第648回
不動産の活用方法は様々!お手持ちの不動産の活用・整理をしよう
- 夫の退職を機に住み替えをしました。以前住んでいた家は思い入れもあり、ローンも完済しているので手放せずにいます。しかし、子どもも既にマイホームを購入しているため、今後、誰かが住む予定もありません。うまく不動産を活用する方法はありますか?(Nさん 64歳)
- 空き家の増加が社会問題化し、空き家への対策が求められるようになったことで活用方法も広がっています。また、建物が建っている土地と建っていない土地とでは対策や活用方法が異なります。いくつかの対策・活用例と注意点を見てみましょう。
建物がある場合
総務省統計局の調査によると、全国の空き家は増加の一途をたどり、平成25年の空き家数は820万戸、空き家率は13.5%にものぼります。管理の行き届かない空き家の増加は防災面や衛生面などで社会問題にもなっていることから、平成27年5月に空き家対策特別措置法が全面施行されました。 この法律では、特に問題のある空き家(特定空家等)の所有者に修繕や撤去を求めることができ、応じなかった場合には行政が強制対処し、その費用を所有者に請求できる、としています。また、特定空家等に指定された場合、固定資産税及び都市計画税の住宅用地の特例措置の対象から除外されることも決まりました。これまでは、空き家は放置しておいたほうが得だと考えられていましたが、今後はそういうわけにはいかず、何らかの対策が必要になってきます。
空き家を解体してもいいけれども費用の負担が大きいという場合、自治体によっては解体費用の補助が受けられる場合がありますので、まずは空き家の所在する自治体に確認してみてください。また、空き家の解体・整地、リフォーム、防災・防犯上の設備等の設置など、空き家対策のためのローンを取り扱う金融機関も増えています。自治体から解体費用の助成が受けられない場合などには利用を検討しましょう。
空き家を手放したくない場合には、まずは特定空家等にしないことが重要です。上記の空き家対策ローンを活用するなどして必要な設備等を設置し、適切に管理する必要があります。現在の自宅から離れていて管理が難しいという場合などには、定期的に空き家の管理を行う民間業者もあります。
空き家の有効活用を考えている場合は、多くの自治体等が運営している「空き家バンク」と呼ばれるマッチングサービスを利用するのも一手です。自治体が運営しているため登録料などの費用は不要な上、自治体によっては空き家の改修費用の補助をしてくれるところもあります。一定の要件を満たす場合には、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構のマイホーム借り上げ制度を利用できる場合もあります。 この制度は、移住・住みかえ支援機構が空き家を借り上げて転貸し、家の所有者に借り上げ賃料を支払う仕組みです。制度申し込み後、1人目の借り手が決定した後は空室になっても最低賃料が保証され、また借り上げ期間も最長で終身となるため生涯にわたって家賃収入を得ることができます。その一方で、入居者との契約は3年毎の定期借家契約であるため、制度利用後も対象となっている家に戻ったり、子どもに譲ったりすることが可能です。
自宅を手放さずにまとまった資金を受け取る手段としては、一般的には不動産担保ローンがありますが、所有者が高齢の場合などは借り入れが難しいことも多く、また借りられたとしても返済面での不安があったり、その後のライフプラン次第では大きな負担となってしまうことも考えられます。そこで検討されるのがリバースモーゲージです。 中でも最近注目されているのが、賃料返済型リバースモーゲージと呼ばれるものです。従来のリバースモーゲージは持ち家を担保に借り入れを行い、死亡後にその持ち家を売却して一括返済するという仕組みです。しかし、賃料返済型リバースモーゲージは、住み替えを希望する人などが空いた家を貸し、その賃料でローンを返済するため、住宅を売却する必要がありません。また、移住・住みかえ支援機構の家賃保証があるため、返済の不安も少なくなります。
建物がない場合
建物がない土地の場合は、まず地目の確認が重要です。地目の違いは土地の評価にも大きく関わり、固定資産税や都市計画税といった不動産の保有にかかる税金のほか、相続税の金額にも影響します。そしてこの地目は登記簿上の地目ではなく、課税時期の現況によって判定します。
また、土地の活用を考える上でも地目が関係してきます。特に農地の場合には転用できるかできないかがとても重要になってきます。転用できる農地、または農地以外の土地の場合には、売却する、アパートなどを建てて貸す、事業用地として貸す、駐車場を経営する、太陽光発電を行うなどさまざまなことが可能です。
農地の活用・対策については過去のコラムも参考になさってください。
不動産の有効活用については、ご家族を含めて今後のライフプランと合わせて話し合い、早めに対策を検討しましょう。