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第519回

返済年数と返済額をシミュレーションして住宅購入時期を決める!

5年前に結婚し、妻と3歳、1歳の子どもとの4人家族です。そろそろマイホームを購入しようかと考えていますが、将来転勤の可能性もあり、迷っているところです。ただ、いずれは買いたいと思っています。購入時期をどんなふうに決めたらいいでしょうか。(静岡県 35歳 会社員)
マイホームの購入プランを前進させるコツは、自分や家族の年齢、収入、自己資金などをもとに、借入額、返済期間、返済額などをシミュレーションして、長期的に家計にどんな影響があるかを目に見える形にすることです。そうすれば、資金計画や購入時期がリアルな形で見えてくるはず。その上に、夫婦の価値観や親との関係、仕事の事情などを重ね合わせれば、納得のいく購入時期の判断ができるでしょう。

ムリのない返済期間、返済額を探る!

住宅ローンの返済期間は原則最長35年です。返済期間を長くすればするほど毎月支払う返済額は少なくなります。しかし、期間全体でみると返済総額は増えていきます。

【返済期間・借入金別の毎月返済額、返済総額】
返済期間 借入額:2,000万円 借入額:3,000万円
毎月返済額 返済総額 毎月返済額 返済総額
15年 128,701円 2,317万円 193,052円 3,475万円
20年 101,176円 2,428万円 151,765円 3,642万円
25年 84,770円 2,543万円 127,156円 3,815万円
30年 73,923円 2,661万円 110,885円 3,992万円
35年 66,252円 2,783万円 99,378円 4,174万円

(条件:金利2.0%、元利均等返済方式)(筆者作成)

上の表では、返済期間を5年間隔で長くすると、毎月返済額が数千円から数万円少なくなることが分かります。一方、返済総額は返済期間が長いほど多くなります。その差をみると、けっこう大きな金額です。理由は、返済期間が長くなるほど支払う利息額が増えるからです。

住宅ローンを組むときは、返済期間をできるだけ短くしてトータルの負担を抑えるのが鉄則。しかし、そのために毎月の返済が重荷になって生活費や子どもの教育費を圧迫するようだと困ります。

逆に、毎月の家計にゆとりを持たせるために返済期間を長くすると、リタイア後も住宅ローンの返済をしなければならなくなり、セカンドライフに支障をきたしかねません。

このように「毎月返済額」と「返済期間」はトレードオフ(両立しえない)の関係にあります。従って、「将来の家計の状況も想定して、支払うことができそうな毎月の返済額はいくらか?」、「想定した毎月の返済額を何歳まで支払い続けることができるか?」これら2項目の折り合う点を探すことがポイントになります。

【参考リンク】

返済年数は定年退職年齢までにするのが基本!

ムリのない返済年数は、勤労収入の中から返済ができる定年退職(60歳)までとされています。定年までにローンの返済を終えて、退職金を全額セカンドライフの資金に充てるのが理想です。

ただ、今年度から、希望すれば65歳まで働くことができる仕組みができました。これは公的年金が支給されない60歳代前半を勤労収入でカバーする制度ですが、ローン返済をしても大丈夫な水準の収入が期待できる場合は、ローンの返済期間を65歳までにしてもいいかもしれません。

仮に60歳までに住宅ローンの返済を終了するとした場合、返済期間は「60歳-現在の年齢」になります。さきほどの表を使うと、下のようになります。

【返済期間・借入金別の毎月返済額、返済総額】
現在の年齢 返済期間
(60歳までの年数)
借入額:2,000万円 借入額:3,000万円
毎月返済額 返済総額 毎月返済額 返済総額
45歳 15年 128,701円 2,317万円 193,052円 3,475万円
40歳 20年 101,176円 2,428万円 151,765円 3,642万円
35歳 25年 84,770円 2,543万円 127,156円 3,815万円
30歳 30年 73,923円 2,661万円 110,885円 3,992万円
25歳 35年 66,252円 2,783万円 99,378円 4,174万円

(条件:金利2.0%、元利均等返済方式)(筆者作成)

これをみてもわかる通り、若ければ若いほど、返済期間を長くできるため、毎月の負担は軽くなります。家計の状況でもっと負担を増やしても大丈夫な場合は、借入額を増やして価格の高いマイホームを買うことも可能です。

毎月返済額が多くて家計が苦しい場合は、借入額を少なくして毎月返済額を抑える必要があります。その結果、欲しい価格のマイホームは手に入らないかもしれません。

このように、年齢によって返済可能な期間は異なり、返済額も違ってきます。

「欲しい住宅の価格」、「いま手元にある自己資金」、「借入金額」、「現在の年齢から考えた現実的な返済年数」、「長期的に支払うことができそうな毎月返済額」、これらのことを具体的な数字にして夫婦で検討をすれば、「いつ購入すれるのがよいか?」が浮かび上がってくるでしょう。

【参考リンク】

他にもさまざまなシミュレーションをして

マイホームは一生で最大の買い物なだけに、買う前には十分な検討を重ねたいものです。

イー・ローンの住宅ローンシミュレーション機能を使えば、さまざまな切り口で、検討が可能です。
住宅ローン借入可能額シミュレーションは、毎月返済額や返済期間、金利を入力して借入可能額の目安を算出することができます。算出された借入可能額に自己資金を加えた金額が、マイホーム取得の予算枠になります。この金額の範囲で「マイホームの価格+諸経費」を捻出することになります。
住宅ローン返済額シミュレーションは、希望する借入額や返済期間、金利を入力して毎月返済額やボーナス返済額、返済総額を試算することができます。すでに欲しいマイホームの価格が決まっている場合などは、この機能を使って住宅ローン選びや毎月返済額の確認などに使うことができます。

景気回復傾向や低金利、「アベノミクス」の消費心理の改善によって住宅市場は回復の兆しをみせています。国土交通省が4月30日に発表した2012年度の新設住宅着工戸数は前年度比6.2%増と3年連続で増加。伸び率も16年ぶりの水準となっています。今年に入ってからは来年4月の消費増税を前に駆け込み需要も顕在化しています。

市場は活気づいているようですが、マイホームは大きな買い物。あせって「衝動買い」に走らず、じっくりと冷静に検討して、購入時期と価格を判断してほしいものです。

私が書きました

中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2013年05月07日