第928回
大学進学を見据えた中高選びと私立進学時の教育ローンの適切な使い方とは
- 子どもが小学校4年生になり、中学受験をするための進学塾に通う友達も周囲にいるようです。子どもの将来を考えると中高一貫校に進学させるのも良いかと思いますが、お金の面も含めてどのように判断すればよいでしょうか。(Fさん 43歳 会社員 男性)
- 公立の中学に進学すると高校受験、その後は付属高校でない限り大学受験もあります。中高一貫校だと高校受験をすることなく6年間は同じ環境で教育を受けられるというメリットがあるでしょう。金銭面で進学可能かも含め、よく検討してみましょう。
中高一貫校から大学に進学する場合はどんなパターンがあるか
中高一貫校には、大きくわけて公立と私立がありますが、共通のメリットとしては高校受験が無いということが挙げられます。公立の中学に進学したら、すぐに高校受験に対応していかなければなりません。中高一貫校なら高校受験をあまり気にすることなく、部活動や学校行事を通じて友情を深めることもできると思います。
また、6年間の継続したカリキュラムで大学受験に臨めるというのもメリットでしょう。難関大学への合格実績に中高一貫校が名を連ねている記事を目にしたこともあるでしょう。
私立の大学付属校だと大学への内部進学が可能であることも魅力です。内部進学できるか、また希望の学部に行けるかどうかは成績次第なので気は抜けませんが、大学の一般受験をしなくても進学できる可能性があることから、有名私立大学の付属校が人気を集めています。この場合、大学受験費用が要らなくなるのもメリットでしょう。
公立の中高一貫校なら、学費は公立の中学、高校に進学する場合とあまり変わらず質の高い教育を受けられるのも魅力的です。
進学先によって教育費はどのくらい違う?
私立への進学の場合、考慮しておきたいのは学費です。文部科学省が行った「平成30年度子供の学習費調査」を見てみましょう。
中学校 | 高校 | |||
---|---|---|---|---|
公立 | 私立 | 公立 | 私立 | |
学校教育費 | 13.9 | 107.1 | 28.0 | 71.9 |
学校給食費 | 4.3 | 0.4 | - | - |
学校外活動費 | 30.6 | 33.1 | 17.7 | 25.1 |
学習費総額 | 48.8 | 140.6 | 45.7 | 97.0 |
(出典:「平成30年度子供の学習費調査」文部科学省)
この調査結果によりますと、中高6年間にかかる教育費の合計は、中高とも公立なら約284万円、私立なら約713万円です。私立は公立の約2.5倍かかることになります。
但し、調査結果はあくまでも平均値です。中学受験をした場合の行きたい学校の学費その後の受験の有無、地域の塾の相場などで具体的な費用をシミュレーションしてみましょう。首都圏での中学受験塾にかかる費用は、トータルで約200万円と言われています。公立中学へ進学した場合は、高校受験や付属高校でない限り大学受験の費用や負担があることと比較検討すると良いでしょう。
私立への進学を考えるなら教育ローンも視野に入れる
私立中高にかかる費用は大きいものですが、基本的には毎月の家計の範囲内で負担できるかどうかを判断しましょう。同時に大学進学資金も準備する必要があります。
現在の家計でこのような教育費を捻出することが難しいなら、家計を徹底的に見直し、共働きにしたり、働き方を見直したりして収入を増やすことも検討してみましょう。
なお、一定の年収より少ない場合は、高校からは国の制度である「就学支援金制度」を利用して負担を減らせるかもしれません。都道府県によって利用できる条件が多少異なりますので、よく調べてみると良いでしょう。但し、今後制度が変わる可能性もありますので注意は必要です。
できる限り私立へ行かせたいが資金が不足するという場合、教育ローンの利用を検討してみても良いでしょう。中学から学費のほとんどを教育ローンで、というのは今後の生活にも影響があるので控えた方がいいと思われますが、一部を教育ローンで資金調達し、子どもの可能性を広げるという選択肢もあります。
また、入学時のまとまった資金が必要な時や、修学旅行や教材費などの費用が一時的に不足する時に、つなぎ資金としてカードローンタイプの教育ローンを利用するという対応方法もあります。カードローンタイプであれば、まとまった金額が手元に入ってきた時に都度返済が可能です。
教育ローンは、使途が教育関連費用に限定されていますので、一般的なフリーローンやカードローンより金利は低めです。とはいえ、借入額が膨らむと返済が難しくなる可能性があります。住宅ローンや自動車ローンなど他の負債もあれば、それらも含めた返済計画を立てて私立への進学が可能かどうかを判断しましょう。大学からは奨学金を利用するという選択肢もあります。長期的なマネープランをきちんと立てて中学受験をするかどうかを考えてみてはいかがでしょうか。
私が書きました
ファイナンシャルプランナー(CFPR)。
大学卒業後、情報システム会社で金融系SE(システムエンジニア)として勤務し、出産を機に退社。子育て中の2006年にファイナンシャルプランナー(CFPR)資格を取得する。その後、教育費や保険・家計見直しなどのセミナー講師、幅広いテーマでのマネーコラム執筆、個人相談などを中心に、独立系FPとして活動を行っている。
※執筆日:2021年06月08日