第538回
消費税増税!? 安倍首相が最終指標にする「日銀短観」とは? 増税後の対策を始めよう!!
- 安倍首相は、消費税率を来年4月に8%に上げるかどうかを、10月初めに発表される「日銀短観」で決めると言っていますが、「日銀短観」って何ですか?また、消費税率がアップしたとき、私たちはどんなことに気をつけて暮らしていけばよいのでしょうか?(京都府 28歳 女性 独身)
- 「日銀短観」とは、日本銀行が年に4回発表している景気動向に関する調査結果のことです。10月の「日銀短観」は、消費税率を上げて景気が腰折れしないかどうかの最終的な判断材料として使われる見込みです。消費税率がアップすると、暮らしに関わるほとんどのモノの値段が上がり、支出が増えることになります。したがって、私たちは収支のチェックをこれまで以上に細かく行うことを心掛け、家計を見直す習慣を身につけた方がいいでしょう。
「日銀短観」は日本銀行が企業に対して行うアンケート調査の結果
日本銀行は年に4回、経済の先行き等に関するアンケートを企業に対して行っており、その調査結果をまとめたものを「日銀短観」、正式には「企業短期経済観測」といいます。
アンケートは3月、6月、9月、12月に27業種の約21万社から約1万社を選んで実施し、4月初め、7月初め、10月初め、1月初めに公表されます。回収率が100%に近く、経営者の最新の景気判断が反映されることから、「日銀短観」は、景気の先行きを示すさまざまな経済指標の中でも特に注目されています。
そもそも消費税率を上げる目的は、税収を安定的に増やし、高齢化によって膨らむ社会保障費に充てたり、国の財政再建に役立てるためです。しかし、税収を増やすには、景気回復を確かなものにする必要があります。なぜなら、消費税が上がった反動でみんなが消費を差し控えれば、税収は思ったように増えず、景気は悪化してしまいます。さらに、企業が納める法人税や私たち個人が納める所得税からの税収も減りかねません。
安倍首相は、今後も引き続き景気が上向くことを確かめてから、来年4月の消費税率アップを決断しようとしているのです。
政府は、9月13日に発表した月例経済報告の基調判断で「景気は緩やかに回復しつつある」、また「家計所得や投資の増加傾向が続き、景気回復の動きが確かなものとなることが期待される」としました。これは、消費税率引き上げに向けた経済環境が整っていることを示唆しています。
消費税率を混乱なく変更するには、広範にわたり十分な準備期間が必要で、遅くとも半年くらい前には「上げる」「上げない」を決める必要があると言われています。そのため、安倍首相は、日本銀行が10月初めに公表する「短観」を最後の判断材料にしようとしているのです。
消費税の増税を家計見直しのチャンスと捉える!
消費税率がアップすると、私たちの生活に関わるほとんどのモノの値段が上昇し、上がらないのは、家賃や保険料、医療費などごく僅かです。つまり、消費税はわれわれの暮らし全般に影響を及ぼすのです。
消費税率のアップは、来年4月の3%アップだけにとどまりません。その1年半後の2015年10月にはさらに2%のアップが予定されており、将来的にはもっと上がる可能性があります。
ですからこの際、私たちは消費税率のアップを悲観的に捉えるのではなく、「家計を見直す絶好のチャンス」と前向きに捉えていきたいものです。
消費税増税への主な対策は次の通りです。消費税率の変化のタイミングをうまく捉えた買い物をすること、また、さまざまな視点から支出減・収入増を図る必要があります。
チェック | 現状の予定/課題 | 対応策 |
---|---|---|
1年以内に購入予定の高価なモノがある | 消費税率が低い2014年3月までに購入する | |
生命保険の見直しができていない | 必要な保障内容と保障額をハッキリさせて、できるだけ保険料を削減する | |
火災保険の見直しができていない | 不要な補償があれば解約(マンションの水災など) | |
自動車保険の見直しができていない | 車両保険の削減や免責範囲の拡大など | |
住宅ローンの見直しができていない | 将来の金利上昇に配慮して、家計の実情に合った金利タイプに切り替える | |
家計簿をつけていない | 家計簿をつける習慣を身につけて、使途不明金をあぶり出しムダをカット | |
コンスタントに貯蓄ができていない | 財形貯蓄など、給与天引による貯蓄を始める | |
妻が働いていない | 少しでも世帯の収入をアップすべく行動を起こす | |
資産運用をしている(これからしようと思っている) | 2014年1月から始まるNISA(少額投資非課税制度)を使って投資をする | |
収支がトントンで一向に家計が改善せず、貯蓄もできていない | 家賃の低い住居への引越し、自動車の売却など、生活の基盤支出を削減する |
最も大切なことは、さまざまな角度から「家計を見直す習慣」をつけること。
消費税にとどまらず、今後も年金、医療、介護など、社会のいろいろな仕組みが変わっていきます。私たちの働く形も変わるかもしれません。そうした変化に伴って、家計の収入や支出の枠組みも大きく変わります。常に「家計を見直す習慣」が身についていれば、さまざまな状況に応じて柔軟に対処することができるようになるでしょう。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。
教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。
※執筆日:2013年09月19日