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第398回

住宅ローンの金利の決まり方を学んで、自分にあった金利タイプを選ぼう

最近、住宅ローンの金利が上がっているというニュースを見ました。1年以内にマイホームを購入しようといろいろ勉強しているのですが、同じ住宅ローンでもいろいろな金利タイプがあって、どのタイプを選べばよいのか分かりません。住宅ローンの金利タイプはどれを選べばよいのでしょうか。(女性 34歳)
住宅ローンの金利には「変動金利型」と「固定金利型」の2つのタイプがあり、それぞれ金利の決まり方が違います。この金利の決まり方を知っていると、金利タイプを選択するときの参考にすることができますので、簡単にお教えしましょう。

住宅ローン「固定金利型」は、長期金利に連動して金利が決まる

「12月は住宅ローンの金利が上昇した」というようなニュースをご覧になられた方もいらっしゃるかと思いますが、各金融機関の概況を探ってみると11月から12月にかけては、「固定金利型」のみ年0.05%~年0.15%程度引き上げ、「変動金利型」に関しては据え置きという金融機関が多いようです。では、「固定金利型」の住宅ローン金利がアップしている理由は何でしょうか。それは、長期金利のアップが影響を与えているからです。
ここからは実際の住宅関連金利の推移を見ながらご説明いたしましょう。

長期金利に関連する代表的な指標は、新発10年物の国債の利回りで、これに連動して長期金利が決まります。この長期金利が上がると、銀行の貸し出し金利である「長期プライムレート」も上昇し、住宅ローンの「固定金利型」も連動して上昇します。確かに、水色のグラフ(長期プライムレート)が僅かに上昇していますね。
国債も市場で取引されていて、利回り(価格)は需要と供給のバランスで決まるため、株価や為替のように時々刻々と変化します。今年の8月初旬には、新発10年国債の利回りが年利1%を割り込み、7年ぶりの低水準を記録しましたが、11月からは上昇に転じ、住宅ローンの金利も間接的にその影響を受けて上昇しています。
多くの金融機関は、毎月、その月の中旬から下旬の長期金利の動向を見つつ、長期プライムレートを設定し、さらに、住宅ローンの販売方針に配慮して翌月1ヶ月間のローン金利を決め、月初に公表します。
長期金利は、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)と同じように、各新聞紙上に毎日(平日の翌日)掲載されています。そのため、過去からの長期金利の動向に注目していると、今後の金利の方向性をある程度予想することができます。長期金利の決定要因については、将来の「予想」に基づいた期待インフレ率、潜在成長率、リスクプレミアムなど、ちょっと専門的で複雑な要因が挙げられますが、もっと簡単に言うならば、「景気が良くなりそうな兆候が現れると金利は上昇し、悪くなりそうだと下落する傾向がある。」といった理解でも差し支えないと思います。

住宅ローン「変動金利型」は日本銀行の政策金利に連動して金利が決まる

一方、「変動金利型」(赤色のグラフ:「銀行変動金利」)の住宅ローン金利は、現在の日本銀行の政策金利である「無担保コールレート(オーバーナイト物)」(今回は参考として青色のグラフ:「公定歩合」を参照※)の決定が影響を与えます。日本銀行がコントロールしている政策金利が利上げされるということは、利上げされた分だけ民間の金融機関の調達金利が上がるということになりますので、私たちへの貸出金利も連動して上がるという仕組みです。実際の住宅ローンの金利は、日銀が政策金利を変更した翌月か翌々月から変える金融機関が多いようです。最近2年間で、住宅ローンの「変動金利型」の金利はおおむね据え置かれています。日本銀行が政策金利を変更しそうなときには、新聞やテレビが大きく報道します。そのため、「変動金利型」の住宅ローン金利も、ある程度方向性を予想することができますが、ニュースなどでも報じられている通り、「無担保コールレート(オーバーナイト物)」は0~0.1%で推移するように日本銀行がコントロールしていますので、言い換えれば、現在の住宅ローン「変動金利型」はこれ以上下げようがないくらいまで下がっている状態という風に見ることもできると思います。

まず金利タイプを決める。そして、各金融機関の金利やコストを比較する。

住宅ローンを選ぶときには、「固定金利型」と「変動金利型」の金利の動向を検討したうえで、まず、金利タイプを決定します。
「変動金利型」の場合、将来の金利変動が毎月のローンの返済額に影響を与えます。金利が上がると返済額もアップします。そのため、一般的には、将来の家計に余力がある方に向いています。なお、「変動金利型」の住宅ローンをすでに借りて返済中の方は、多くの場合、4月と10月が金利見直しのタイミングです。
一方、「固定金利型」の返済額は、金利が固定している間は金利変動の影響を受けません。したがって、子ども教育費などの関係で将来の家計に余力がない期間は、「固定金利型」にしておくのが安心です。金利タイプを決定したあと、各金融機関の金利等を確認し、有利な条件のところを探します。

ある程度絞り込んだ段階で、融資金額や返済期間などさまざまな条件で返済総額をシミュレーションし、融資手数料や保証料などのコストも比較して、最終的にどの住宅ローンにするかを決めるとよいでしょう。過去のFPからのアドバイスでも金利タイプに応じた住宅ローン選びについて記事がありますので、気になった方は参考にしてみてください。

※「公定歩合」の呼称については、現在「基準割引率および基準貸付利率」に変更されています。

私が書きました

中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2010年12月17日