第638回
世界経済の動向が住宅ローンの金利にも影響!?
- 最近、世界同時株安などのニュースをよくみかけます。こんな時には住宅ローンの金利はどうなるのでしょう?(Mさん26歳、会社員)
- 世界経済の動向は日本の住宅ローンの金利にも影響します。予想に反して金利はやや上昇傾向が見られるものの、金利は相変わらず低水準です。
世界同時株安なのに長期金利が上昇!?
中国の景気減退、米国の金利引き上げ、先行き不透明なギリシャ問題など、大きな経済不安が広がる中、8月下旬、中国の人民元切り下げを発端とする世界同時株安が起こりました。一時は日経平均が18,000円を割り込み、米国のダウ平均も16,000ドルを割り込むなど、まさしくパニック相場となりました。その後、一瞬は鎮静化したように見えたものの、9月に入り「二番底」を探る下げに転じました。
同時に、安全資産として円が買われたことで円高も急激に進み、1米ドル=125円台から116円台へ急落しました。米ドルに限らず、多くの通貨で円高が進みました。特に資源国では荒い値動きになりました。
こうした動きの中、住宅ローンの金利に影響する債券市場はどうだったのでしょうか。
2015年8月24日のブルームバーグのニュースでは、次のように報じられました。
「今週の債券市場で長期金利が0.3%台で低下余地を試すと予想されている。中国をはじめとする世界的な景気減速懸念からリスク回避の動きが強まっており、国内金利にも低下圧力が掛かりやすいとの見方が背景にある」
つまり、国際的に安全資産と見られている日本の国債が買われれば長期金利は低くなる、という予想でした。住宅ローンの金利のうち、10年以上の固定金利選択型や全期間固定型については、長期金利である10年物の国債金利を基準に設定されるため、長期金利の動きが月1回の住宅ローンの金利見直しに影響します。
しかし、8日後の2015年9月1日のブルームバーグのニュースでは次のように報じられました。
「債券相場は下落。長期金利は3週間ぶりとなる0.4%台に上昇している。前日の米国債相場が原油高を背景に下げたことに加えて、きょう実施の10年利付国債入札に伴う売りが優勢となっている」
長期金利が上がった理由として、原油の急上昇や米国債相場の下げなどが挙げられています。日本の国債が買われるどころか売られているというのは少々気になるところです。
また、米国が年内にも行うと予想される利上げがいつになるのかも気になります。利上げは株価下落要因の1つになるため、もしも9月に行なわれればさらに市場が荒れ、セオリー通りに考えれば、安全資産の国債が買われ⇒長期金利は下がる⇒住宅ローンの金利も下がる(10年固定や全期間固定など)…となるはずですが、そうならない可能性もあります。
いずれにしても、金利が低い間に長期固定で住宅ローンを借りたいという人には、まだまだチャンスだと思われます。金利上昇の傾向が強まる前が狙い目かもしれませんね。
金利だけでない住宅ローン選び
ただし、住宅ローンの実際の適用金利は、住宅ローンが実行されたときの金利であることを忘れてはいけません。住宅ローンの金利は、毎月1回1日に金利動向などによって見直されています。今月住宅ローンを申し込んでも、その金利が適用されるわけではないのです。そのため、中長期的なトレンド感をもって、固定金利か変動金利か、固定金利期間選択型かなど、金利タイプなどを選ぶことは大事です。
また、住宅ローンは金利だけでは選べません。金利のほか、事務手数料や保証料、団体信用生命保険(以下「団信」)の保険料(死亡保障だけなら一部ローンを除いてかからない)など「コスト」に関わるものは重要です。最近は、特定の疾病や就業不能時の保障がプラスされた団信もあり(追加保険料がかかります)、自動付帯されるサービスも広がりつつあります。商品によって時々行われるキャンペーンなどが魅力的な時もあるでしょう。そうした要素を総合的に加味して、今の自分に適した住宅ローンを見つけたいものですね。
最後に、住宅ローンは借金です。老後に支障なく返済できる範囲で利用しましょう。