第911回
就職難で急な大学院進学。教育費はどれくらいかかる?資金はどうする?
- 息子は現在、私大経済学部3年ですが、コロナ禍による就職難を避けるため、大学院進学を考えていると相談されました。大学院に進学した場合、教育費はどれくらいかかるでしょう。また、想定外だったので資金の準備がないのですが、どのような調達方法があるでしょう。(Kさん 47歳 会社員)
- 大学院でかかる費用を親子で確認し、奨学金や教育ローンなどで教育費をまかなう手段を知っておきましょう。子供にも負担してもらうよう話し合うことも大事です。
大学院進学でいくらかかる?
まずは、大学院進学に伴う費用を見ておきましょう。大学院は、修士課程(博士前期課程)2年、博士課程後期3年が一般的な期間です。
Kさんの息子さんが大学院で学ぶことになったとして、それが修士課程であれば大学を卒業後、2年分の学費がかかることになります。下表は初年度の費用の目安ですが、2年分だと、私立で187.6万円、国立で135.4万円です。私立大学院については、大学や学部によって費用が大きく異なるので、実際に通う可能性がある大学院の学費を調べることが先決といえそうです。
また、これはあくまでも学校納入金だけで、現実にはこれ以外にも通学費用やテキスト代、生活費などがかかります。特に、自宅外通学の場合は、生活費の負担が大きくなります。
課程 | 入学料 | 授業料 | 施設設備費 | 初年度合計 | |
---|---|---|---|---|---|
私立 | 修士課程(博士前期課程) | 207,292 | 759,865 | 74,299 | 1,041,456 |
専門職学位課程 | 191,373 | 1,128,819 | 66,522 | 1,386,715 | |
国立 | 大学院研究科 | 282,000 | 535,800 | 817,800 | |
法科大学院 | 282,000 | 804,000 | 1,086,000 |
私立:文部科学省「私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
国立:「大学等の授業料その他の費用に関する省令」に定める標準額
学費・生活費は誰が負担する?
「大学院への進学が想定外で教育費の準備ができていない」とのことですが、大学院進学を親としてどこまでサポートするのかも話し合う必要があります。
学費についても、親がすべて負担するとは限りません。
- 親がすべて負担する
- 親子で協力し合う
- 子供自身が自分でどうにかする
この3つのうち、どの方法をとるのかはご家庭次第です。無理をしすぎると、親自身の老後資金に影響が出る可能性もあるので、しっかり話し合うことも大事でしょう。
学費は4つの組合せで捻出を
大学院進学の費用をまかなう方法としては、基本的に大学時代と同じで、次の4つのいずれか、ないしは組み合わせて準備をするといいでしょう。
1. 親の家計から捻出する
教育費に回しても問題のない貯蓄があればそれを充てるほか、毎月の支出を削って学費に回せる分を生み出す方法です。これがどれくらい可能かによって、不足する分がわかります。他の手段を検討する前に、まずは家計を点検してみるといいでしょう。
2. 本人のアルバイトなど
学業や研究に支障のない範囲で、学生自身がアルバイトなどで生活費の一部をまかなうことも大事です。どれくらいなら無理なく収入が得られそうか、確実な範囲で考えてみましょう。
3. 奨学金を利用する
奨学金には給付型と貸与型があります。大学院の場合、日本学生支援機構の「貸与型」を利用できます。第一種奨学金の貸与を受けた学生で、貸与期間中に特に優れた業績を挙げた者として日本学生支援機構が認定した人は、奨学金の全額または半額を返還免除される制度もあります。他にも、大学や自治体、企業、奨学金団体などが独自の奨学金(給付型・貸与型)を行っていることもあるので、年収などの条件や採用人数などを進学予定の大学院で確認しておくといいでしょう。
大学によっては、大学院生でも、新型コロナウィルス感染症の影響により家計が急変した学生を対象に、授業料減免を行っているところもあります。該当する状況になったときは利用するといいでしょう。また、家計急変の時は時期を問わず奨学金を申請することも可能です。
4. 教育ローンを利用する
入学年度の初回納入金など、奨学金では間に合わない場合もあります。また、年収制限などで奨学金が利用できないケースもあるでしょう。その場合は教育ローンが候補になります(公的な「国の教育ローン」は所得制限があります)。
民間の教育ローンは、審査が早く、比較的スピーディに借りられるのが大きな特徴です。有担保・無担保とあり、金利タイプも変動金利か固定金利か選択できます。春先になるとキャンペーンで金利優遇を行うこともあるので、検索機能を使って条件に合う中で有利な商品を選択するといいでしょう。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー、シニアリスクコンサルタント。
20代前半より経営誌や経済誌、女性誌と広く手がけるライターとして個人事業を展開。1995年より独立系FPとして、雑誌やムック、新聞、サイトへの寄稿・監修、相談業務、講師などで活躍。「今日からの お金持ちレシピ」(明日香出版)をはじめ共著本など多数。
※執筆日:2021年02月08日