第1096回

金利上昇で変動金利の住宅ローンは固定金利に借り換えるべき?

住宅ローンを変動金利型で借りていますが、今後は変動金利が上がる可能性があるというニュースを見ました。早めに固定金利型に借り換えた方がよいのでしょうか。(Tさん 山口県 44歳)
徐々に変動金利が上がる可能性はありますが、急激な上昇の動きはまだ見られません。変動から固定への借り換えは、今後のライフプラン、残りの返済期間やローン残高にもよりますので諸費用も考慮して慎重に判断しましょう。
固定?変動?と書かれたブロック

住宅ローンの変動金利は上がるの?住宅ローン金利の動向は?

日銀のゼロ金利政策が終わり、住宅ローン金利への影響が注目されています。住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者調査(2024年5月調査)」によりますと、2019年3月までに変動金利型の住宅ローンを利用して現在返済中の方の半数以上が、住宅ローンを組んだ当初より金利変動のリスクを感じるようになったと答えています。

住宅ローンの固定型の金利は新発10年物国債の利回り、変動型は短期プライムレートを基準としています。2024年9月の都市銀行の住宅ローンの変動型の金利上昇はまだ見られませんが、ネット銀行ではすでに金利を上げているところもありますし、10月には変動金利を上げると発表している都市銀行もあります。そのため、将来の金利変動リスクに備え、変動から固定へ借り換えるべきか、悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

変動から固定に借り換えるべき?変動金利上昇による影響をシミュレーション!

では、3,000万円を変動金利0.40%で借り入れている方が、10年後に残りの25年間を固定金利に借り換えた場合(金利1.85%)と、変動金利のままで10年後から5年ごとに0.50%ずつ適用金利が上昇するケースで毎月返済額と支払利息総額を比較してみましょう。

毎月返済額と支払利息総額の比較

借入額3,000万円・当初変動金利0.40%・元利均等返済方式・ボーナス返済無し
  【変動金利から固定金利へ】
10年後1.85%に借り換え
【変動金利のまま】
10年後から5年ごとに0.50%ずつ上昇
  適用金利 元金 利息 合計 適用金利 元金 利息 合計
当初 0.40% 6.7万円 1.0万円 7.7万円 0.40% 6.7万円 1.0万円 7.7万円
10年後 1.85% 5.8万円 3.4万円 9.2万円 0.90% 6.5万円 1.7万円 8.2万円
15年後 1.85% 6.3万円 2.9万円 9.2万円 1.40% 6.5万円 2.1万円 8.6万円
20年後 1.85% 6.9万円 2.3万円 9.2万円 1.90% 6.7万円 2.2万円 8.9万円
25年後 1.85% 7.6万円 1.6万円 9.2万円 2.40% 7.2万円 2.0万円 9.1万円
30年後 1.85% 8.3万円 0.9万円 9.2万円 2.90% 8.0万円 1.3万円 9.2万円
完済年 1.85% 9.0万円 0.2万円 9.2万円 2.90% 9.0万円 0.3万円 9.2万円
支払利息総額 650万円 546万円

(筆者作成。イー・ローンの『住宅ローンのこだわり返済額シミュレーション』にて試算)
※四捨五入しているため毎月返済額合計は元金と利息の合計と一致しない箇所があります。

適用金利1.85%の固定金利に借り換えた場合、その後の期間は毎月返済額が約1万5千円増えます。借り換えをしない場合、このケースでは変動金利が20年後に1.90%、30年後に2.90%になります。適用金利だけ見れば変動と固定は20年後に逆転し差が開いていきますが、残高が減少している段階で影響小さく毎月返済額は30年後まで逆転しません。結果、支払利息総額も固定金利に借り換えるより少なく済んでいます。

急激に金利が上昇すれば、早めに固定金利型に借り換えておけば良かったということになりますが、現状ではまだその動きはありません。さらに借り換え時には手数料が数十万円から100万円程度かかることを含めると、変動金利が上昇しはじめたからといってすぐに借り換えを急ぐ必要はないといえるでしょう。

変動から固定への借り換えは、総合的に検討しよう

変動金利は市場金利の変化により金利を見直しますが、金利が上昇しても毎月の返済額は5年間据え置かれ、金額も1.25倍までに抑えられるという金融機関が多くなっています。変動から固定への借り換えをするべきかの判断は、今後のライフプラン、残りの返済期間やローン残高にもよります。残りの返済年数が短い場合は、元本も借り入れ当初より減っているので、金利上昇の影響はそう大きくはありません。借り換えに必要な手数料を確認し、返済額のシミュレーションをして慎重に検討しましょう。イー・ローンの『住宅ローンのこだわり返済額シミュレーション』では、金利変動のシナリオをいろいろ試すこともできます。

まだ変動金利の動きは限定的ですので、金利動向を注視しながら、変動と固定の金利差も考慮して検討すると良いでしょう。また、5年ごとに返済額の見直しがあることは意識し、返済額が増えても対応できるようにライフプランに必要な資金はきちんと貯蓄できるよう家計を見直すようにしましょう。

【参考リンク】

私が書きました

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福島 佳奈美 (ふくしま かなみ)

ファイナンシャルプランナー(CFPR)。

大学卒業後、情報システム会社で金融系SE(システムエンジニア)として勤務し、出産を機に退社。子育て中の2006年にファイナンシャルプランナー(CFPR)資格を取得する。その後、教育費や保険・家計見直しなどのセミナー講師、幅広いテーマでのマネーコラム執筆、個人相談などを中心に、独立系FPとして活動を行っている。

※執筆日:2024年09月06日