第786回
最近の住宅ローンは低金利の変動金利型が人気?
- 住宅ローンを検討していますが、どうしても金利が低い変動金利型に目がいってしまいます。 今、変動金利型が人気だというのは本当でしょうか?(Rさん 会社員、29歳)
- 変動金利型で借りる人が増える傾向にあるのは確かです。 しかし、リスクがあることも忘れてはいけません。
変動金利型で借りる人が増加!?
Rさんも報道などでご覧になったかもしれませんが、住宅ローンの金利選択に変化が起きているようです。
住宅金融支援機構が発表した「民間住宅ローン利用者の実態調査(2017年度第2回)」によると、2017年度第1回(2017年4~9月)では変動型が50.4%だったものが、第2回(2017年10月~2018年3月)では56.5%と大きく増えました。 一方で、全期間固定金利型で借りる人も12.6%→13.3%と微増しています。 減ったのは固定金利期間選択型です。
同調査の返済負担率(1年間の住宅ローン返済額÷年収)を見ると、変動金利型で借りている人は、15%以内(25.1%)、20%以内(24.4%)、10%以内(20.0%)の順になっており、低金利の効果からか返済負担率は低めの傾向となっています。 金利が上昇すれば返済負担率も上がるため、金利が上昇した場合でも耐えられる返済余力は残しておく必要があります。
同調査では、今後1年間の住宅ローン金利見通しも聞いています。 「ほとんど変わらない」と予想している人が変動金利型では66.7%(2018年4月)の反面、全期間固定金利型ではほぼ半数の32.5%となっており、選択の理由が見えてきます。 日本銀行は金融緩和策を継続しており、変動金利型に影響する短期プライムレートや、全期間固定金利型などに影響する10年物国債の利回りをコントロールしています。 そのため、多少の変動はあるものの、現在のところ、いずれの金利も上昇しないように抑えられています
金利水準は?
実際に金利動向を見てみましょう。 イー・ローンサイトの「住宅ローン関連金利の推移」は図表1の通りで、変動金利の基準になる短期プライムレート(グラフでは「銀行変動金利」)は変化がない状態が続いていますが(実際の金利は金融機関の優遇などで変動)、長期金利の代表格といえる「フラット35」の最低金利はやや上がっています。
図表1 住宅ローン関連金利の推移
また、タイプ別住宅ローンの金利も見てみましょう(図表2)。 金利はいずれも2018年7月現在で、3000万円を期間30年、ボーナス払いなし、元利均等払いで借りた場合です。
これを見ると、やはり、変動金利型等の金利の低さに目を奪われます。 表にはありませんが、2年固定金利で0.2%台のものまであります。
ただし、総返済額がいくらになるのかは金利変動の可能性がある以上、完済しなければわからないのが変動金利や固定金利期間選択型である点は認識しておく必要があります。
金融機関 | 住宅ローン | 金利タイプ | 金利 | 月返済額 (当初) |
総返済額 | 事務手数料 |
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住信SBIネット銀行 | 【新規借入れ専用】団信・全疾病保障付き「ネット専用住宅ローン」(通期引下げプラン) | 変動金利型 | 0.457% | 89,192円 | 不明(金利変動による) | 64.8万円 |
りそな銀行 | りそな住宅ローン(金利プラン全期間型・融資手数料型) | 固定金利期間選択型10年 | 0.645% | 91,678円 | 不明(金利変動による) | 64.8万円 |
楽天銀行 | フラット35(新規)(融資比率9割以下、返済期間21年以上) | 全期間固定金利型 | 1.090% | 97,737円 | 3518.5万円 | 42.12万円 |
変動金利で借りるならリスク管理も
前出の住宅金融支援機構の調査では、金利上昇時の対処法についても聞いています。 それによると、変動金利型で借りている人のうち8割が、「一部繰上返済をする」「借り換えをする」「余力があるので返済継続」「金利負担が大きくなれば全額完済する」などと、金利が上昇したときの対処法を決めています。
一方で、「見当がつかない、わからない」と答えた人も2割弱います。 特に注意が必要なのはこの2割弱の人だと思います。 アメリカは経済状況の好転から金融緩和を金融引締に転換し、少しづつ変動金利型の基準となる金利を上げています。 今のところ日銀にはその動きはありませんが、いつ上げるかはわかりませんので、変動金利型で借り入れをしている、または今後検討している方は対処法を考えておくことが大事です。