第841回
消費税増税後の住宅取得にメリットが出る支援策等の期限をチェック!
- これから3年以内を目途に住宅の取得を考えています。 消費税率が10%になると、減税策や支援策があるために、メリットが出るという話も聞いています。 それらを活用して、できるだけ有利にマイホームを取得したいと考えています。 そのため、しばらくは自己資金を充実させるために貯蓄に励もうと思っているのですが、よろしいでしょうか。(会社員 35歳 男性)
- 確かに、2019年10月からの消費税増税に伴う消費の落ち込みを防ぐために、住宅取得に関するものだけでも複数の減税策や支援策が政府によって打ち出されています。 今後住宅の取得をするのであれば、これらを使わない手はありません。 ただ、そのためには、減税や支援が受けられる期限等の条件をあらかじめ確認しておく必要があります。 場合によっては、自己資金を貯める時間的な余裕はあまりありません。
消費税率10%で住宅を取得するときの減税策、支援策等は4つ
2019年10月1日から消費税率が10%にアップします。 政府は、増税によって消費が落ち込み、景気が後退するのを避けるために、さまざまな施策を用意しています。 「人生で最大の買い物」と言われる住宅についても、複数の減税策や支援策によって、増税に伴う負担の軽減を図ろうとしています。
住宅取得に関わる主な減税策、支援策等は4つあります。
支援策等 | 概要 |
---|---|
住宅ローン減税 | 控除期間が3年延長(建物購入価格の消費税2%分の減税(最大)) |
すまい給付金 | 給付額が最大50万円に(収入に応じて10万円~40万円の増額)・対象者も拡充 |
次世代住宅ポイント制度の創設 | 新築最大35万円相当、リフォーム最大30万円相当(条件により加算あり)のポイントを付与 |
住宅取得等のための資金の贈与税非課税措置 | 贈与税非課税枠が最大3,000万円に拡大(現行は最大1,200万円) |
これらの制度の適用を受けるには、それぞれの制度に定められている人の条件、住宅の条件などの細かい条件を満たす必要があります。 なかでも、これらは景気の後退を避けるための一時的な措置であるため、制度の期限をあらかじめ確認し、減税策、支援策等のメリットを確実に享受できるように住宅取得のスケジュールを組む賢さが求められます。
住宅ローン減税の3年延長は、2020年12月31日までの入居が必要!
住宅ローン減税制度は、住宅ローンを活用して住宅の取得・増改築等をした場合に、年末の住宅ローン残高の1%相当額を所得税(一部、翌年の住民税)から10年間控除する仕組みで、2021年12月31日までに引き渡されて入居が完了した場合に、減税の適用を受けることができます。
ただ、消費税率10%の住宅の取得等をした場合で、2019年10月1日から2020年12月31日までの間に引き渡されて入居をした場合は、控除期間が3年間延長され13年になります。 延長される3年間は最大で建物価格の消費税率2%分の減税を受けることができます。 入居が2021年1月以降にずれ込む場合は、控除期間が10年に戻ってしまいます。 3年延長の減税メリットを確実に受けるためには、2020年の年末までに入居できるように住宅を取得しなければなりません。
すまい給付金は、2021年12月31日までの入居が必要!
すまい給付金は、消費税率10%の住宅を取得し、2021年12月31日までに引き渡されて入居が完了した場合に、住宅を取得した人の収入と不動産登記上の持分割合によって、最大50万円の給付金を受け取ることができる制度です。 消費税率8%のときよりも給付額が増額されます。
次世代住宅ポイント制度は契約や引き渡しの時期、ポイント発行申請期間等を意識する必要あり!
次世代住宅ポイントは、消費税率10%で一定のエコ住宅や長持ち住宅、耐震住宅、バリアフリー住宅などの新築住宅の取得をした場合に最大35万円相当、一定の断熱改修や耐震改修、バリアフリー改修などのリフォームを行った場合に最大30万円相当のポイントを受け取ることができる制度で、今回新設されました。 なお、リフォームの場合は「若者世帯あるいは子育て世帯」等の要件によりポイントの加算が可能です。 受け取ったポイントは、さまざま商品等に交換することができます。
対象とする住宅の契約等の期間は、以下の通りです。
契約 | 引き渡し | |
---|---|---|
注文住宅(持ち家)・ リフォーム |
・2019年4月から2020年3月までに請負契約・着工をしたもの(※) | ・2019年10月以降に引き渡しをしたもの |
分譲住宅 | ・2018年12月21日から2020年3月までに請負契約・着工し、かつ売買契約を締結したもの ・2018年12月20日までに完成済みの新築住宅であって、2018年12月21日から2019年12月20日までに売買契約を締結したもの |
(※)2018年12月21日から2019年3月までに請負契約をしたものであっても、着工が2019年10月から2020年3月のものは特例的に対象となる
なお、ポイント発行申請期間は2020年3月31日まで、商品交換申込期間は2019年10月1日から2020年6月30日までとなっています。 ただし、この制度には予算枠が設けられているため、予算の執行状況によっては、ポイント発行申請期限が、予定よりも早くなる可能性があることに注意が必要です。
住宅取得等のための資金の贈与税非課税措置は、契約時期、贈与時期、入居時期に注意!
住宅取得等のための資金の贈与税非課税措置は、実の父母や祖父母から住宅の取得やリフォーム等のための資金の贈与を受けた場合に、一定額までは贈与税が非課税になる制度です。 消費税率が10%にアップするのに伴って、非課税枠が拡大されます。
非課税限度額は以下の通りで、住宅の建築請負契約や売買契約等の時期によって異なります。
契約年 | 質の高い住宅(※) | 一般住宅 |
---|---|---|
2019年4月~2020年3月 | 3,000万円 | 2,500万円 |
2020年4月~2021年3月 | 1,500万円 | 1,000万円 |
2021年4月~2021年12月 | 1,200万円 | 700万円 |
※「質の高い住宅」の基準は、以下のいずれかの基準に適合する住宅
1.断熱等性能等級4又は一次エネルギー消費量等級4以上の住宅
2.耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上又は免震建築物の住宅
3.高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上の住宅
また、贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、贈与された資金の全額を充てて住宅の取得や増改築等を行い、かつ、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること、あるいは、同日後遅延なくその家屋に居住することが確実であると見込まれることも条件になっています。
つまり、この制度は、契約時期、贈与時期、入居時期によって、非課税限度額や適用の可否が決まるため、あらかじめそれぞれの時期を検討し、予定を立てておく必要があります。
以上、消費税率10%で住宅を取得するときの主な減税策、支援策等の概要を示しました。 制度ごとに期限が異なっていることに注意をする必要があります。 また、制度ごとにその他の適用条件も詳細に定められています。 そのため、自分にはどの制度が使えるか、あるいは、どの制度を使いたいかということを事前に確認しておくことが、メリットをうまく享受するポイントになります。
現在の「低金利」で住宅ローンを組むことも、メリットになる!
世界経済の減速懸念などもあって、市場金利は相変わらず低い水準で推移しています。 そのため、住宅ローンも低金利の状況が続いています。
消費税の増税を機に政府が打ち出している減税策、支援策を活用することも住宅を取得する人のメリットになりますが、現在のような低金利で住宅ローンを借りられることもメリットと考えることができます。 自己資金を充実させるために貯蓄に励んでいる間に、金利が上昇に転じないとも限らないことを思うと、早めの住宅取得を考えてもよいかもしれません。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。
教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。
※執筆日:2019年09月24日