第834回
転職でキャリアアップ!転職前後に気をつけたいこと
- キャリアアップのため、転職を考えています。 家族がありローン返済中でもあるため、収入が途絶えるのは困るので、仕事を続けながら就職活動をするつもりです。 転職の際に気をつけることを教えてください。(神奈川県 K)
- 転職によって自分だけでなく家族の生活も影響を受けることも考えて、転職に求める条件を考えましょう。 退職・再就職の際には、雇用保険や健康保険などの手続きが必要になります。
「転職」の、家族の生活への影響は
ご相談者は、「キャリアアップのための転職」にどんな条件を考えておられるでしょうか? 仕事内容、収入、やりがい、職場環境、勤務時間等、さまざまに考えられていると思いますが、条件を考える際には、自分と家族の生活への影響も検討しておきましょう。 勤務地が変わって引越をすれば、子どもの転校が必要になったり、配偶者が仕事を続けられなくなったりするかもしれません。 収入が一時的にでも減れば、子どもの進学資金が不足して進路変更することになる可能性もあります。
今後のあなたとご家族のライフプランを考え、話し合った上で転職の条件を考えてきましょう。
転職先探しは、仕事を続けながら?辞めてから?
また、ご相談者は仕事を続けながら就職活動をする予定とのことですね。 在職中の就職活動は時間が取れずに大変かもしれませんが、収入が途絶えることはないので、経済的な家族の不安は少ないでしょう。
一方、いったん退職してからの就職活動となると、十分な時間をかけて就職活動ができ資格取得の勉強などもできるのは大きなメリットですが、無収入の期間が発生します。 無収入の間の生活費をまかなう預貯金等が十分になければ、十分な就職活動を行う経済的・時間的余裕がなくなり、かえって焦って再就職先を決める場合もありそうです。 「失業保険があるから大丈夫」と思われるかもしれませんが、自己都合で退職した場合には、給付制限※があり、退職後すぐに失業保険(基本手当)は受給できません。 また、基本手当が受けられる期間には限度もあります。 「いったん退職してから就職活動を」という考えが浮かんだら、失業保険の内容や条件についてもよく調べておきましょう。 たとえば、基本手当は在職期間が10年か、9年11カ月なのかで受給できる期間が違う(表1)ので、退職の時期を決める要素のひとつにもなるでしょう。
※待期期間と給付制限・・・雇用保険の基本手当を受ける場合には、受給理由を問わず7日間の「待期期間」がある。さらに、正当な理由のない自己都合による離職等の場合は3か月間の給付制限を受ける。
被保険者であった期間 | ||
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1年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
90日 | 120日 | 150日 |
退職後すぐに就職するなら、社会保険等の手続は再就職先で
企業に勤めている場合には、職場を通して労災保険や雇用保険や、健康保険、年金保険などの社会保険に加入しており、給与からは所得税や住民税が差し引かれています。 したがって、転職する際には、社会保険や税金に関する手続きも必要になります。
退職後すぐに再就職する場合には、入社後、総務などの担当部署に、前勤務先で受取ってきた源泉徴収票や年金手帳、雇用保険の被保険者証などを提出すれば手続きしてもらえます。
いったん退職してから再就職する場合には、「個人」として税金を納め社会保険に加入する手続きを自分で行うことになります。 給与天引きだった住民税を自分で払う(普通徴収)ように変更し、国民年金への加入、健康保険の選択(入っていた健康保険の任意継続被保険者となる・家族の健康保険の被扶養者となる・国民健康保険に加入する)、雇用保険の失業給付(基本手当)の受給などの手続きを行います。 再就職先が決まったら、勤務先で「会社員」として税金を払い社会保険に加入する手続きをしてもらうことになります。
転職後の住宅ローンの「借り換え」は不利になる可能性が
住宅ローンについては、規約で勤務先のような「届出事項」に変更があった場合には届け出ることになっています。 転職したからというだけで、ローン返済について不利益はありませんが、転職によって収入が減少したりしてローン返済が難しくなるようなら、 返済期間の延長や毎月返済額の減額等の返済方法の変更を、早めに借入先金融機関に相談したほうがよいでしょう。
住宅ローンについて「借り換え」を考えているならば、転職が不利に働く場合もあるでしょう。 「借り換え」は、より低金利のローンを新たに借りて従前のローンを一括返済することでローンの返済負担を減らす方法です。 つまり、「新たに借りる」ことになるため、審査項目として「勤続年数」や「前年度の年収」をチェックされることになります。 審査項目や基準は金融機関によってさまざまですが、着実に返済を続けられるかどうかを判断する金融機関側からみれば、安定した企業に長く勤務しているほうが転職直後よりは有利でしょう。 また、通常会社員の方が住宅ローンを申込んだ場合に必要な「収入を証明する書類」は、源泉徴収票や住民税決定通知書・住民税課税証明書などですが、 転職直後の場合には、採用通知書や雇用契約書などの見込み年収がわかる書類や、転職後1年未満の場合は給与・賞与の明細のコピー等の追加書類が求められる場合があります。 借り換えは、転職して数年経ってから考えたほうが無理はないでしょう。
「転職」は仕事の面で大きく飛躍するチャンスにもなりますが、あなたと家族のこれからの生活を変化させます。 転職による影響も確認しながら、キャリアアップができる転職に向けて、準備を進めてください。