第757回
2018年から変わる。配偶者控除・配偶者特別控除
- 「103万円のカベ」を意識しつつパートで働いてきましたが、2018年からは配偶者控除の制度が変わるとか。どのように変わるのですか?(岐阜県 K)
- 2018年からは、所得税の配偶者(特別)控除制度が変わり、納税者本人の収入額によって控除額が変わります。配偶者特別控除の対象となる配偶者の所得の範囲も広がります。
配偶者控除額が、納税者本人の所得額によって異なるように
2018年からは配偶者控除や配偶者特別控除の制度が変わります。 配偶者控除や配偶者特別控除とは、一定の所得以下の配偶者のいる納税者が受けられる所得控除*のこと。 給与収入のみの場合、配偶者控除は年収が103万円以下の場合に、配偶者特別控除は103万円を超える場合に適用されるので、「103万円のカベ」を意識されていたKさんは配偶者控除が適用される範囲で収入を得ておられたのですね。
* 所得控除とは・・・所得の計算をするときに所得から差し引くことができるもの。 所得控除には14種類あり、配偶者控除や扶養控除などの人的控除と、医療費控除などの物的控除がある。 所得から所得控除を差し引いた「課税所得金額」に税率を掛けて所得税額を計算するので、所得控除が適用できれば所得税額は小さくなる。
2018年からは配偶者控除も配偶者特別控除も、納税者本人の所得額によって、控除額が異なる制度に変わりました。
2017年までは、配偶者控除には納税者本人の所得額の条件はなかったので、納税者本人の収入が高くても配偶者が所得要件を満たしていれば一律38万円の配偶者控除が適用できました。 しかし2018年からは、納税者本人の所得が1,000万円超の場合には配偶者控除は受けられなくなり、控除額も納税者の収入に応じて3段階に分かれました(表1)。
一方、配偶者特別控除も2018年からは、控除額も納税者本人の所得額に応じた3つにパターン化されます(表2)。 2017年よりも配偶者の所得要件が広げられ、納税者本人の所得要件を満たしていれば、配偶者の所得が123万円以下まで適用対象になります。さらに、配偶者の所得が85万円以下(給与収入のみなら150万円以下)であれば、配偶者控除と同様の控除額(38万円・26万円・13万円)が適用されます(表3)。 納税者の所得が高い場合には厳しい改正内容ですが、納税者本人の所得が一定以下なら控除の対象は広くなっています。
配偶者控除 | 配偶者特別控除 | |
---|---|---|
夫の年収の条件 |
- |
1,220万円以下 |
妻の年収の条件 |
103万円以下 |
103万円超141万円未満 |
控除額 |
一律38万円 |
38万円~3万円 妻の収入が多いほど少なくなる |
配偶者控除 | 配偶者特別控除 | |
---|---|---|
夫の年収の条件 |
1,220万円以下 |
1,220万円以下 |
妻の年収の条件 |
103万円以下 |
103万円超201.6万円未満 |
控除額 |
夫の年収によって3パターン(定額) 38万円・26万円・13万円 |
夫の年収によって3パターンあり、妻の収入が多いほど少なくなる 38万円~3万円 26万円~2万円 13万円~1万円 |
配偶者控除 | 配偶者特別控除 | ||
---|---|---|---|
夫の年収/妻の年収 | 103万円以下 | 103万円超150万円以下 | 150万円超201.6万円未満※ |
1,220万円以下 |
38万円 |
38万円 |
36万円~3万円 |
1,220万円超 1,170万円以下 |
26万円 |
26万円 |
24万円~2万円 |
1,170万円超 1,220万円以下 |
13万円 |
13万円 |
12万円~1万円 |
※妻の年収が150万円を超えると、収入が増えるほど控除額は減っていく
ただし、パートで働く妻などには社会保険料を負担するかどうかの「カベ」もあります。 年収が130万円以上になると夫の会社の厚生年金や健康保険に「被扶養者」として加入することはできなくなります。 また、パート先が社員501人以上の会社の場合は、年収が106万円を超えて一定条件を満たすとパート先の健康保険や厚生年金保険に加入することになり、自身で保険料を負担することになります。
2018年の働き方は、2018年からの配偶者(特別)控除だけでなく、この「106万円」「130万円」の社会保険料負担の「カベ」も考慮して考える必要があります。
【参考リンク】