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第390回

預金連動型住宅ローンに向いている人、いない人は?

預金を増やすと負担が減っていく住宅ローンとはどのようなものですか?誰にでも向いているのでしょうか?活用法を教えてください。(Eさん 37歳 会社員)
それは預金連動型住宅ローンといわれるものです。ローンと預金がセットになったもので、預金がふえていくにつれ、金利の負担が軽くなるという仕組みです。まとまったお金を預金しても利息がほとんどつかない現在、手元資金を効率よく活用できると注目されています。ただし向いている方、向いていない方がいますのでご注意下さい。

金利ゼロの住宅ローン?

代表的な東京スター銀行の預金連動型「スターワン住宅ローン」を例に説明しましょう。住宅ローン残高が2,000万円、預金残高が500万円だった場合、その差額の1,500万円にしか金利がかかりません。返済方法は元利均等返済、利息の部分は預金残高に連動して変わります。連動する預金は普通預金のみ、ただしその預金に利息はつきません。そして外貨預金も対象になっている点がユニークですね。
預金残高が増えていくと返済額に占める利息の割合が減っていき、預金残高とローン残高が同額になった時点で、元金返済のみになります。つまり金利がゼロになるということ。金利はゼロでもローン残高はありますので、住宅ローン減税の恩恵を受けることができます。
このような仕組みなので、預金残高が多い人、預金を確実に増やしていける人にとっては、大変メリットのあるローンです。また、預金するだけで繰上返済と同じ効果をもたらすため、資金を残しながら金利の節約をしたい人にも向いています。例えば教育費の負担が重い時期などに、いつでも引き出せるお金が手元にあるのは、やはり安心ですよね。

このローンが向いていない人とは?

預金連動型住宅ローンの注意点は、金利が高めだということです。2010年10月の金利(変動、適用金利)でみると、住信SBIネット銀行は年0.975%、新生銀行は年1.000%ですが、東京スター銀行はキャンペーン金利を利用しても年1.350%です。さらに、前者2行が団体信用生命保険料込みの金利になっているのに対し、東京スター銀行は別途加入(メンテナンスパック)が必要です。それらを考慮すると、金利差はさらに広がるでしょう。
よって、預金残高がそれほど多くない方や預金を増やすことが難しい方、度々預金を引き出すような方は、このローンのメリットを十分に活かすことができません。それどころか、思った以上に負担が増える可能性もあり、慎重に検討する必要があります。

向いている人の活用法とは?

このローンが向いている方は、どう活用すればいいでしょうか?他の金融機関に預けている資金を集め、連動している預金に集中させましょう。例えば預金残高が600万円になった場合、このお金を一年物の定期預金(某メガバンク年0.04%)に預けておいても利息は1,920円しかつきません。ところが預金連動型ローンの場合、住宅ローン金利年1.350%分の81,000円の利息を払わずに済みます。同じ600万円というお金でも生み出す価値が違うのです。これも1つの資産運用といえるのではないでしょうか。
さらに、毎月一定額をちゃんと貯蓄できる方の場合、「最終的に金利はどのくらいになるのか?」気になるところですよね。これは東京スター銀行のホームページでシミュレーションすることができます。例えば下記のようなケース。

・住宅ローン残高2,200万円 返済期間30年 変動金利4%
・毎月2万円を預金していった場合

・住宅ローン総支払額(メンテナンスパック料込み)は3,373万円
・最終的な金利負担は2.608%

変動金利は金利上昇のリスクがあるため、あえて4%という高めに設定してシミュレーションしてみました。けれどこのケースでは、23年目からローン残高と預金残高が逆転し、最終的な金利負担は2.608%で済むことがわかりました。預金連動型のメリットを十分活かしているといえるでしょう。

このように具体的な数字でオトクを実感できれば「ちゃんと預金しよう」とモチベーションが高まります。貯蓄グセがつきやすくなりますので、ぜひ利用してみて下さい。

【預金連動型住宅ローンの参考】

私が書きました

神田 理絵 (かんだ りえ)

ファイナンシャル・プランナー、住宅ローン・アドバイザー、心理カウンセラー。

大学卒業後、大手総合商社へ入社し、貿易事務に携わる。その後、税理士事務所、社会保険労務士事務所を経て2005年に独立。現在は生命保険や住宅ローンの見直し、資産運用に関する相談や、各種マネーセミナー、FP資格取得講座の講師、コラムの執筆等で活躍中。大人だけでなく、小学生向け金銭教育活動にも力を注いでおり、首都圏を中心に、今までの実務経験と女性の感覚を生かした独立系FPとして活動中。

※執筆日:2010年10月22日