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第821回

お得なマンションが借地権、これは買い?

マンション購入を検討中です。 価格的に希望のエリアでは購入が難しいと思っていたら手ごろな価格のマンションがありました。 一般定期借地権付マンションということなのですが、通常のマンションとどう違うのでしょうか。(Tさん 東京都 35歳)
定期借地権付マンションは通常のマンションより価格が抑えられているのが魅力です。 いくつかの注意点をクリアできればお得に物件を買うことができます。

借地権とは?

通常、土地付住宅を購入すると、土地と住宅の所有権を得ることになりますが、定期借地権付き住宅では土地部分は借地です。 Tさんが購入を検討している一般定期借地権付マンションは、専有部分の所有権は得ることができますが、敷地部分は借地権になるということです。

借地権とは、地主から土地を借り、その土地に建物を建てることができる権利です。 借地権は、大きくは旧法に基づく旧借地権と、平成4年8月に制定された借地借家法(新法)に基づく借地権に分けられます。

旧借地権では、借地契約の更新をしても旧法のまま内容が引き継がれ、現在でも契約は残っています。 更新を続ければ半永久的に土地を借り続けることができるため、地主に土地が返還されないという問題もありました。 そこで新法では、期間が過ぎれば必ず土地が地主に戻るという定期借地権が創設され、地主が安心して土地を貸せるようになりました。 定期借地権には、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付定期借地権があります。 また、借地人が希望すれば借地権の更新ができる普通借地権も旧借地権に比べ更新期間が短くなりました。

借地権の種類 存続期間 借地関係の終了 利用目的
普通借地権
30年以上
・法定更新される。更新1回目は20年以上、2回目は10年以上
・更新を拒否するには正当事由が必要
用途制限なし
一般定期借地権
50年以上
期間満了による
用途制限なし
事業用定期借地権
10年以上
50年未満
期間満了による
事業用建物所有に限る
(居住用は不可)
建物譲渡特約付
定期借地権
30年以上
建物譲渡による
用途制限なし

出典:国土交通省ホームページ「定期借地権の解説」より筆者作成

定期借地権付きマンションのメリットと注意点

定期借地権付マンションの場合、地代(賃借料)を支払わなければなりませんが、それを考慮しても価格が安いということが一番のメリットでしょう。 購入価格が抑えられることで、通常なら諦めていたエリアや広さの物件も手が届く場合があります。 また、土地所有に関する税金である固定資産税や都市計画税も不要です。

但し、借地期間が経過したら更地にして地主に返却しなければいけないということが注意点です。 定期借地権付マンションの場合、取り壊し費用が必要ですので居住者全体で取り壊し費用を積み立てる場合があります。 また、借地期間中に売却する場合、地主の承諾が必要となり譲渡承諾料が請求されることもあります。

定期借地権付き物件の住宅ローンはどうなる?

定期借地権付物件でも、一定の条件を満たせば利用できる住宅ローンはあります。 普通借地権なら対応できる商品や、フラット35のように敷地に抵当権や質権を設定することを条件として利用できるといった商品があります。 なお、抵当権設定には地主の承諾が必要となる場合があります。また、借地権の残存期間より長い期間の住宅ローンが組めない場合や、建物が中古物件の場合は経過年数に応じて借入期間が短くなる商品もあります。 借地権付物件で住宅ローンを利用する場合は、購入予定の物件で利用できる住宅ローンがあるのか希望条件に当てはまるかをよく確認し検討してみましょう。

定期借地権付マンションは、借地権の期限が近くなると売却は難しくなると思われますが、もともと地価が高いエリアでみられる物件ですので、借地権付きでも値上がりする場合もあり、借地権終了までの期間が十分にあれば売却も可能だと思われます。 大手不動産開発業者による新築マンションの売り出しも、まだまだ見受けられます。いずれ実家を相続する予定がある場合や、老後は高齢者向け住宅に住み替える予定という場合には、ニーズにマッチしています。 定期借地権付マンション購入にはいくつか注意点もありますが、価格が抑えられていてお得に入手できるのは魅力ですね。

【参考リンク】

私が書きました

福島 佳奈美 (ふくしま かなみ)

ファイナンシャルプランナー(CFPR)。

大学卒業後、情報システム会社で金融系SE(システムエンジニア)として勤務し、出産を機に退社。子育て中の2006年にファイナンシャルプランナー(CFPR)資格を取得する。その後、教育費や保険・家計見直しなどのセミナー講師、幅広いテーマでのマネーコラム執筆、個人相談などを中心に、独立系FPとして活動を行っている。

※執筆日:2019年04月02日