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第343回

国債増発で、住宅ローンの金利が上昇?

住宅ローンの借入を控えていますが、最近のニュースで「長期金利が上昇している」というニュースを見ました。住宅ローンの実行金利にも影響があるのでしょうか?
長期金利の上昇は、住宅ローンの実行金利に影響します。10月上旬以降、徐々に上昇していた長期金利は11月10日には4ヶ月半ぶりに1.485%の高水準となり、10月末には大手都市銀行が住宅ローン金利を引き上げ、住宅金融支援機構が11月4日に発表したフラット35の11月の適用金利も、6ヶ月ぶりの金利上昇となりました。

政治経済のニュースは私たちの生活とつながっている

「債券市場で長期金利が上げ足を速めている。2010年度の予算編成をめぐる税収の落ち込みに伴い、国債の増発懸念が高まっているためだ。」という内容のニュースが先日報道されました。住宅ローンを借りている方、これから借りる計画のある方には、見過ごせないニュースだったと思いますが、「なんで国債が増発されると、長期金利が上昇して、ローンの金利も上昇するのだろうか?」と疑問に思われた方もおられるのではないでしょうか。
一見、結びつかない「国債増発」と、「住宅ローン金利の上昇」は、下記のような流れでつながっています。

財政の拡大→国債の増発→供給超過→長期金利の上昇→住宅ローン金利の上昇

今回は、この流れについて簡単に説明します。

長期金利は住宅ローン金利を決める基準

そもそも、住宅ローンの金利はどうやって決まるのかを確認しておきましょう。住宅ローンの金利タイプはさまざまありますが、変動金利型や短期の固定金利選択型は「短期プライムレート※1」などが、全期間固定や長期の固定金利選択型は「長期金利※2」などが、金融機関が金利を決める際の目安とされています。これらの目安となる金利と金融機関ごとの調達金利や利益を考慮して、それぞれの住宅ローン金利が決められているのです。
したがって、長期金利が上昇すると、金融機関は長期の住宅ローンの金利を引き上げるのです。

※1 短期プライムレート:銀行が信用力の高い企業に対して短期資金(1年以内)の貸し出しをする際に適用する最優遇貸出金利
※2 長期金利:期間が1年以上の金利で、10年物国債の流通利回りが指標となっている

なぜ、国債発行が増えそうなの?

一方、国が発行する債券である「国債」は、大量発行が懸念されています。債券とは、いわば利息と元本の支払いを約束した「借用証書」のことです。つまり、「国債を大量発行する」ということは、「国がたくさん借金をする」ことを意味します。

現在のような景気低迷期には、国が景気対策、雇用対策を行って景気悪化を食い止め、生活を守ることが必要になり、より多くのお金が必要になります。しかし、長引く不況で税収も減っており、鳩山政権が国の財政のムダを削っても、必要なだけのお金を国の台所から捻出することは難しい様子。となると、借金を増やす(国債をたくさん発行する)しかないだろう、と取りざたされているのです。

国債を大量発行すると、国債価格は安くなる

国債を大量に発行すると、その価格はどうなるでしょうか。
モノの値段は、需要と供給のバランスによって決まりますが、国債などの債券の価格も同様です。たとえば、イチゴの値段を思い浮かべてください。クリスマスケーキに不可欠なイチゴですが12月には出回る数も少なく、「需要>供給」で高価です。しかし、旬の4,5月になればイチゴは市場にあふれ、「需要<供給」となって安くなります。

債券も同様で、買い手が多ければ高く買われますが、余るほど大量に売り出せば、安くしなければ買い手がつきません。また、国債が大量に売り出されれば、国の利払い負担が増えて財政事情が悪化します。すると、「ちゃんと元金と利息を返せるの?」という心配が生じて買い手が減り、いっそう債券価格の下落を招くことになります。

債券価格が下がると、利回りは上昇する

債券の価格が安くなると、「利回り(投資した元本に対して投資の結果得られる収益がどのくらいになるかを年率(%)であらわしたもの)」は上がります。

債券は、発行時に利息や償還期限などが決められていて、発行後は市場価格で取引されます。たとえば、発行時に「100円あたり利息は毎年1円」と決められた期間10年の国債の相場価格が100円だったら、毎年1円の利息を受け取り、10年後には100円の元本が戻ってきます。同じ条件の国債の相場が95円だったら、毎年1円の利息を受け取り、10年後の満期には100円の元本が戻ってくるので、購入価格との差額5円も手にすることができます。

このように、債券の価格が安くなれば、利回りは高くなります。長期金利は10年物国債の流通利回りが指標ですから、国債価格が下がれば、長期金利は上昇すると言うわけです。

表:10年物国債 額面金額100円、表面利率1%を購入すると…
購入価格
投資収益(1年あたり) 利回り(%)
100円で購入
利息1円 1%
95円で購入
利息1円
値上がり益5円/10年=0.5円
合計1.5円
1.5%
105円で購入
利息1円
値下がり損 ▲5円/10年=▲0.5円
合計0.5円
0.5%

長期金利は、どんなときに上昇するの?

このように、国債増発は長期金利の上昇を招きますが、長期金利の上昇要因はこれだけではありません。長期金利は、景気や物価、為替や海外の金利、日本国内の財政や国債発行など、さまざまな要因によって動きます。

一般的に、景気がよくなってきてモノがよく売れるようになれば物価が上がり、設備投資などの資金需要も増えて、高金利でもお金を借りる人(企業)が増えて、金利は上がります。景気がよくなって雇用環境も改善し、給料も上がって定期預金の金利も上がる…のであれば、住宅ローンの金利が上がっても仕方ない、と思えるかもしれませんが、金利上昇への備えは必要ですね。

現在のような景気も雇用も低迷した状況のままでのローン金利の上昇はできれば勘弁願いたいところですが、あり得ないことではなく、きちんと備えておく必要があります。

現在(11月17日の終値は1.305%)、長期金利は再び下がっていますが、今後の上昇の懸念がなくなったわけではありません。住宅ローンをこれから借りる方、すでに借りていて固定金利期間がもうすぐ終わる方などは、今後も金利動向に係るニュースにアンテナをめぐらし、金利が動いたときにどう対処するかを考えておきましょう。金利が上昇した場合にも家計が負担に耐えられるように余裕を持たせてローンプランを組み、金利タイプの変更などができるか、手数料はかかるのかなども事前にチェックしておきたいものです。

私が書きました

大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2009年11月19日