第998回
買いたい家がハザードマップの浸水想定区域。購入時の注意点は?
- 希望するエリアに予算内で購入できそうな分譲住宅があり、購入を検討しています。ただ、自治体のハザードマップで確認すると、洪水浸水想定区域に指定されていました。購入するとしたら、どんなことに注意すればいいでしょうか? (千葉県・Sさん)
- 今や、集中豪雨や台風による洪水、浸水の被害は、日本のどこで起きてもおかしくありません。洪水や浸水の想定がどのレベルかにもよりますが、リスクをしっかり理解したうえで、購入時に加入する火災保険の水災補償を確認し、住宅ローンの借り入れについても余裕のある資金計画を立てる必要があります。
浸水想定区域とは? 不動産契約の重要事項でも確認を
農地など市街化調整区域だった場所を宅地化する動きが加速しています。周辺相場と比較し土地価格が抑えられマイホーム取得がしやすい半面、水害のリスクを抱えている場合も少なくありません。2022年4月に都市計画法が改正され、水害リスクが高いエリアについては、建築許可の基準が厳しくなっています。水害リスクが高いエリアとは、洪水などによる大きな被害が想定される場所のことで、洪水浸水想定区域に指定されています。
また、洪水浸水想定区域とは、河川の氾濫によって住宅などの建物が水につかる浸水リスクを想定した区域のことで、氾濫時の危険箇所、浸水の深さなどが示されています。最近は、集中豪雨や台風などによる水害や土砂災害が各地で発生しており、河川のそば、海のそばに限らず、都心部でも浸水被害が頻発しています。
洪水浸水想定区域は8つのランクに分けられており、浸水の深さを示しています。該当する土地や分譲住宅が、どのランクに該当するのか、事前に確認しておくことが大事です。
自治体が作成しているハザードマップには、災害時の避難場所や避難経路なども記載されているので、市町村役場(または自治体のWEBサイトなど)で入手し、浸水リスクとともに確認しておくようにしましょう。
購入の売買契約の際には、重要事項説明において、ハザードマップを用いた該当物件の所在地を明記し、買い主へ説明することが義務化されています。購入を検討中であれば、ご自身で情報を収集し、リスクのレベルを理解しておくようにしましょう。
火災保険で全額補償されるわけではない。水災補償の内容を確認する
購入に際してチェックしておくべきことは、浸水の深さを示す「浸水深」です。木造一戸建てを例にとると、0.5mまでが床下浸水、0.5mを超えて1mで1階部分の床上浸水。3mになると2階部分の床上浸水、5mで水没となります。建物の構造にもよりますが、万が一のとき、想定される浸水深に耐えうるかが、購入を判断する際の大きなポイントになるでしょう。
火災保険の加入にあたっては、水災補償の支払い条件と損害保険金の詳細を確認しておくようにしましょう。損害保険会社によって補償内容に多少の違いはありますが、おおむね床上浸水(または地盤面から45cmを超えての浸水)の場合、もしくは再調達価額(同じ建物を建てるとしたときの価格)の30%以上の損害を受けた場合となっています。浸水深が火災保険の補償金額にも関わってきますので、重要なポイントと言えます。
火災保険については建物のみの加入もできますが、浸水した場合は家財の買い換えなどが発生しますので、必ず家財も保険の対象としましょう。ただし、火災保険で補償されるのは、損害額から免責金額を差し引いた額になることに注意が必要です。免責金額は契約時に決められますが、一定の自己負担があることは理解しておきましょう。
被害を受けても住宅ローンの返済義務は残ることを想定し、余裕のある資金計画を
住宅ローンを借り入れる際、ほとんどの金融機関が火災保険への加入を義務づけています。建物や家財については火災保険で備えることができますが、住宅ローンの返済については火災保険では補償されません。
水災に限らず、自然災害に遭いマイホームに住むことができなくなった場合、生活を再建するためには相当な費用が発生します。しかしながら住宅ローンの返済義務は継続しますから、場合によっては返済の滞納という事態にもなりかねません。
こうしたリスクに備えるため、住宅ローンの中には、自然災害特約をつけられる商品があります。すべての金融機関で取り扱いがあるわけではありませんので、特約を検討するなら、住宅ローン選びも変わってくるでしょう。
自然災害特約の内容は金融機関によって異なりますが、全壊の場合は毎月の住宅ローン返済を24回免除、大規模半壊の場合は12回免除、半壊の場合は6回免除としているケースが多いようです。一部損壊の場合は補償対象外となっています。都市銀行では残高保証型として、全壊の場合はローン残高の50%相当額を免除という商品もあります。
特約をつける場合、金利にも注意が必要です。都市銀行では通常金利に年0.1%上乗せ、残高保証型は0.3%~0.5%上乗せするケースが多いようですが、金利上乗せなし(別途、事務手数料がかかる)とする金融機関もあります。
火災保険も住宅ローンの特約も全額補償とはならず、被災した場合の経済的負担はかなり重くなることを理解し、当初借入金額を抑え、万一に備えた生活再建費用を貯蓄しておくなど、余裕のある資金計画が最も重要といえます。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー。
大学卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。不動産、住宅、マネー情報誌の編集者、マーケティングプランナーを経て2003年独立。フリーランスで各種媒体のエディトリアルアドバイザーを務める。2013年沖縄移住後は、各種WEBサイトに不動産、ライフプラン、マネープランに関するコラムの執筆を中心に活動中。
※執筆日:2022年10月13日