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第523回

今、借りている変動金利の住宅ローン。固定金利に借り換えた方がいい?

アベノミクスの影響もあって長期金利が上昇しているようです。私は住宅ローンを変動金利で借りていますが、固定金利へ借り換えをすべきでしょうか?(Kさん38歳、会社員)
変動金利で借りている人は、そのまま変動金利で借り続けるのか、固定金利に借り換えをするのか、心を決めましょう。固定金利に借り換えるのであれば、長期金利が少しでも低いうちに借り換えましょう。

長期金利上昇。変動金利で借りている人はどうする?

2013年1月25日の第503回コラムで予測していた通り、アベノミクスの影響で10年物の国債価格が上昇傾向にあります。それに伴い、住宅ローンの固定金利も上がっています。2013年6月の金利では、ほとんどの銀行が長期固定型の金利を上げましたが、Kさんのように変動金利型で借りていた人の中には借り換えを考えている人も少なくありません。

【参考リンク】

長期金利が上昇した場合、すでに全期間固定金利型で借りていて現在の金利と金利差がない人は、借り換えの必要は原則ありませんが、Kさんのように変動金利で借りていた人の中には迷う人も少なくありません。

しかし、変動金利を借りる場合には、最初に覚悟を決めて借りるべきで、本来、迷うことはないはずです。変動金利を借りることはリスクをとることになりますが、もし金利が上がってきたときにどうするかは、借りる際に決めておくべきことです。ずっと変動金利で借り続けるのか、あるいはどこかで固定金利期間選択型に借り換えるのか。

借り換えるつもりで変動金利を借りている人がチェックすべき点は、変動金利の金利ではなく、借り換える先の固定金利期間選択型の金利です。変動金利の金利自体にさほど変動がなくても、借り換える先の商品内容は常にチェックしておく必要があります。

この「金利が上がってきたとき」の金利とは、変動金利だけではなく、借り換える先の10年固定金利や長期固定金利を指します。住宅ローンの固定金利期間選択型で10年以上の商品は、新発10年国債利回り(長期金利)に影響を受けますが、変動金利の場合、銀行間の貸し出しレート(短期金利)に基づいて決められます。しかし、「政策金利」と言われるように、基準となる金利のコントロールは日銀が行っています。

変動金利で借りていて、金利が上がってきたときに取り得る方法としては、下のようなものがあります。

  • 1・変動金利から10年以上の長期固定金利型や全期間固定金利型に借り換えることで、金利変動リスクを軽減し、総返済額を確定またはメドをつける。
  • 2・そのまま変動金利で借り続け、変動金利の金利が上がったときには「返済額軽減型」の繰上げ返済を行うように資金を準備する。

1では、月々の返済額はアップするため家計への影響は出るかもしれませんが、金利変動リスクを回避または軽減することができます。事例で見てみましょう。Aさんは残債2,000万円の住宅ローンを残返済期間20年、変動金利1.275%で借りていたとします。これをソニー銀行の10年固定・20年固定金利に借り換えた場合は下のようになります。

事例)残債2,000万円、残返済期間20年、(元利均等返済、ボーナス払いなし)

変動金利1.275%、引き下げ幅▲1.2%
【月返済額】
94,453円
【総返済額】
不明(今後の金利変動による)
【参考】
約2,453.5万円 (店頭金利が5年ごと0.5%ずつアップした場合)
約2,518.1万円(3年経過後以降、店頭金利が4%だった場合)
約2,604.7万円 (3年経過後以降、店頭金利が4.5%だった場合)

ソニー銀行 10年固定1.692%、引き下げ幅▲0.9%に借り換え、借り換え費用約30万円含む
【月返済額】
98,285円
【総返済額】
約2,477.1万円(11年以降、店頭金利4%だった場合)
約2,507.5万円(11年以降、店頭金利4.5%だった場合)

ソニー銀行 20年固定2.389%に借り換え、借り換え費用約30万円含む
【月返済額】
104,902円
【総返済額】
約2,552.9万円(確定)

なお、貯蓄が多い方や貯蓄のペースが速い方は、「預金連動型」の住宅ローンへの借り換えも選択肢に入ります。東京スター銀行の預金連動型「スターワン住宅ローン」【借り換え用】も試算してみるといいでしょう。

借り換えができないなら金利変動リスクをあえてとり続ける

2では、返済額の急増による家計への影響を抑えることはできるものの、金利変動リスクはとり続けるという返し方です。ただし、返済額軽減型の繰上返済で返済額を従来と変わらないようにするには、かなりまとまった金額の繰上返済が必要になります。

変動金利の総返済額は前述の通り、返し終わってみないと分かりません。変動金利は、金利が半年に1回見直されるものの、返済額は5年間変わらず、見直しで金利が大幅アップしても、返済額は125%までしか増えないというルールがあります。しかし、金利が上がれば、返済額に占める金利の割合が増え、急激に金利が上がった時には、返済額がすべて利息だけということもあり得ます。返済額がすべて金利になっただけで返しきれない場合は、「未払い利息」が発生し、借入元金が増える場合もあります。

最終的にどちらの選択が有利になるかは、今後の金利動向次第であり、返し終えないとわかりません。そのため、金利変動リスクをとり続けたいかどうかという選択になるものと思われます。

変動金利で借りている人が、金利に動きが出てきたときにそわそわするのはむしろ健全です。そわそわしないで済む人は、きちんと奥の手(=繰上返済用の貯蓄)が準備できている人か、いつでも全額返却できる貯蓄がある人、または今後、大きなお金が入る予定のある人でしょう。覚悟も準備もなく変動金利で借りている人は、まず金利変動リスクを理解することが大事です。「変動金利の怖さを知っているけど、どうしていいかわからない」など思考が停止している状態だけは避けたいものです。

借り換える際にはローン控除にも配慮を

なお、まれに勘違いしている方がいますが、住宅ローン減税は借り換えをしても延長されることはありません。ただし、そもそもの新しい住宅ローンが10年以上の返済期間であることなど要件に当てはまらないと、借り換え後も住宅ローン控除を受けることはできませんので注意が必要です。

私が書きました

豊田 眞弓 (とよだ まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー、シニアリスクコンサルタント。

20代前半より経営誌や経済誌、女性誌と広く手がけるライターとして個人事業を展開。1995年より独立系FPとして、雑誌やムック、新聞、サイトへの寄稿・監修、相談業務、講師などで活躍。「今日からの お金持ちレシピ」(明日香出版)をはじめ共著本など多数。

※執筆日:2013年06月11日