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第426回

「二重ローン問題」とは?どんな対策がとられているの?

「二重ローン問題」が話題になっていますが、どのような対策がとられているのですか?誰でも利用できるのでしょうか?(T.Sさん36歳)
先日、二重ローン対策としての「個人向け私的整理ガイドライン」がニュースになりました。まだ政府の素案という流動的なものですが、ガイドラインに沿った審査に通れば被災前の住宅ローンが減免されるという、非常に画期的なものです。今後の行方が注目されます。

「二重ローン問題」ってなに?

地震や火災などで被災した企業や個人が、生産設備の修繕や自宅を再建するために、もともとあるローン(旧債務)に新たなローン(新債務)を抱え、返済の負担が極端に重くなってしまう問題のことです。現在与野党で、事業者向け、個人向け、金融機関向けの対策が協議されていますが、ここでは個人向けの対策について報道されたものを説明します。

新旧二つの住宅ローンを同時に払うことになれば、よほど収入や貯蓄に余裕がない限り、その後の家計は大きく圧迫されるでしょう。実際、1995年の阪神大震災の時も被災者の二重ローンが問題になりました。当時は兵庫県が利子補給などの支援をしましたが、被災前のローンが免除になることはありませんでした。

ところが今回は被害の甚大さや対象人数の多さが考慮され、もう少し踏み込んだ対応がとられることになったのです。政府が金融機関に住宅ローン債権の放棄を促し、審査によっては被災者の旧債務が削減、または免除されます。そして、その時の指針が「私的整理ガイドライン」です。

住宅ローンを免除されるのはどんな人?

当事者間の合意ですむ「私的整理」は、裁判所が関与する「法的整理」に比べ、時間も手間もかからないため、早く生活再建できるというメリットがあります。

今回の対象者は、東日本大震災の影響で住宅ローンの返済が不可能になった個人です。こうした方々が、弁護士らでつくる「第三者機関」によって住宅ローンの返済能力を審査されます。そこで返済能力が「無い」とされれば全額免除になり、「有る」とされれば資産や収入に応じて一定額が削減されます。申請すれば誰でも全額免除になるわけではないので注意しましょう。日経新聞によると「全額免除の対象者は自宅の所有や事業の継続性を断念し、勤務先の倒産などで将来も収入を得る見通しが立たない被災者」とあります。これほど厳しい状況にある方が、マイナスではなくゼロからの出発になるよう、全額免除という措置がとられるのです。

やむなく二重ローンを組む方へ

残念ながら審査で「返済能力あり」と判定され、自宅再建のために新たなローンを組む方は、厳しい二重ローン生活に入ることになるでしょう。その前にもう一度考えて欲しいことがあります。「月々の返済額」だけでなく、長いローン生活全体を具体的にイメージしてから決めたでしょうか?ローンの返済が完了する年齢はいつでしょうか?お子さんの教育費が重い時期は乗り切れるでしょうか?現在の定期収入が減る可能性はないでしょうか?最初のローンが終わるまで賃貸住宅に住むという選択肢はないのでしょうか?

二重ローンには多くのリスクが伴いますので、ぜひ慎重に検討してください。

私が書きました

神田 理絵 (かんだ りえ)

ファイナンシャル・プランナー、住宅ローン・アドバイザー、心理カウンセラー。

大学卒業後、大手総合商社へ入社し、貿易事務に携わる。その後、税理士事務所、社会保険労務士事務所を経て2005年に独立。現在は生命保険や住宅ローンの見直し、資産運用に関する相談や、各種マネーセミナー、FP資格取得講座の講師、コラムの執筆等で活躍中。大人だけでなく、小学生向け金銭教育活動にも力を注いでおり、首都圏を中心に、今までの実務経験と女性の感覚を生かした独立系FPとして活動中。

※執筆日:2011年07月15日