第966回
存在感増す「総合型選抜(AO入試)」。制度を理解し早めに検討を
- 親世代の頃とは様変わりしていて、大学入試制度がよくわかりません。推薦入試は私立大学のイメージでしたが、「11月に国立大への進学が決まった先輩がいる」と高校生の娘が言っていました。どんな入試制度なのでしょうか。(福岡県 Kさん)
- 総合型選抜(旧AO入試)は、9月から出願が始まり、10月~11月に合否が決まる大学・学部もあります。
私立では8割以上が実施、国立大でも導入が進む総合型選抜
親世代の頃と同様、大学の募集人員が最も多いのは年明けからの「一般入試」ですが、9月に出願が始まる「総合型選抜(旧AO入試)」や、「学校推薦型選抜(旧推薦入試)」を入試方法に導入している大学が増えています。
文部科学省「令和2年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」によると、私立大学ではAO入試は86%の大学で、推薦入試は98.3%の大学で導入されており、合わせて入学者数の半数以上を占めています。一方国立大学の場合も、AO入試は73.2%の大学で、推薦入試は92.7%の大学で導入されていますが、入学者数はAO入試4.2%、推薦入試12.4%にとどまります。ただし、国立大学の募集人員数は、総合型選抜の割合がだんだん増えてきています。
国立大学の募集人員の割合の推移(単位:%)
(文部科学省「令和4年度国公立大学入学者選抜の概要」より。グラフは筆者作成)
高校の推薦不要の「総合型選抜」
では、募集人員の割合がだんだん増えている「総合型選抜」とはどんな制度なのでしょうか。
総合型選抜は2021年度入試からの名称で、それ以前はAO(アドミッション・オフィス)入試と言われていました(AO入試の名称を使い続けている大学もあります)。大学・短大・学部・専門学校が定める「求める学生像(アドミッション・ポリシー)」に合った人物を採用することを重視した入試方法です。アドミッション・ポリシーは、各大学のホームページ等に掲載されているので、早めに確認しておきたいですね。
「詳細な書類審査と時間をかけた丁寧な面接等を組み合わせることによって、入学志願者の能力・適性や学習に対する意欲、目的意識等を総合的に評価・判定する入試方法(文部科学省:令和4年度入学者選抜について)」で、高校による推薦は基本的に不要。選考方法は、小論文、プレゼンテーション、資格・検定試験の成績、大学入学共通テストを課すなど、大学によって異なります。
選考期間は9月~11月くらいまで。大学入学共通テストを課す場合は2月頃合否が決まります。
一方、学校推薦型選抜は「出身高等学校長の推薦に基づき、調査書を主な資料として評価・判定する入試方法(文部科学省:令和4年度入学者選抜について)」で、「公募制」と「指定校制」の2つがあります。多くの場合、出願条件として評定平均値が定められており、高校での学習状況や課外活動などが評価されることになります。小論文や面接、共通テストが課される場合もあります。
選考期間は9月~12月くらいまで。大学入学共通テストを課す場合は2月頃合否が決まります。
総合型選抜等で受験するなら、教育資金も早めに準備
総合型選抜等は受験の選択肢を増やしますが、入学手続きの締め切りが一般入試に比べて数か月前倒しになると考えられ、早めの学資金準備が必要になるので注意が必要です。子ども保険等で準備していたとしても、満期時期が入学手続きの締め切り日に間に合わなければ利用できません。間に合わないとわかったら、利用しやすい教育ローンをあらかじめチェックして備えておくことも必要になるでしょう。
お子様の進路や受験方法の選択を応援しつつ、資金面でのバックアップ体制も整えていけるといいですね。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。
大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。
※執筆日:2022年03月09日