第1093回
住宅ローンの「基準金利」と「適用金利」を解説!
- マンションの購入を決めて、これから住宅ローン選びをしようと考えています。ネットで住宅ローンについて調べると、1つの金融機関で、「基準金利」、「適用金利」など、さまざまな金利が表示されています。また、「適用金利」については、年0.345%~年0.425%などと、幅を持たせている金融機関もあり、よくわかりません。それぞれの意味や内容を教えていただけませんか。(千葉県 会社員 36歳)
- 「基準金利」とは、金融機関が個々に決めて提示している「定価」のようなものです。金融機関によっては「店頭表示金利」と表現しています。「基準金利」から、顧客の信用力やキャンペーンなどに応じた「金利引き下げ幅」を差し引いたものが「適用金利」です。顧客は、住宅ローンの借り入れ時の「適用金利」に基づいて、その後の返済を行うことになります。「適用金利」とは、「定価」から値引したあとの「販売価格」に相当します。
「基準金利」は、日本銀行の金融政策や、国債の利回りなどに応じて、各金融機関が決める!
金融機関が住宅ローンで提示する「基準金利」(店頭表示金利)は、変動金利では、日本銀行の利上げ・利下げによる政策金利(短期金利)の水準などを参考に決定されます。固定金利では、日々市場で取引される国債の利回りの動向などを参考に決定されます。多くの金融機関は、「基準金利」を毎月見直し、月初に公表しますが、月の途中に変更、公表する金融機関もあります。
「基準金利」とは、商品の販売に例えると、「定価」のようなもので、個々の金融機関がそれぞれ独自に決定します。相互に顧客獲得競争をしているため、同じ金利タイプであれば、似通った水準になりがちですが、戦略的に低金利を訴求して、顧客の獲得を図ろうとする金融機関もあります。
なお、一般的に「基準金利」は、住宅ローンを借り入れる顧客に実際に適用される金利ではありません。
金融機関 | 基準金利 |
A銀行 | 年2.475% |
---|---|
B銀行 | 年2.475% |
C銀行 | 年2.475% |
D銀行 | 年2.875% |
E銀行 | 年2.280% |
F銀行 | 年2.007% |
「適用金利」は、「基準金利」から「金利引き下げ幅」を差し引いた金利
住宅ローンを借り入れる顧客に実際に適用されるのは「適用金利」です。これは、「基準金利」から、金融機関が独自に設定した「金利引き下げ幅」を差し引いた後の金利です。商品の販売に例えると、「金利引き下げ幅」は「値引き額」、「適用金利」は実際の「販売価格」に相当します。
基準金利 | 金利引き下げ幅 | 適用金利 |
年2.475% | ▲年2.00%~▲年1.750% | 年0.475%~年0.725% |
※実際の適用金利は、申込内容や審査結果等により決定
金利引き下げは、金融機関ごとにさまざまな種類があります。
金利引き下げの種類の例
- 新規借り入れ時の金利引き下げ
- 借り換え時の金利引き下げ
- キャンペーン期間中の金利引き下げ
- 住宅価格に対する自己資金の割合に応じた金利引き下げ
- 借り入れる人の信用力による金利引き下げ(審査結果等によって決定)
- 住宅ローン以外の商品
- サービスの活用による金利引き下げ
- 申込方法による金利引き下げ(Web/窓口など)
- 住宅の省エネ性能等による金利引き下げ
- 当初固定金利期間の金利引き下げ幅が大きいコース/全期間に渡って金利引き下げ幅が一定のコース
「基準金利」も「金利引き下げ幅」も、金融機関が独自に決定しています。一般的に、「基準金利」は市場金利の動向に応じて変更され、「金利引き下げ幅」は商品・営業戦略的な観点などから変更されますが、「基準金利」を変更して「金利引下げ幅」は変えない場合もあれば、「基準金利」は変えずに「金利引き下げ幅」を変更する場合もあり、金融機関によって対応はさまざまです。
金融機関サイトの住宅ローンのページには、金利タイプごとに「基準金利」、「金利引き下げ幅」、「適用金利」が表示されており、馴染みのない方は混乱してしまうかもしれません。
「適用金利」に注目すること!
住宅ローンを比較・検討して選択するときに注目すべき金利は、「適用金利」です。借り入れをする時の「適用金利」によって、その後の返済中に支払う利息の額が決まり、家計に直接影響を及ぼします。
複数の金融機関の住宅ローンを比較する時には、同じ金利タイプの「適用金利」を比べるようにしましょう。なお、金利の比較だけでなく、事務手数料や保証料などのコストにも配慮し、トータルで負担する金額を試算した上で、できるだけ有利な住宅ローンを選ぶことが大切です。
7月末に、日本銀行が金融政策決定会合において、政策金利の利上げを決定しました。この影響を受けて、今後、住宅ローンの変動金利が引き上げられる可能性があります。長期に渡って超低金利状態が続いてきたわが国も、いよいよ金利上昇局面に入ってきました。
住宅ローンの金利は、借り入れ時の「適用金利」に基づいて返済額が決まります。比較・検討時や申込時の「適用金利」ではありません。借り入れまでに数ヶ月の期間がある場合は、比較・検討をした後に変更される可能性があるため、情報を頻繁にチェックするようにしましょう。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。
教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。
※執筆日:2024年08月16日