第971回
教育訓練給付制度で働きながらの学びを実現!
- 現在の職場で手当が出る資格をとるか、あるいは転職につながる武器を身に付けたいと思っています。雇用保険から給付を受けながら学ぶ制度があると聞きましたが、どのような内容なのでしょうか?(Kさん・会社員28歳)
- 教育訓練給付制度は大きく3種類あり、給付率が異なります。さまざまな講座が対象になっているので、上手に活用してキャリア形成に活かしたいものです。
教育訓練給付金制度を上手に活用しよう
雇用保険は失業時を支える失業給付だけでなく、再就職支援なども行っています。その1つが教育訓練給付制度です。教育訓練給付制度は、社員のスキルアップやキャリア形成を支援するもので、厚生労働大臣の指定を受けた講座等を受講して修了すると、受講費用の一部が教育訓練給付金として支給されます。対象の講座は約14,000講座もあり、具体的には、教育訓練給付制度の「検索システム」で検索することができます。
教育訓練給付制度は、社員だけでなく、派遣社員やパート、アルバイトであっても、一定条件に該当すれば利用することができます。その条件は下記の通りです。
教育訓練給付金制度の対象者
現在在職中か、離職して1年以内(妊娠、出産、育児、疾病、負傷などで適用対象期間の延長を行った場合は20年以内)で、初回の受講なら雇用保険の加入期間が1年以上(専門実践教育訓練は2年以上)、2回目以降なら前回の受講開始日以降、加入期間が3年以上。
教育訓練は3種類あります。労働者の中長期的キャリア形成に役立つ講座が対象の「専門実践教育訓練」、速やかな再就職や早期のキャリア形成に役立つ「特定一般教育訓練」、雇用の安定・就職の促進に役立つ「一般教育訓練」です。概要は下表のとおりです。
種類 | 給付率 | 対象講座の例 |
---|---|---|
一般教育訓練 | 受講費用の20% [上限10万円] |
資格の取得を目標とする講座 ・英語検定、簿記検定、ITパスポートなど 大学院などの課程 ・修士・博士の学位などの取得を目標とする課程 |
特定一般教育訓練 | 受講費用の40% [上限20万円] |
業務独占資格などの取得を目標とする講座 ・介護職員初任者研修、大型自動車第一種・第二種免許、税理士など デジタル関係の講座 ・ITSSレベル2以上のIT関係資格取得講座 など |
専門実践教育訓練 | 最大で受講費用の70% [年間上限56万円・最長4年] |
業務独占資格などの取得を目標とする講座 ・介護福祉士、社会福祉士、看護師、美容師、保育士、調理師など デジタル関係の講座 ・ITSSレベル3以上のIT関係資格取得講座 ・第四次産業革命スキル習得講座(経済産業大臣認定) 大学院・大学などの課程 ・専門職大学院の課程(MBA、法科大学院、教職大学院など) ・職業実践力育成プログラム(文部科学大臣認定)など 専門学校の課程 ・職業実践専門課程(文部科学大臣認定) ・キャリア形成促進プログラム(文部科学大臣認定) |
(厚生労働省「教育訓練給付制度」より)
特定一般教育訓練や一般教育訓練は講座修了後に支給されます。専門実践教育訓練については、受講費用の50%(年上限40万円)が受講中6か月ごとに支給され、資格取得等をして修了後1年以内に雇用された場合は、さらに20%(年上限16万円)が追加で支給されます。
自己負担があることを忘れずに!
教育訓練給付制度の対象となる講座も英検や簿記、看護師、保育士などから大学院までとかなり多岐にわたり、内容によって受講費用の20~70%が給付されるため、スキルアップや資格取得に大いに役立ちそうです。
しかし、制度を利用するには自己負担がそれなりにあることと、原則修了後の給付であることも忘れてはいけません。本来であれば、計画的に貯蓄をしてスタートすべきですが、何かの事情でそれが間に合わなかった場合や、給付金を受け取るまでの立て替え分として、社会人でも自分のために教育ローンを利用する方法もあります。
公的なものとして「国の教育ローン」があります。安定収入があり、所得制限(給与所得790万円、事業所得600万円)を超えなければ、本人が借りることもできます。専門学校や大学・大学院に通学する場合は、日本学生支援機構の貸与型奨学金を利用することも可能です。また、民間金融機関の教育ローンも、安定収入があれば、社会人本人が学ぶ際に利用することができます。民間の教育ローンの場合、手続きがスピーディで審査なども短時間で済むのがメリットです。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー、シニアリスクコンサルタント。
20代前半より経営誌や経済誌、女性誌と広く手がけるライターとして個人事業を展開。1995年より独立系FPとして、雑誌やムック、新聞、サイトへの寄稿・監修、相談業務、講師などで活躍。「今日からの お金持ちレシピ」(明日香出版)をはじめ共著本など多数。
※執筆日:2022年04月07日