第859回
「元金据置期間」を設定して教育ローンを借りた場合の将来負担はどうなる?
- 今春、長男が大学に入学する予定です。 資金が不足しそうなので、教育ローンの活用を考えています。 教育ローンの中には、元金の返済を据え置いて、一定期間利息の支払いだけにすることができるものがあるようですが、最初から元金と利息を一緒に返済する方法と比べて負担はどのくらい違うのでしょうか?(東京都 会社員 男性 52歳)
- 子供の大学進学に向けて資金が不足するようなら、教育ローンを活用するのが一般的な方法といえるでしょう。 ローンの返済は、返済当初から通常は元金と利息を一緒に支払いますが、教育ローンの中には、学費等の負担が大きい在学中などの一定期間は元金返済を据え置いて、利息の支払いだけですませる方法を選べるものもあります。 ただし、据え置く期間は元金が減らないため、最初から元金と利息を一緒に返済する方法よりも最終的な負担額が増えることに注意が必要です。
教育ローンの中には、「元金据置期間」を設定できるものもある!
教育ローンは、大学や大学院、短大、専門学校、高校などの入学金、授業料、施設設備費、受験料、通学費用、パソコン購入費用、アパート・マンションの敷金や家賃、海外留学資金など、教育資金の借り入れを目的としたローンで、国をはじめ、多くの民間の金融機関が取り扱っています。
一般的な返済の方法は、返済当初から毎月の元金と利息を一緒に支払う元利均等返済で、ボーナスからの返済もできるようになっています。 最長の返済期間は金融機関によって異なるものの、多くは10年から20年程度に設定されています。
そして、教育ローンの中には、一定期間は元金の返済を据え置いて利息の支払いだけですむ方法を選択できるものもあります。 というのも、子供が大学や大学院などに在学している間は、ローン返済以外の出費もかさみ、家計への負担が重くなる傾向があるからです。 元金の返済を据え置いて、利息のみの返済にすることができれば、その間は、返済負担を軽減することができます。
なお、元金を据え置ける期間は、金融機関が決める最長据置期間内で設定できるようになっています。
元金を据え置くとトータルの負担額は増える!
元金据置期間を設定する場合、その期間中は利息の支払いだけですむため、家計への負担は軽減されますが、最終的なトータルの負担額は、元金据置期間を設定しない場合よりも多くなります。
事例でみてみましょう。
借り入れ条件
・借入額:200万円・返済期間:12年
・金利:2.3%(固定)
・返済方式:元利均等返済方式、毎月返済のみ(ボーナス返済なし)
・諸経費は除く
元金据置期間の 設定をしない場合 |
元金据置期間を4年 (在学期間)に設定した場合 |
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在学期間中の 毎月の返済額 |
15,906円 | 3,833円 |
卒業・終了後の 毎月の返済額 |
22,828円 | |
総返済額 | 2,290,464円 | 2,375,472円 |
上の例でみると、元金据置期間を設定した場合、据置期間の毎月の支払額は3,833円です。 据置期間を設定しない場合の15,906円より約12,000円少なく、家計への負担は軽いでしょう。 しかし、据置期間終了後の毎月の返済額は22,828円となり、据置期間を設定しない場合より約7,000円多くなり、負担が重くなります。 総返済額を比較すると、元金据置期間を設定したほうが約85,000円多くなります。
したがって、元金据置期間を設定する場合には、据置期間中に支払う利息額だけに目を奪われることなく、あらかじめ据置期間終了後の毎月の返済額がいくらになるかもシミュレーションし、あとで負担が重くなっても確実に返済できる見込みをつけておく必要があります。
複数の金融機関の教育ローンの条件を比較・検討して選択することがポイント
元金据置期間を設定する場合でも、教育ローンの金利タイプや適用金利、返済期間、諸費用などによっては、トータルの負担を軽減することができます。 金融機関によっては、一定期間の申し込みに限定して、金利の引き下げキャンペーンを実施しているところもあるため、うまく活用すれば有利に借り入れをすることができます。
複数の金融機関の教育ローンを比較・検討して、できるだけトータルの返済負担を軽減できそうな商品を選ぶことがポイントです。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。
教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。
※執筆日:2020年01月29日