第756回
燃料や人件費が高騰!個人事業主にできる節約や資金調達の工夫は?
- 運転代行の個人事業を始めて3年目、どうにかアルバイトを雇うまでになりました。 今年は売上は上向いたものの、人材確保も難しく人件費が上がり2018年はどうなるか不安を感じます。 何か年内にできる節税策などはないでしょうか。(Sさん 個人事業主、37歳)
- 2017年は中小企業にとって景気は上向いたものの、原材料費や燃料の高騰や人材不足など2018年に向けて不安要素もあるようです。 個人事業主は、せめて年内にできることをやっておきましょう。
2018年の中小企業の業況は低下する!?
Sさんが感じる来年に向けての不安は、日本政策金融公庫「中小企業業況調査」(2017年11月)にも表れています。 2017年の業況判断DI(改善32.7-悪化15.8)は16.9で、2016年の1.9に比べ15.0ポイントも上昇し、中小企業の業績が上向いたことを示しています。 その一方で、2018年の見通しはやや下がると予想されています。
具体的には、2018年の売上高見通しは2017年を上回るものの、経常利益額は下がると見ている中小企業経営者は多いようです。 2018年に向けての不安要素としては、国内の消費低迷や人材不足、原材料価格や燃料コストの高騰などが大きく取り上げられています。
年内あと1週間でできる節税策は?
新年に不安材料が残る中、年内にできる節約だけでもしておきたいとのことですね。 年内もあと1週間ほどですが、個人事業主や該当する中小企業であれば、やれることがあればやっておいてはいかがでしょう。
PCなど必要な支出は年内に(対象:所定の中小企業)
業務で使用する設備や事務関係の必要なものはないでしょうか? 点検をして、もしあれば年内に購入することで今年の経費にすることができます。10万円未満、あるいは耐用年数1年未満のものは消耗品費として処理されます。10万円以上20万円未満の場合は、1)減価償却をする、2)一括償却資産として3年で均等償却、3)青色申告であれば「少額減価償却資産の特例」で全額経費にする、と3つから選べます。 20万円以上30万円未満の場合は、1)減価償却をする、2)青色申告であれば「少額減価償却資産の特例」で全額経費にする、のいずれかになります。30万円以上は減価償却のみになります。
減価償却の場合、個人事業であれば「定額法」となり、購入した資産ごとの耐用年数と償却率で計算し、月単位で経費計上をします。 例えばPCなら4年、償却率0.25と決められています。 30万円のPCを買ったら月6,250円の減価償却費となります。
小規模企業共済を始める(対象:所定の小規模事業者)
私も個人事業主のため、この小規模企業共済を行っていますが、掛金が「小規模企業共済等掛金控除」として全額控除され、所得税や住民税の軽減につながります。 月払、半年払、年払が可能で、掛金は月1,000円から7万円までで選択できます(増減も可)。 小規模企業共済を扱う銀行窓口で、現金払でかつ年払にすれば、年内の控除を受けることができます。
手続きに2カ月程度はかかるため、今回は間に合わないですが、iDeCo(個人型確定拠出年金)や国民年金基金も掛金が全額控除となります。
ふるさと納税で返戻品(対象:所得税・住民税納税者)
実質は自治体への寄附で、2,000円の自己負担はあるものの、寄附をすると返礼品などもいただけるふるさと納税。これを利用するのも手です。
上限額は次の式で求めることになります。住民税の見込み額がわからないと判断できません。
復興増税分や2,000円を省略して考えると、住民税所得割額×20%÷(90%-所得税率)となるため、少し計算しやすくなるはずです。 所得税率10%の人は、住民税所得割額の25%まで(あくまで目安です)などとわかります。 他の控除などで住民税が想像より低い場合もありうるので税理士などに相談してください。
医療費控除・セルフメディケーション税制は?(対象:所得税・住民税納税者)
1年間に使った医療費が10万円(所得200万円以下は所得の5%)を超えた場合、その超えた分を控除し税金の還付を受けられるのが医療費控除です。 2017年からは、対象となる市販薬を12,000円以上購入すると、超えた分の控除が受けられる「セルフメディケーション税制」(最高88,000円、定期健診などを受けているのが条件)とのどちらかを利用できるようになりました。 対象期間は12月末までのため、病院の領収書や市販薬のレシートなどをかき集めてみましょう。 家族(生計同一の親族)の分も合計できます。あとちょっとなら12月中に歯医者に通ったり必要な医薬品を購入するなど、調整のチャンスです。
年末の事業資金不足はビジネスローンを検討
節税などを考える一方で、年末といえば、中小企業によっては資金不足に陥りやすい時期でもあります。公庫融資などは融資が決まるまでに時間がかかるため、間に合わないこともあります。 一時的な資金不足や、あるいは急を要する場合には、ビジネスローンも有効でしょう。 カード発行タイプの商品であれば、いざという時のために事前に準備できる特徴があります。