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第688回

住宅ローンは、保障内容で選ぶ時代!?

マイホーム購入に向けて住宅ローンについても調べています。3大疾病保障付きの住宅ローンなども見かけるのですが、どのようなものですか?また、どう選べばいいのでしょうか?(Nさん34歳会社員)
住宅ローンの利用者が病気などにより返済が難しくなった場合に備える疾病保障付きの団体信用生命保険など、住宅ローンに付帯する保障の多様化が進んでいます。保障が手厚いほど安心感はありますが、その分負担も大きくなるため、自分に合った保障内容を選ぶ必要があります。

多様化する団体信用生命保険の特約

マイナス金利政策を受けて住宅ローン金利は過去最低水準を更新しています。金融機関の金利競争も激化していますが、これ以上金利を引き下げるのも難しい状況です。そんな中で、住宅ローンに付帯する保障で差別化を図る金融機関が出てきています。

住宅ローンを利用する際には、ほとんどの金融機関で団体信用生命保険(団信)への加入が借り入れの条件となっています。団信とは、住宅ローンの利用者が返済期間中に死亡したり、高度障害状態になった場合に、その時点での住宅ローンの残債を保険金で弁済する保険です。 この団信に、疾病保障などの特約を付けた住宅ローンの取り扱いが増えてきています。最近ではガンや3大疾病、7大疾病、8大疾病保障のほか、11大疾病保障や日常のケガや病気による就業不能状態の保障、連生保障、介護保障、自然災害時の返済一部免除など、保障の範囲が多様化しています。

団体信用生命保険の特約を利用する場合の注意点

保障が充実するほど安心感はありますが、注意点もあります。

1.保障内容や条件

商品が多様化するほど、保障内容や弁済の条件も複雑になります。同じ名前の保障でも金融機関によって内容が異なったり、ひとつの保障でも病気によって弁済の条件が異なったりします。

例えば、「8大疾病保障」とひとまとめになっていますが、ガンと急性心筋梗塞・脳卒中、その他の5つの重度慢性疾患では、ローン残債が保険金で弁済されるための条件が異なります。 ガンの場合は、生まれて初めてガン(上皮内ガンは除く)になり、医師により診断が確定された場合に住宅ローンの残債が保険金によって弁済される商品が一般的ですが、急性心筋梗塞・脳卒中の場合は、医師の診断を受けた日から60日以上所定の状態が継続した場合、5つの重度慢性疾患の場合は、就業不能状態が1ヶ月を超えて続いた場合に毎月の約定返済相当額を最長12ヶ月保障、13ヶ月を超えた場合は残債が保険金で弁済されるのが一般的です。 ガンと診断された場合に一時金が出たり、弁済の条件が異なる商品もありますので、事前にしっかりと確認しておきましょう。

また、一般に疾病保障のついた団信には融資実行から保障が開始されるまでに3ヶ月の待機期間があり、この間に特約の対象となる病気になっても保障の対象外である点には注意が必要です。

2.保険料

保障のないシンプルな団信の保険料は金利に含まれているため、別途支払う必要はありませんが、保障を付けるには保険料が必要なケースがほとんどです。保険料が金利に上乗せされるタイプが一般的で、保障を手厚くするほど上乗せ金利が大きくなります。

保険料負担がどれくらいになるのか、事例を見てみましょう。

借入金額2,000万円、返済期間30年、借入金利は全期間固定1.34%で、ガン保障の上乗せ金利0.1%、3大疾病保障の上乗せ金利0.2%、8大疾病保障の上乗せ金利0.3%とした場合、次のようになります。

  適用金利 毎月返済額 返済総額
特約なし 1.34% 67,498円 24,299,488円
ガン保障付き 1.44% 68,449円 24,641,727円
3大疾病保障付き 1.54% 69,408円 24,986,914円
8大疾病保障付き 1.64% 70,375円 25,335,047円

8大疾病保障を付けた場合、特約なしの場合と比べて毎月の返済額は2,877円アップし、返済総額は約104万円も増えることになります。決して安いとは言えない額です。借入金額が大きい場合や返済期間が長い場合にはさらに負担が大きくなります。 返済期間中に特約部分だけを解約することができない場合もありますので、注意が必要です。

3.加入年齢

契約時や返済時の年齢によって、加入の可否や保障内容、保険料が異なる場合があります。金融機関によって取り扱いが異なるため、しっかりと調べて比較検討しておきましょう。

住宅ローンを組むときには保険の見直しも忘れずに!

団信は保険の一種です。団信に加入することで万一の場合の住居費の心配がなくなります。そのため、すでに加入している生命保険や医療保険と保障内容が重複する部分を減額できる場合があります。逆にこれまで保険に加入してこなかった人は、団信の保障を手厚くするのもひとつです。 ただし、団信は住宅ローンを完済すると保障がなくなってしまいます。完済してから新たに保険加入を検討すると、年齢が高くなるため保険料が高くなるだけでなく、それまでに病気などにかかってしまうと新たに保険に加入するのが難しくなる場合もあるため、団信と合わせて保険も検討するといいでしょう。

住宅購入のように大きなライフイベントは保険を見直すチャンスです。自分に必要な保障を見極め、団信に付帯するのか、一般の保険に加入するのか、見直せる保険はないかをよく検討しましょう。

【参考リンク】

私が書きました

宮野 真弓 (みやの まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))、一級ファイナンシャル・プランニング技能士。

大学在学中にFP資格を取得。証券会社、銀行、独立系FP会社を経て独立。忙しくても無理なく実践できるメリハリ家計を提案するママFP。 ライフプラン全般の相談業務や家計簿診断、ライフプランセミナー講師、FP資格取得講座の講師として活動中。 学校での金銭教育にも注力している。

※執筆日:2016年08月23日