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第439回

【フラット35】Sの金利優遇、年内に復活?

住宅購入を予定しています。【フラット35】Sの年1%の金利優遇が9月で終わってしまったのでがっかりしていたら、金利優遇が年内に復活というニュースを目にしました。復活するまで、住宅購入は待ったほうがよいでしょうか?(福岡県 T)
国交省は【フラット35】Sの新たな金利優遇措置を年内に導入する方針ですが、はっきりした時期は未定です。対象となる住宅や優遇幅も以前と異なるので注意しましょう。

金利年1%優遇の【フラット35】Sは9月末で打ち切りに

住宅金融支援機構と民間金融機関の提携ローンである【フラット35】は、最長35年間の長期固定金利の住宅ローンです。一定の基準(耐震性・省エネルギー性・バリアフリー性・耐久性のいずれか1つの技術基準)を満たす住宅であれば、【フラット35】S(優良住宅支援制度)の金利優遇が受けられます。

【フラット35】Sの金利引下げ期間の通常の優遇幅は年0.3%ですが、昨年2月からは期間限定で、優遇幅が年1%に拡大されていました。固定金利で金利上昇の心配がなく、しかも低金利とあって人気がありましたが、申込者が予想以上に多くて予算が尽きたため、当初の予定より3か月も早く、年1%の金利優遇は9月末で終了となりました。現在は、もとの優遇幅の年0.3%に戻っています。

対象と期間を限定した、フラット35の新しい金利優遇策とは

ところが、9月後半からたびたび、【フラット35】Sの金利優遇復活に関するニュースを目にするようになりました。報道によると、国土交通省は、年内にも、現在の年0.3%の金利優遇幅を年0.7%に拡大し、東日本大震災の被災地向けには年1.0%の優遇を適用する方針とのこと。また、9月までの制度とは違い、優遇期間は当初5年間で、対象も省エネルギー性能の高い住宅に限定されるとのことです。優遇される対象も、金利も期間も以前よりかなり限定されるので、金利優遇復活というよりは、新しい金利優遇策が導入されると考えたほうがいいかもしれませんね。

ただし、現在はまだ国土交通省の方針が出た段階。金利優遇にかかる費用は2011年度第3次補正予算案に盛り込まれるということです。新たな金利優遇策の具体的な内容や実施時期が決まるのは、第3次補正予算が成立してからということになります。

<【フラット35】Sの比較>
  平成23年9月30日までの申込み分に適用 平成23年10月1日から平成24年3月31日までの申込み分に適用* 新たな金利優遇策(国交省方針)
年内導入?
対象 耐震性、省エネルギー性、バリアフリー性、耐久性・可変性のうち、いずれか1つ以上の技術基準を満たす住宅 省エネルギー性の高い住宅
金利優遇幅 当初10年間
年率▲1.0%
当初10年間
年率▲0.3%
当初5年間
年率▲0.7%
(東日本大震災被災地は年率▲1.0%)

* 2012年4月1日以降の申込み分の金利優遇期間は当初5年間になります。

<表は筆者作成>

【フラット35】Sの新たな金利優遇策のメリットはどれくらい?

では、新たな金利優遇策が導入された場合、現状の年0.3%優遇の【フラット35】Sやその他の住宅ローンと比べてどれくらい有利になるのでしょうか。3000万円を35年ローンで借りたと仮定して、(その1)現状の【フラット35】S、(その2)2012年4月1日以降【フラット35】Sに申し込んだ場合、(その3)仮に【フラット35】S に0.7%の金利優遇が導入された場合で試算してみました。

金利は、2012年10月の金利(返済期間が21年以上35年以下の場合の金利幅 2.180%~3.200%)を参考に2.18%に設定しました。諸費用・税金などは考慮していません。

  (その1)
現状:
【フラット35】S
当初10年間年0.3%金利優遇
(その2)
2012年4月1日以降:
【フラット35】S
当初5年間年0.3%金利優遇
(その3)
新たな優遇策:
【フラット35】S
当初5年間年0.7%金利優遇
借入金額 3,000万円
返済期間 35年
返済方法 元利均等返済
借入金利(年率) 当初10年間 1.88%
以降25年間 2.18%
当初5年間 1.88%
以降30年間 2.18%
当初5年間 1.48%
以降30年間 2.18%
毎月の返済額 当初10年間 97,541円
以降25年間 100,956円
当初5年間 97,541円
以降30年間 101,574円
当初5年間 91,561円
以降30年間 100,746円
総支払額 41,991,565円 42,419,295円 41,762,311円

<住宅金融支援機構HP「返済プラン比較シミュレーション」にて試算。表は著者作成>

比較してみると、(その1)の現状の当初10年間年0.3%優遇の【フラット35】Sよりも、(その3)の当初5年間年0.7%の金利優遇策のほうが総支払額は約23万円少なくなります。思ったよりも少ないと思われる方も多いかも知れませんね。ところが、(その2)の来年度以降の当初5年間年0.3%優遇と(その3)を比較すると、(その3)のほうが総支払額は約66万円少なくなります。次年度以降(2012年4月以降)であれば、新たな金利優遇策の導入を待ち、利用するメリットは大きくなりますね。

このように、今年度中は、新たな金利優遇策による金利節約のメリットはさほど大きくありません。金利が低いに越したことはありませんが、割安な物件が見つかって借入額を抑えることができれば、数十万円程度の違いは吸収されてしまいます。たとえば、現状の当初10年間年0.3%優遇の【フラット35】Sで2980万円を35年返済で借りた場合、総支払額は約4,172万円。新たな金利優遇を利用するよりも、総支払額は少なくなるのです。また、当初期間経過後の金利上昇リスクはありますが、変動金利型や固定期間の短い固定金利選択型のより低金利な住宅ローンを利用すれば、結果的に総支払額を少なくできる可能性もあります。

【参考リンク】

したがって、近々住宅購入を考えておられるなら、【フラット35】Sの新たな金利優遇をあえて待たなくてもよいのではないでしょうか。待っている間にお買い得な物件を逃すリスクのほうが大きいかもしれません。住宅購入が次年度以降にずれ込み、そのときに【フラット35】Sの新たな金利優遇が導入されていたら、あらためて、購入希望物件が対象になるのか、ほかのローンに比べてどれくらい有利になるのか、比較して利用を検討されるとよいでしょう。

私が書きました

大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2011年10月14日