第587回
今年から白色申告者の記帳・記録保存が義務化!個人事業主が行うべきポイントって?
- 今年、脱サラをして個人事業主になりました。これまで会社員だったので確定申告をしたことがありませんでしたが、今後は税金の知識も身につける必要があると思っています。個人事業主の確定申告のポイントがあれば教えてください。(33際 男性)
- 個人事業主になると、すべてのことを自分で行う必要があるため、ビジネスノウハウのほかに、税金の知識も必要になります。そのためにはまず、確定申告の仕組みを理解しましょう。有利な仕組みを選んで節税すれば、キャッシュ・フローが改善し、ビジネスに生かすことができます。
確定申告は「白色申告」よりも「青色申告」がお得!
個人事業主になると1月から12月までの1年間の売上・利益を集計し、翌年の2月16日から3月16日(平成26年分)までに所定の書類を最寄りの税務署に提出して所得税を納める必要があります。これが「確定申告」です。
個人事業主の確定申告には「白色申告」と「青色申告」があります。大きな違いは、記帳の仕方です。なお、記帳とは日々の取引を帳簿に記録することです。
1年間の所得金額を正しく計算して申告するには、収入や経費に関する日々の状況を記帳する必要があります。しかし記帳には経理の知識が求められ、事務負担もかかります。そこで、一定水準以上の記帳をして、それに基づいて正しい申告をする人については、税制上の優遇が設けられているのです。
白色申告 | 青色申告 (10万円控除) |
青色申告 (65万円控除) |
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届出 | 不要 | 必要 | |
記帳義務 | 簡易簿記 (2014年以降) |
簡易簿記 | 複式簿記 |
帳簿保存義務 | あり | あり | |
決算書の作成 | 「収支内訳書」 | 「青色申告決算書」 | |
「貸借対照表」は不要 | すべて記載 | ||
青色申告特別控除 | なし | 10万円 | 65万円 |
専従者 (家族従業員への支払い) |
配偶者:86万円まで それ以外:50万円まで |
妥当であれば、限度額なし (専従者の届出が必要) |
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損失の繰越控除 | なし | あり (赤字を3年間繰り越せる) |
「白色申告」は最も記帳が簡単で事務負担が少なく、次いで「青色申告(10万円控除)」、「青色申告(65万円控除)」と特典が大きくなるほど、事務負担が大きくなります。
ただ、「白色申告」については、これまで収入300万円以下の場合は記帳や帳簿の保存義務がありませんでしたが、今年(2014年)からは収入に関係なく義務付けられ、「白色申告」と「青色申告(10万円控除)」の負担の差があまり無くなりました。
負担が変わらないのであれば、多くの税優遇特典のある「青色申告(10万円控除)」を選択したほうが節税ができてお得です。青色申告(10万円控除)には、所得から10万円を差し引いで税額を計算できる特別控除があります。また、家族従業員の給与を制限なく経費にすることができます。さらに、赤字が出たときに翌年以降3年間の利益と相殺することができます。
できれば「青色申告(65万円控除)」を選んでもっと節税を!
最近では、市販の会計ソフトを使うと、経理知識がさほどなくても複式簿記による記帳を比較的容易に行うことができます。確定申告時に提出する「決算書」も自動計算されて簡単に作成、出力することができます。そのため、「青色申告(65万円控除)」の優遇を受けて節税をし、できるだけ「出て行くお金」を少なくしたいものです。節税して増えた手元資金をビジネスで有効に使えば、今後の収入アップに繋げることができます。
また、市販ソフトに入力したデータを使って経営分析をし、課題や問題点の発見をしたり、対策立案に使うこともできるようになります。
税金は期限までにきっちり払う
今年(2014年)分の確定申告による所得税の納付期限は2015年3月16日です。納税がこの期限より遅れるとその日数に応じて、利息に相当する「延滞税」がかかります。延滞税は、納付期限の翌日から2か月までは原則年7.3%、それ以後は原則年14.6%となっています(ただし、実際には年によって異なり、2014年1月1日から12月31日までの期間は、2か月以内が年2.9%、2か月超が年9.2%となっています)。
かなり高い「利息」がかかることになりますので、できるだけ納付期限までに納税するようにしましょう。青色申告の特典を使って節税しようと思ったのに、税金の滞納で支出が増えてしまっては意味がありません。
なお、資金繰りの関係で税金が納付期限までに払えず、延滞してかなり高い「利息」を払う事態を回避するために、例えば金融機関から低金利の融資を受け、その資金で期限内に納税したほうがいいかもしれません。
特に不動産担保ローンなどは、担保があるために比較的低金利で借りることができ、また、資金使途も原則限定されません。担保をお持ちであれば、いろんな金融機関が提供しているので金利や借り入れ条件などを比較して選ぶとよいでしょう。
独立開業をすると、すべてのことを自分の責任で行わなければならないだけに大変ですが、その代わりに会社員時代の「やらされ感」から解放され、思い通りに仕事ができる自由が手に入ります。開業当初は特に、仕事に関わるすべてのことを貪欲に吸収する姿勢が大切です。
申告・納税も、事業のキャッシュ・フローに大きな影響を与えます。常に意識をしながら仕事をしていきたいものです。