなったと聞きました。有利に住宅購入できますか?(静岡県 S)
- 住宅取得の際の消費税率が10%で、令和元年10月1日から令和2年12月31日までに居住を開始した場合には、控除期間が13年になります。
消費税増税に伴い、期間限定で控除期間が延長
住宅ローンの返済が始まった家計にとって、心強い味方になる「住宅ローン控除」制度。 年末のローン残高の1%を、納めるべき所得税額から(所得税から引き切れなかった場合には住民税からも)差し引くことができる制度です。 この制度は入居時期によって適用される制度内容が決まるのですが、直近の平成26年1月~令和元年9月までに入居した場合には控除期間が10年でした。
それが、住宅購入時に消費税率10%が適用され、令和元年10月1日から令和2年12月31日までに入居した場合には、控除期間が13年(3年延長)になります。
控除額は、入居後10年目まではこれまで同様に、
「住宅ローン等の年末残高(一般の住宅の場合最高4,000万円)×1%」
で算出されますが、11年目~13年目までは算出方法が異なり、次のAとBのどちらか少ない金額が控除額となります。
消費税増税に伴う優遇策なので、11年目~13年目は、消費税のかかる部分(建物の取得価格)に的を絞った控除額となっています(土地取得には、消費税はかかりません)。
消費税が2%(8%から10%へ)上がったので、その分が3年間に分けて還元されるイメージですね。
11年目~13年目の控除額の算出方法
次のAとBのどちらか少ない金額
B:建物の取得価格×2%÷3
※Aの「住宅ローン等の年末残高」、Bの「建物の取得価格」は、一般住宅の場合は最高4,000万円、長期優良住宅や低炭素住宅の場合は最高5,000万円
住宅ローン控除額を試算してみると
たとえば、4,000万円の物件(土地2,000万円、建物2,000万円)を購入して、3,000万円のローン(固定金利1.2% 35年返済)を組み、2020年1月から返済を開始したとします。
まず、2020年分の年末のローン残高は2,930.7万円なので、住宅ローン控除額は、「年末残高×1%」で、29.3万円になります。 10年目までは、同様に計算した金額が住宅ローン控除額になります。
11年目の年末ローン残高は2,189万円なので、「年末残高×1%」を計算すると、21.9万円です。 しかし、「建物の取得価格(2,000万円)×2%÷3」を計算してみると、13.3万円。 これら2つの価格のいずれか「少ないほう」なので、住宅ローン控除額は13.3万円となります。
【参考リンク】
控除が受けられるのは、納めるべき税額が限度
控除期間が長くなった住宅ローン控除制度を有利に活用したいところですが、控除が受けられるのは、納めるべき税額が限度であることも忘れないようにしましょう。 一般住宅の場合、「最高40万円」の控除が受けられるのは、年末残高が4,000万円以上ある場合ですが、一般的な会社員家庭において、13年後もローン残高が4,000万円以上あるような住宅ローンを組むケースは考えにくいでしょう。 借入額が多いほど、返済期間が長いほど、金利が高いほど「年末残高」は大きくなりますが、ローン控除を目的にむやみに借入負担を増やしては、本末転倒ですよね。
また、住宅ローン控除額が仮に40万円(年末残高4,000万円×1%)だったとしても、納めるべき所得税が40万円以上でないと、控除額を引ききることはできません。 住宅ローン控除額が引き切れなかった場合は、住民税から差し引くことができますが、これにも、13万6,500円の上限があります。
納めている所得税や住民税の金額は、収入や家族の人数や年齢、受けている所得控除などによって、それぞれ異なります。 これから住宅購入し、住宅ローンの利用を計画される方は、直近の所得税や住民税の納税額を確認した上で、住宅ローン控除による減税額を試算してみてください。
住民税(所得割)から控除できる住宅ローン控除額
次のAとBのうち、いずれか少ない金額
B.前年分の住宅ローン控除可能額のうち、所得税から控除しきれなかった額
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。
大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。
※執筆日:2019年12月10日
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