第854回

大学入試共通テストは、結局どうなった? 情報チェックと教育資金の準備を

大学入試共通テストの記述式が延期になったようですが、これまでのセンター試験と何が変わるのでしょうか? 志望校もそれに合わせて変えないといけないのでしょうか?(大阪府 Fさん)
英語民間試験に続き、国語、数学の記述式についても、延期が決まりましたが、2021年に、センター試験から共通テストへ移行することに変わりはありません。共通テストになることで、出題される試験の質が変わりますので、十分に情報チェックするようにしてください。

採点の公平性、自己採点との乖離などを理由に、記述式の導入を見送る

2020年1月の大学入試センター試験を最後に、2021年からは大学入試共通テスト(以下、共通テスト)に移行し、それに伴って、英語は民間事業者による試験の導入、マークシート問題に加え、国語・数学の記述式問題が加わるなど、試験方法や内容が大幅に変更されることになっていました。

しかし、英語民間試験に関わる批判を皮切りに、記述式問題の採点の公平性、自己採点との乖離、短期間での採点の実現性などが疑問視されるに至り、英語民間試験、国語・数学の記述式は、2024年まで延期する事態となりました。

新たな共通テスト対策をしてきた受験生はもちろんのこと、保護者、学校職員にとって、これまでの苦労はなんだったのか、との思いにかられていることでしょう。 ただ、不安視されたまま見切り発車されるよりは、気持ちを切り替えて、対策を講じていくことが、何よりも大切です。

記述式が延期でも、センター試験とは異なる出題傾向になる

英語民間試験、国語・数学の記述問題の導入は見送られたものの、共通テストになること自体に変更はありません。では、センター試験と共通テストでは何が変わるのでしょうか?

最も影響を受けるのは、英語だと思われます。英語の4技能の「聞く」「読む」「話す」「書く」のうち、「話す」「書く」については、民間試験によって行われることになっていました。 しかし、導入が延期になったため、「読む」「聞く」の2技能のみ共通テストで測ることとなったわけです。 そのため、英語の配点が変わることが予想され、これまで以上に「聞く=リスニング」問題の配点比重が高くなると言われています。

このほか、英語の設問はすべて英語になる、国語の出題文の範囲が大幅に変わる、数学は読解力、国語力が問われる出題の可能性があるなど、これまでのセンター試験とは出題傾向が変わるのは、大方の見方となっています。 マークシートの方式も変更されるとの話も出てきています。

今後、全体像がわかるまでに、紆余曲折があるかもしれませんが、随時、情報をキャッチアップしていく必要があるでしょう。

試験制度の変更で志望校が変わることも想定した資金準備を

そもそも、英語の民間試験導入にあたっては、検定費用や検定を受ける場所までの交通宿泊費の問題がありました。 保護者は大学の入学金、授業料のみならず、その前にかかる受験費用も考えなくてはなりませんでした。

まだお子さんが小さい家庭は、時間をかけて高校・大学にかかる費用を貯める時間があるので、こうした事態に備えて、今から余裕をもった教育費の準備をするようにしましょう。 一方、大学受験が目前に迫っている家庭の場合、受験制度の変更によって、国公立から私立に絞るなど志望校を変えざるをえない事態もあるでしょう。

資金的に余裕がなければ、教育ローンの利用を考えることになります。教育ローンは、国の教育ローン(日本政策金融公庫)と民間の教育ローンがあり、民間の教育ローンは、多くの金融機関が扱っています。

借入限度額(国の教育ローンは上限350万円、民間ローンは上限1000万円程度が最近は多い)や金利、返済期間など条件が異なりますので、資金的な不安がある場合は、シミュレーションなどを利用し、早めに比較検討して、いくらなら無理なく返済していけるのかを考えておくようにしましょう。

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私が書きました

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伊藤 加奈子 (いとう かなこ)

ファイナンシャル・プランナー。

大学卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。不動産、住宅、マネー情報誌の編集者、マーケティングプランナーを経て2003年独立。フリーランスで各種媒体のエディトリアルアドバイザーを務める。2013年沖縄移住後は、各種WEBサイトに不動産、ライフプラン、マネープランに関するコラムの執筆を中心に活動中。

※執筆日:2019年12月24日